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22.北部部族連合との激突

 

 タケルたちと北部部族連合は示し合わせたかのように比較的開けた場所に互いに陣取り、互いのにらみ合いの状態となっている。


 遡ること数十分前。タケルたちは主要メンバーを集めて作戦会議をしていた。そのメンバーはタケル、カリュネラ、ヴェルノア、バルガス、クルガン、ダルム、シェイド、フォリンだ。


「いや、なんか、敵、多くないっすか?」


 それもそのはず、敵の数は各部族が三千人で、さらに魔獣が千五百、ゼルアントの魔獣が千五百の合計一万五千人だ。想定していた一万人よりも数が多い。


「まあ、誤差ですね」


 ヴェルノアは自分の偵察した情報との食い違いがあるが、誤差で済ませ一切詫び入れる様子がない。


「フォリン、ここまで来たらやるしかねーんだ。腹くくれ」


「……了解っす」


 フォリンは少しビビりながらも自分のスキルである危険察知が反応していないので大丈夫だと自分に言い聞かせる。


「じゃあ、部隊編成から発表するぞ。左からカリュネラの部隊、ヴェルノアの部隊、俺の部隊、クルガンの部隊、バルガスの部隊だ」


 部隊の数はカリュネラの部隊が五百匹、ヴェルノアの部隊が千人、タケルの部隊が千人とホワイトウルフ五百匹、クルガンの部隊が千五百人、バルガスの部隊が千五百人だ。


 それぞれの部隊は種族を混ぜた混成部隊だが、それぞれの部隊ごとに少し特徴が違う。例えば、ヴェルノアの部隊にはエルフが多く、バルガスの部隊はオークが多い。そしてタケルの部隊には獣人族が多く、クルガンの部隊には難民たちが多く所属している。


 唯一他の部隊と異なるのがカリュネラの部隊だ。これはディープスパイダーのみで構成されている。思いっきり暴れるためにカリュネラが要望を出した。


 ちなみにダルム、シェイド、フォリンはタケルの直属の部隊に入っている。


「次に作戦だ。基本突撃だ。それぞれの部隊が目の前にいる部隊の族長だか指揮官だかを倒す事に集中しろ。こっちは数で不利なんだから全部倒していこうとするなよ」


「えっ!? 突撃するんすか!?」


「縮こまって亀みたいに守りを固めるのは性に合わん!」


「あの程度の敵であれば、こちらが突撃を仕掛ければひとたまりもないでしょう」


 フォリンは内心強い人たちの基準で考えるのはやめてほしいと願うが、さすがに口に出すことはしなかった。その他のメンバーも特に反論をしなかった。


「よし、作戦は以上だ! それぞれ部隊に戻っていつでも突撃できるようにしておけよ」


 各主要メンバーたちは自分たちの配置に向かって行った。


 敵の部隊はタケルたち側から見て左からゼルアントの魔獣の部隊、鳥人族の部隊、巨人族の部隊、鬼人族の部隊、蜥蜴人族の部隊、魔獣混成部隊となっている。






 カリュネラは軽く体を動かしながら、逸る気持ちを押さえていた。久々に暴れることができるためテンションは高めだ。


「ん? あれ?」


 そんなカリュネラが自分の前にいるゼルアントの魔獣をよく見てみると、そこにはカリュネラがかつて戦ったことがあるゼルアントの魔物がいた。さらによく見ると首輪がつけられており、自分から協力しているのではなく操られていることが分かった。


「あいつ操られてるのか、バカだなー。目の前にいるしちょうどいい。格の違いって奴を思い知らせてやるか」


 カリュネラは、にししと笑いながら突撃開始の合図を待つのであった。






 ヴェルノアはこの戦は勝つのは当然だと思っている。ゆえに緊張も何もない。が、自分の部隊にいる人たちはそうではなかった。これほど大きな戦を経験したことがないので、緊張するのは当たり前だ。


