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27.タケルVS巨人族族長ブラド

 

 タケルはラグナに乗りながら敵陣に切り込んでいく。タケルが一人でどんどんついてくので他の兵士たちも遅れないように必死についてくる。


「タケル様を孤立させるな! 必ずついていけ!」


 部隊の指揮を預かっているシェイドが激を飛ばす。


 タケルの狙いは早期決着だ。さっさと決着をつけるために狙いである大将がいそうなところに向かって進んでいく。


 そんな快進撃を続けていると、他の巨人族よりも一回り大きな巨人族を発見した。周囲の様子からしてそれなりに位が高そうな感じがした。


「お前が大将か?」


「そうだ」


「そうか。それならサクッと決着つけるか」


 そう言ってタケルはラグナから降りる。


「お前は他のところの援護をしてくれ」


「分かりました」


 ラグナはブラドを一瞥すると他の援護に向かった。


「……魔物を操る者か。これだから商人は信用できん」


 ブラドはぼそりとつぶやいた。あの商人が向こうにも魔道具を提供していると勘違いをしていた。あの商人に対して最低限の警戒をしていたが、それは正しかったと自分を褒めた。


「俺の名はブラド。巨人族の族長にしてこの軍の総大将だ」


「俺はタケル。まあ、一応軍の総大将ってことになるな」


 ブラドが名乗りをしてきたのでタケルもそれに応じる。


「総大将が出てくるとは愚かな。部下に任せておけば勝機があったものの」


 ブラドは棍棒を肩に乗せながらゆっくりと前に歩いてくる。タケルも剣を抜きゆっくりと歩いていく。そしてブラドの攻撃の間合いまであと一歩というところで互いに止まる。


 二人の大きさは大人と子供のような差があり、ブラドはタケルのことを見下すような形で見る。


「降伏するというのであれば、今なら受け入れてやろう」


「それはこっちのセリフだ」


 ブラドは威圧を込めながら降伏勧告をするが、タケルは一切ひるむことなく返事をし、両者がにらみ合う。


 ブラドは一歩大きく踏み込み、担ぎ上げた棍棒を振り下ろす。タケルはその一撃を受け止めるために剣をかざすが、受け止めるはずの剣が想像以上に大きく沈む。


「なんだ? あのクソ領主と似た技でも使ってるのか」


 タケルはカザルの領主であるドラクムの放った剛剣という技に似たインパクトの強さを感じたのだ。


「これは衝撃力を上げる特殊な武器! 一撃でもまともに食らえばただではすまんぞ」


 そう言ってブラドは再び棍棒を振り下ろす。その攻撃に対してタケルはまともに受けることはせず弾きながら回避をする。まともに攻撃を受けなければ衝撃力が上がろうが関係ないのだ。


 その後もブラドはタケルを攻撃していくが、タケルはまともに受けることなくさばいていく。


「おもちゃを手に入れて暴れているだけのただのガキだな」


 タケルはそうブラドを評価した。


「なんだと!」


 明らかに侮蔑するような評価にブラドは激怒した。


「雑魚相手ならイキれるかもしれねーが、俺相手にそれは通用しねーぞ」


「ふざけやがって!」


 ブラドは怒りに任せて棍棒を振り下ろすがタケルはそれを回避すると、その棍棒は地面を砕いた。


「お前ごときには剣は不要だな」


 タケルはますます相手を煽るように剣を鞘に納める。


「ほら、かかってこい。相手をしてやる」


 タケルは構えを取って手招きするポーズをする。


 青筋を立てたブラドは全力で地面を蹴り、タケルに突撃してくる。数々の攻撃を仕掛けてくるが、すべてタケルは紙一重で躱していく。


 当たりそうで当たらない。そんな状況にブラドの焦りはどんどん高まっていく。


「うおおおおおお!」


 焦って雑に棍棒を振り下ろすが、それもタケルには当たらない。


 タケルはブラドの後ろ側に回り込む。そんなタケルに棍棒を当てるべくブラドは後ろに向かって棍棒を振り回す。


 ブラドが雑な攻撃をして重心がぶれたところで、タケルはブラドの足を払い態勢が崩れ、後ろに転びかけているところに、腹に向かって思いっきりぶん殴る。ブラドは全力で腹に力を入れて防御する。


「ぐはっ!」


 地面がえぐれるほどの衝撃に思わず声を上げてしまう。


「降伏しろ。お前じゃあ、どうあがいても俺には勝てねー」


 タケルは倒れているブラドを見下ろしながら降伏勧告を行う。


 それに対してブラドは棍棒を握りしめ乱暴にタケルに向かって振るう。


「俺は皆を食わすために負けるわけにはいかないのだ!」


 タケルはブラドの攻撃を避ける。


「はっ! 嘘つくなよ。お前のその目。それは力に溺れた者の目だ。大方最初はお前の言う通りの動機だったんだろうけど……勝ったことで欲が出たな」


 つつましく節約しながらであれば、すでに食料は足りていた。しかし、ブラドは自分の力に溺れより多くの食料を求めた。空腹を満たすためではなく暴食を得るために。


 ブラドにとってそれは図星だった。だが、もう引きに引けない状態に来ているのだ。


「っ!」


 思いっきり歯を噛み締めたブラドは腰のポーチを開け、中に入っているポーションと丸薬に手を伸ばす。


 これはあの信用ならない商人からもらった物だ。丸薬は三つあり、一時的に力が増す茶色の丸薬が二つ、非常に強力だが副作用が強い黒い丸薬が一つある。黒い丸薬はどうしようもない状況でもひっくり返せるだけの力があるがその分副作用があるので注意するように言われた。


