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25.バルガスVS蜥蜴人族族長クルドラク


 バルガスの部隊はタケルの号令に従って、突撃を開始した。その先頭にいるのはバルガスだ。


【鉄壁】のスキルがあり他の人たちよりも固いバルガスは、自分が最前線で戦い少しでも多くの攻撃を引き受けるために最前線を走っている。


 敵との衝突の瞬間に戦斧を振り下ろし雑兵を蹴散らし檄を上げる。


「ものども進めええええ!」


 そんなバルガスの勢いに乗って部隊の者たちも敵を倒して前に進んでいく。


 順調に敵を削って前に進んでいると、一人の兵士がバルガスに報告をした。


「右から魔獣が来ています!」


 バルガスが右の方を向くと、元々右側に展開していた魔獣たちがバルガスの部隊に向かってきていた。正面の蜥蜴人族と魔獣で挟み込む形で削っていく作戦なのであろう。


「皆の者! 安心しろ! すでに手は打ってある! 我らはこのまま敵の将軍を目指す!」


 バルガスは補佐官であるザルクに魔獣部隊の対処を頼んでいた。


「重歩兵隊、我らの力を見せつけよ!」


 ザルクに任せた部隊は重歩兵のオークたちで、全身鎧で包んでおり装備が硬い。そんな部隊を魔獣対策として右側に多く配置していた。


 そんな重歩兵隊が、魔獣の突撃を受け止め処理をしていく。


 通常であれば動けないような怪我を負ったブラックパンサーが、ある重歩兵にかみついてきた。


「うおっ! なんだこいつ! まだやるのかっ!」


 あまりに異様な魔獣たちの動きによって重歩兵隊に動揺が走った。


「うろたえるな! 確実に命を奪え! そうすれば動かぬ」


 ザルクは多少負傷した程度では攻撃をやめようとしない魔獣の様子を見て指示を追加した。


 重歩兵隊が魔獣の攻撃にギリギリ耐えているという状況で、いつ状況が変わってもおかしくない。


(バルガス、早めに決着つけろよ!)


 ザルクはバルガスが敵将を早く倒すのを心の中で祈るのであった。






 一方その頃、バルガスは快進撃を続け、蜥蜴人族族長のところまでたどり着いていた。


 そしてバルガスは敵の将軍と一対一の様相を呈していた。


「お前がこの部隊の将軍か?」


「いかにも。蜥蜴人族族長クルドラクだ」


 クルドラクは槍を構える。


「オーク族族長バルガスだ」


 バルガスは戦斧を構える。両者の間に一瞬の静寂が走った。


 クルドラクは地面を踏みしめバルガスとの間合いを詰める。


 それに合わせてバルガスは一歩前に大きく踏み出し、戦斧を横なぎで振るう。


「うぐっ」


 クルドラクはそれを何とか受け止めるが、想像以上に重たい攻撃に思わず声を上げてしまう。


 クルドラクはバルガスから少し距離を取る。バルガスの攻撃を一撃でももらったらやばいと感じたクルドラクは作戦を変更し、待ちの構えを取る。


「来ないのであれば、こちらから行かせてもらおう!」


 攻め気がないと感じたバルガスは、自分から攻撃を仕掛ける。


 バルガスの猛攻に対してクルドラクは槍で攻撃を受けずにギリギリのところで躱し続ける。


 クルドラクは攻撃をして隙ができたバルガスのお腹に向かって鋭い突きを繰り出す。その攻撃は商人からもらった武器の力もあり過去最高にいい突きだと感じた。これなら間違いなく開いてを貫けるそんな一撃だ。


「もらった!」


 カキンッ。


 通常の敵であれば間違いなく貫いていただろう渾身の一撃だ。それが見事に弾かれたにクルドラクは驚愕した。


「なっ」


 それに驚いていたのはバルガスも同じであった。


「力が増していることは感じていたが、まさかこれほどとは……」


 バルガスはフィリーからタケルの作物を食べることで力が増すことを教えられていた。実際に日々の戦闘訓練の中でも力が増していることは感じていた。しかし、全力で戦うことはなかったため自分の【鉄壁】のスキルまで力が増していることに気がついていなかったのだ。


「お前の攻撃は俺には効かんようだな」


「な、なんだよ。その力は……」


 人生最大の渾身の一撃でさえまともにダメージを与えられなかったことに、クルドラクは動揺した。しかし、それでも負けるわけにはいかないクルドラクは再び槍を握りしめバルガスに攻撃を仕掛ける。


「くそ! くそ! くそ!」


 クルドラクは何度攻撃を当てても、バルガスにはかすり傷さえつかない。


 雑になったクルドラクの突きをバルガスは手で掴み取る。


「もういいだろう。降伏しろ。お前では俺に勝てん」


「ふざけるな! 俺はお前らに勝って一族の者たちを食わせてやらねばならんのだ!」


 クルドラクは槍を振り払って自分の手元に引き戻す。


 目の前の必死な様子の族長を見てバルガスは昔の自分を思い出した。


「……お前の気持ちは痛いほど分かる」


「貴様に何が分かる!」


「俺もかつてはお前と同じだった」


「戯言を! 貴様らは皆空腹に苦しんでいる様子がない! そんな恵まれた奴らに俺たちの何が分かる!」


「そうだな。俺はただ運がよかっただけだ」


 バルガスはただタケルと出会うことができたから救われた。もし出会わなければ、もし蜥蜴人族が住んでいる場所にオーク族が住んでいたら、バルガスもきっと同じように戦っていただろう。


 しかし、そんなもしもの話はない。タケルに仕えている今やるべきことをやらねばならないのだ。


「再度言う。降伏しろ。悪いようにはしない」


「今更引き下がれるわけがねーだろーがよ!」


「ふっ、それもそうだな」


 バルガスは自分もそうだったことを思い出し、思わず笑みを浮かべてしまう。


「それなら痛い目を見てもらうしかあるまい!」


 タケルが自分にしたのと同じように、動けなくなってもらうしかない。


「死ぬなよ。俺はタケル様のように手加減はうまくないからな」


 バルガスは戦斧を構える。地面を思いっきり踏みしめ蹴り上げる。地面が爆発したような猛スピードの突進で袈裟切りの要領で戦斧を振り下ろす。


 クルドラクは回避ができないことを悟り、槍で防御をする。そこにバルガスの一撃が加わると、槍は衝撃を受け止めきれず見事に折れ曲がり、クルドラクに攻撃が入る。


「うぐっ」


 その一撃を食らったクルドラクは数メートル吹き飛び動かなくなった。


 バルガスがクルドラクの様子を見ると、致命傷を避けられたものの、かろうじて息ができるくらいでもう戦うことができない様子だった。


「蜥蜴人族族長クルドラク! バルガスが倒した!」


「「「「おおおおおおおおおお!!!!」」」」


 バルガスが敵将を倒したことで、バルガス部隊が盛り上がる。


 一方、蜥蜴人族の兵士たちは族長が倒されたことで意気消沈していた。


 そこに対して再びバルガスは降伏するように呼び掛ける。


「武器を捨て、降伏しろ! まだ戦いたい者はこのバルガスが相手をしてやる!」


 ほぼ一方的に族長を倒したものに挑む勇気がある者はおらず、皆武器を捨て始めた。


 こうしてバルガス部隊は勝利を収めたのであった。


(あとは魔獣を片付けるだけ。……クルガンのところは大丈夫だろうか?)


 バルガスはクルガンが戦っている方に顔を向けたのであった。



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