 それを感じ取ったヴェルノアは渋々ながら声をかけることにした。緊張しすぎて実力が全く発揮できずに死者が多く出たら自分の責任になるからだ。


「皆の者聞きなさい。あなたたちは私の命令を聞き、その通りに行動すればいいのです。そうすれば自然と勝てます。何も気負う必要はありません。私の命令通りに動く、そのことだけを考えていなさい」


「「「「「はっ!」」」」」


 あまりにも上から目線の発言ではあるが、ヴェルノアの実力は町民なら皆知っている。さらに内政にも携わっており頭がいいこともよく知られている。そのため兵たちは自然とその言葉を受け入れることができた。


「よろしい」


 適度に緊張がほぐれたことを確認したヴェルノアはタケルの号令を待つのであった。






 クルガンはこの戦で武功を上げるために気合が入っていた。特に自分から志願して鬼人族と戦えるようにしてもらったのだ。ここで失敗するわけにはいかない。


 そして周りにも自分と同じように難民としてヤマトにやってきた人たちも多い。だからこそ、気合を入れるために檄を飛ばす。


「俺たちはまだヤマトの町の新参者だ。だからこそ、ここで武功を上げて町に貢献をする! 皆。気合を入れろ!」


「「「「「おおおおおお!!!!」」」」」


 クルガンの気合に共鳴するかのように兵士たちも気合が十分なようだ。


「必ず俺が鬼人族族長を倒す!」


 こうして心の中に熱い炎を燃やすクルガンは今か今かとタケルの号令を待っていた。






 バルガスは戦場に立ってみて敵を前にしたが、自然と恐怖は沸いてこなかった。それは自分が強くなったからなのか、あの時に一度死んだつもりになっているからなのか分からなかった。


 それでもバルガスがやることは変わらない。


「お前たち、今日はタケル様への日頃の恩に報いる日だ。ここで敵を倒しヤマトの町には誰一人近づけさせんぞ!」


「「「「「おおおおお!!!」」」」」


 静かなる闘志を燃やしバルガスはタケルの号令を待つのであった。






 タケルはラグナに乗って前に出た。


「お前たち準備はいいか?」


 数多くの兵士たちの目線がタケルに集中する。


「ここであの敵を放置したらヤマトの町だけじゃねー。多くの村や里までボロボロにされちまう。俺の庇護下にある村や里がそんなことになるのを黙って見過ごすわけにはいかない。だから、ここで敵を潰して防ぐ! そのために俺に力を貸せ! 敵の数は多い。それでも俺たちは勝つ! 必ず俺が勝利に導いてやる! 腹くくれ! 気合を入れろ! お前たちの大事なものを守るために戦え!」


 ここでタケルは大きく息を吸う。


「全軍! 突撃いいいいいいいいい!!!」


「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」


 タケルの号令に従って全軍が勢いよく突撃を開始した。


 タケルたちが突撃をしたことで、敵の族長たちは驚いた。自分たちが攻める側だと思っていたからだ。


「一番槍はこの俺だああああ!!!」


「あ、兄貴っ!」


 それに何よりもホワイトウルフに乗っているタケルの速度が尋常ではなかった。このまま突撃し返しても中途半端になると判断したブラドは一度受けることを選択する。


「一人突っ込んでくるバカをやれ!」


 タケルとラグナに対して矢が飛んでくるがそれを華麗にかわす。そして敵の最前列の待ち構えているところに、到着するとラグナは前足で薙ぎ払った。


 それを受けきれるものはおらず全員吹っ飛ぶ。


 ラグナは大きく息を吸う。


「わおおおおおおおおおおおん!!!!」


 目の前にいる敵に対して全力で吠える。その声の圧力に周囲にいる敵は思わずひるんでしまう。


 そして、無防備になったところで、他のホワイトウルフに乗った獣人たちが突っ込んでいく。


「さあ、戦の始まりだ!」


 こうしてタケルたちの突撃によって戦端が開かれるのであった。




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