 ブラドは回復ポーションと一つの茶色の丸薬を取り飲み込む。


「力が、力がみなぎってくる!」


 丸薬には力が増す効果だけでなく気分高揚の作用もあり、ブラドのテンションが上がる。これなら目の前のむかつく男に対抗できると思いにやりと笑う。


「覚悟しろ!」


 ブラドは再びタケルに攻撃を仕掛ける。


「多少力とスピードが上がったみたいだが……」


 しかし、先ほどと大して変わらず同じようにタケルは攻撃をかわしていく。


「そんなもんじゃ俺との差は埋められねーぞ」


 タケルはさらに攻撃をかわして間合いを詰める。完全に懐に入ったところでお腹に一撃を食らわす。


「ぐっ」


 たったの一撃、タケルの攻撃を受けるだけでブラドは大きなダメージを負う。そして、このままでは勝てないと思ったブラドはさらにもう一つの茶色の丸薬を飲み込む。


「うおおおおおおおおおおおお!」


 ブラドはさらにテンションを上げて雄叫びを上げる。そんな往生際の悪いブラドを見てタケルは終わらせることを決断する。


「もういい。終わらせてやる」


 ブラドは棍棒を振りかざし渾身の一撃を食らわせようと近づいてくる。


「お前のやったことを非難するつもりはねー。ただ俺たちに手を出そうとしたことを後悔しな」


 タケルは目にもとまらぬ速さでブラドの懐に入り込み、その勢いのままに攻撃をする。


「皇極天武流闘拳術【裂砕拳】」


 ブラドは棍棒で何とかガードを試みるが、タケルはそんな棍棒をぶち壊してブラドのお腹に一撃を食らわせた。ブラドは数メートル吹っ飛んだ。


「うっ……」


(まだ耐えるか……)


 丸薬には痛覚を麻痺させる効果もあり、実際にはボロボロの体なのだが、ギリギリのところで意識を保つことができていた。


 ブラドは最後に残った丸薬を手に取り見つめる。これはあの信用ならない商人からもらった物だ。そう信用ならないのだ。黒い丸薬を飲んだら自分はどうなるか分からないという予感がする。


 しかし、それでもブラドはここで負けるわけにはいかなかった。


「俺は……奪われるわけにはいかないのだ!」


 ブラドは覚悟を決め、黒い丸薬を飲み込む。


 ブラドの筋肉は肥大し、元のサイズよりも一回り大きくなった。さらに目はガンギマっていて完全にイかれている。


「き、気分がイイ! 最高だ!」


「おいおい、なんだその姿は……」


 ブラドを見ている他の巨人族すらその異様で気持ち悪い姿に驚いている。


 なんだか嫌な予感がしたタケルは早々に決着をつけるべく近づいてぶん殴る。それに合わせる形でブラドは拳を放つ。ブラドは完全にタケルの動きについてこれていた。


 互いの拳がぶつかり合う。ブラドの拳がぐしゃりと砕ける。が、うねうねと動きながらあっという間に元の形に戻っていた。


 ブラドはニヤリと笑い、再び拳で攻撃をしてきた。それに応じる形でタケルも拳でぶん殴る。


 再度拳がぶつかり合うが、今度はブラドの拳はタケルに負けなかった。


「これはイイ! これならキサマにも勝てる!」


「回復したら、強化されるのか?」


 ブラドとタケルは一進一退の殴り合いをしている中、タケルは冷静にブラドの状況を分析する。何か飲み込んだのは知っているが、明らかにヤバイ薬だったのだろう。


「仕方ねー」


 そう言ってタケルは剣を抜く。拳で戦っていて下手に強化されると厄介だからだ。


「うらアアアアアア!」


 ブラドが雄叫びを上げながら殴り掛かってくるが、それをタケルは回避し、すれ違いざまにその腕を切り飛ばす。


 これで決着かと思いブラドを見ていると、すぐにうねうねと動いて再生する。


「フハッハッハッハッハ! キサマのコウゲキはオレにはキかん! キカン、ノダ!」


 タケルのことを見ていたはずのブラドはいきなり別の方向に首を曲げ、その方向にいた巨人族の方に向かい攻撃を始めた。


「シネシネシネ!」


 味方である巨人族を殺し、死んだ後も殴り続けている。


「オレハ、ツヨイイイイイイイイ!」


「頭までおかしくなっちまったか」


 黒い丸薬の副作用で体を回復されればさせるほど、頭がおかしくなってしまったようだ。もはやあれば巨人族族長のブラドではない。ただの理性を失った化け物だ。


「勝つためにそこまでやるとはな。その覚悟だけは認めてやるよ」


 ブラドは急に首を回しタケルを見つめる。


「オレハ、ウバウガワダアアアアア!」


 そう言ってブラドはタケルの方に向かってくる。目の前にいる哀れな化け物に対して、タケルは剣を構えたあと、まるで黙とうをするかのように目をつむる。そして剣がわずかに光る。


「皇極天武流剣術【流水一閃】」


 タケルは目を開き、水の流れのように一回の動作で足を切ったあとに両腕を切り飛ばす。そして完全に無防備なっブラドと目が合うが、タケルは何も感じていないような冷徹な目で見返し、そのままブラドの首をはねる。


「敵総大将ブラド! タケルが打ち取った!」


「「「「うおおおおおおおおおおおお!」」」」


 タケルの勝利の一報を聞いてタケルの部隊は皆喜び声を上げた。


 こうしてタケルと北方部族連合との闘いはタケルたちの勝利で終わったのであった。




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