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13.難民2

 

 牛人族たちは先頭にいるタケルについて森の中を進んでいく。すると、ようやく町に着いたようで森の終わりが見えた。


 森を完全に抜けるとそこにはヤマトの町が広がっていた。牛人のリーダーは村だと思っていたが、想像以上に広く面食らった。


「まさかこれほどの規模だとは……」


 さらに驚いたのは町の中に入ってからだ。皆が生き生きと働いているし、子供たちは元気に動き回っている。その人たちをよく見ると皆表情は明るく健康的な体をしている。ここではまるで飢饉が起こっていないように感じさせられた。


「この森の中でこんな場所が存在していたのか……」


 グリムヴェイル大森林北部ではそこの村や里でも食料に困っていた。ギリギリ切り詰めても足りない状況で、その結果、略奪をし合うことになった。牛人族のリーダーはそんな場所から来たがゆえに、正直この町の様子を見て複雑な気持ちになった。


「あっ、タケル様!」


 一人の獣人の子供がタケルに手を振る。


「おう! 飯はちゃんと食ってるか?」


「食ってるよ!」


「ならよし!」


 タケルと一緒に町の中を歩いていると、町民皆がタケルのことを慕っていることが自然と分からされてしまう。


「よし、着いた。まずはこの食堂で飯を食ってけ。話はそれからだな。フォリン、あとは任せたぞ」


「了解っす」


 タケルはフィリーやエルドールたちに厄介ごとが起きたことを伝えに、どこかに行ってしまう。


「さあ、こっちっすよ!」


 フォリンが食堂の入り口の方に行って手招きをする。


「我らに食料を分けてもいいのか?」


「ん? ああ、もちろんっすよ! うちには食料がたくさんあるっすからね」


「……そうか、ありがたい」


 牛人族のリーダーは食料がたくさん余っていることに思うところもあったが、それは飲み込みフォリンに感謝を伝えた。ここでいらだち反発しても意味はない。それはただの八つ当たりだ。妹にも釘を刺されているのに、ここで間違うわけにはいかない。


 フォリンたちが食堂の中に入りカウンターに向かう。


「おばちゃーん、連れてきたっすよ! 飯の準備はできてるっすか?」


「急に飯を用意しろって言われてこっちはてんてこ舞いだよ!」


 フォリンはあらかじめタケルの許可を取って先触れでご飯の用意をしてもらうように指示していた。とはいっても、それほど時間があったわけではないので、調理場で働いているオークのおばちゃんは忙しそうだ。


「順番に出していくから! さっさと受け取っておいき!」


「ここのトレイを持っていくんすよ」


 牛人族のリーダーとその妹から順にトレイを持ってカウンターで料理を受け取りに向かう。


 食堂のおばちゃんがトレイに出来上がった料理を乗せた後に大事なことを言う。


「好き嫌いせずにちゃんと食べること! それがこの食堂のルールだよ! いいね?」


「は、はい」


 牛人は食堂のおばちゃんの圧に飲まれながらもなんとか食事を受け取ってテーブルに着く。


 牛人族はどこか痩せこけていたため、体への負担が少ないメニューとなった。雑炊、野菜スープ、カットしたリンゴだ。


「温かいうちに食べた方がいいっすよ?」


 牛人族のリーダーは全員が揃うまで待とうと思ったが、空腹の限界だったこともあり、フォリンの言うことを聞く。スプーンで雑炊をすくい口に運んでいく。


「うまい」


 その味は激しいうまさがあるわけではないが、ほっとして身に染みる味だったため、思わずうまいという言葉が出てきた。


「それはよかったっす! おばちゃーん、おいしいってよ」


「当たり前だろー! タケル様が作ったもんを使って、私たちが作ってんだかんねー!」


 他の牛人たちもうまい、うまいと感想を言い、皆おいしそうに食べる。空腹だったこともあり食べるのに夢中だ。


 すべて食べ終えてほっとし、一休みしたところで、フォリンが提案する。


「じゃあ、そろそろ兄貴のところに向かうっすよ」


「分かった」


 そうして牛人族のリーダーとその妹は、フォリンに連れられてヤマトの町の役所の応接室に案内された。

 そこではすでにタケル、フィリー、エルドール、バラル、ヴェルノア、ダルム、最初に牛人族たちが出会ったエルフのリーダーがいた。牛人族が来たということで、ヴェルノア、ダルム、エルフのリーダーは席から立ち上がり、護衛として立っていた。


「おお、来たか。まあ、とりあえず座ってくれ」


 タケルはそう言って牛人族の二人を対面の椅子に座らせる。


「で、話を聞くって約束だったな。話していいぞ」


 タケルは少しぶっきらぼうで、さっさと話しを終わらせようとした。フォリンの顔に免じて話を聞くだけという感じだ。


「その前に、まずは謝罪をさせてください。俺の勘違いでこの町の者を危険にさらしてしまい申し訳ありませんでした」


 そう言ってクルガンは頭を下げると、妹のエウラシアも一緒に頭を下げた。


 タケルはダルムの方に視線を送る。お前の気持ちはどうなのかと。


「あれは自分の未熟故の結果です。特に思うところはありません」


「そうか。なら謝罪は受け取った」


 殺されかけた者が特に何もないというのだから、これ以上あの件を引っ張ってもしょうがないということで、謝罪を受け取ることにした。


「それと食事をありがとうございました」


「うまかったか?」


「はい! とてもおいしかったです!」


「それはよかった」


 タケルはニカッと笑う。タケルは自分が作った作物を褒められるのに弱いのだ。


 それから応接室の空気は少し柔らかくなった。


「二人の名前はなんて言うんだ?」


「俺の名前はクルガンです」


「私はエウラシアです」


「俺はタケルだ。よろしくな」


「私はフィリーよ。それであなたたちはこの森の北部から来たって聞いたけど、合ってるかしら?」


「はい、合ってます」


「どういう事情でこっちまでやってきたのか詳しく聞かせてもらえるかしら」


 フィリーはピルカから、グリムヴェイル大森林の北部で大きな戦いがあったことを聞いている。そのため現地の人の生の情報を手に入れようとしている。


「分かりました」


 こうしてクルガンの口から北部での出来事が語られるのであった。



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