10.グリムウェイル大森林北部の争い2
ひとまずブラドたちは五十個の首輪を手に入れた。その首輪を使って五十匹のブラックパンサーを支配下に置いた。ただ首輪を使った支配にも欠点はあった。この魔道具を使うための魔力を与えた者の指示しか受け付けないということだ。ブラドは指揮官であり、前線で戦う戦士でもあるため、部下に魔獣の操作を任せることにした。
またあまり賢くないせいか丁寧に指示を出さないといけないため、十匹ごとで運用することにした。あまり数が多いと指示を出すのが大変で非効率的になる。
ブラドたちは支配したブラックパンサーたちを使って、他の村を襲うことにした。
「作戦はこうだ。まずブラックパンサーが村を襲う。そして混乱しているところに我らも襲撃に加わる。以上だ」
「シンプルだが、まあそんなもんだろ」
巨人の上役でブラドの友でもあるグラウルが作戦に問題はないと答える。
「村人は奴隷としてあの商人に売る。可能な限り生かせ。いいな」
それを聞いた巨人たちはうなずく。
気分のいい話ではないが、あの商人に奴隷を売れば追加で首輪の魔道具や武器をくれるという話でまとまっている。
自分たちの村だけでなく、他の巨人の村まで救うとなれば、力はあればあるだけいい。
「それでは出発するぞ」
こうしてブラドたち巨人は五十人ほどが他の村を襲うために村から出発した。そして目的地である獣人族のとある村に到着した。
この村は簡単な柵しかない村であっさりと落とせるとブラドは判断した。
ブラックパンサーの使役者たちと分かれて、反対側の方にブラドたちは移動した。その場所から村の様子を見ていると、五か所から十匹のブラックパンサーが森の中から出て村人を襲い始めた。
「きゃー」
「うわあああ」
ブラックパンサーに襲われた獣人たちが悲鳴を上げる。そうしてしばらく様子を見ていると、ブラックパンサーに抵抗する者たちが現れた。おそらくこの村の戦士や狩人たちだろう。
「一体なんだこれはっ!」
「原因はあとだ! ひとまず目の前の敵をやっつけろ!」
獣人の戦士たちが獅子奮迅の戦いを見せるが、それでもブラックパンサーの数が多いため苦戦を強いられている。
「頃合いだ。行くぞ」
巨人たちの目的は苦戦を強いられている戦士たちだ。あれを潰せばもう村は抵抗できない。
ブラドは先頭に立ち、真っ先に獣人の戦士たちに突っ込んで攻撃を加えた。
「なんだ! 巨人族だと!?」
獣人の戦士長はますます混乱した。ただでさえブラックパンサーが大量に襲ってくるというイレギュラーに巨人族まで襲ってくるとは、村の防衛のキャパシティーを超えている。
その戦士長にブラドがメイスで攻撃を仕掛ける。ギリギリのところで戦士長は剣で防ぐことができた。
「いったい何のつもりだ!」
「そんなもの決まっている。我らの目的は食料だ」
そう言ってブラドは思いっきり横殴りでメイスを振り回す。
ブラックパンサーとの勝負で消耗していた戦士長は攻撃をうまく防ぎきれずに吹き飛ばされてしまう。
「戦士は皆殺しにして構わん! 躊躇するな!」
ブラドは周囲の巨人たちに檄を飛ばす。そうしてブラックパンサーとの戦いで疲労していた獣人の戦士たちはあっさりと破れていった。
中には自発的に降参する者もいた。が、ほとんどの戦士は最後まで戦った。
それに対して巨人たちのけが人は三名で死者はゼロ人だ。
「ははっ! 圧倒的ではないか!」
もし自分たちだけで攻めていた場合、こうもうまくはいかなかっただろう。ブラドは自分の選択が正解だったと自分を褒めたたえた。
そしてブラドの部下たちが食料を漁り運び出す準備をしているところに、遠くからついてきていたラピノザたちが現れる。
「いやーさすがです! これほど手際よくやられるとは御見それいたしました」
そう言ってラピノザは軽く頭を下げるが、ブラドは見え透いたお世辞に対して何の反応も示さなかった。
「それにしてもここまで効率よく奴隷を手に入れられるのでしたら、質のいい武器も提供させえていただきたいと考えていますが、どうされます?」
「どんな武器だ」
「魔力を込めることで、衝撃力が上がる特殊な武器でございます。この武器さえあれば多少強い敵がいても何の問題もないでしょう」
ブラドの頭の中に他の部族で強いと言われている者が思い浮かぶ。ブラドも確かに強者の部類ではあるが、そう言った者たちと戦って必ず勝てるわけではない。そのためラピノザの提案を受け入れることにした。
「分かった。その武器ももらおう」
「かしこまりました」
そう言ってラピノザは商人的な笑みを浮かべる。
ラピノザの部下たちが奴隷たち連れていくために鉄の手錠や足輪でつなぎ始めた。中には反抗的なものもいたが、そいつらは容赦なく殺した。そのため残った者たちは大人しく言うことを聞いている。
そんな様子をぼんやりとブラドは眺めている。
(弱肉強食が世の摂理だ)
そう自分に言い聞かせた。自分たちはこうはならない。食料を得てこれからも生き続けるのだと心の中で誓った。
ブラドは近くにいた他の巨人たちの方を向いた。
「他の同族にも声をかけろ。俺がまとめて救ってやる!」
巨人たちはブラドに希望の光を見たのであった。
ブラドは他の村の巨人族もまとめ上げ、族長になった。巨人族は好戦的な種族で力があるものが上に立つ傾向にある。元々ブラドは力がある者として一目を置かれていたため比較的スムーズに話はまとまった。
そして増えた同族を引き連れて次々と他の種族の村を襲っていた。
「消し飛べ」
ブラドは新たに商人から手に入れた棍棒をふるい目の前にいた村の戦士長を弾き飛ばした。
「ふん、雑魚が」
戦士長が倒されたことで獣人たちは劣勢に追い込まれそのまま敗北していった。
戦いが終わった後、ブラドは自分の手のひらを見つめる。新たな棍棒を手に入れてから己の力の強さに自信を持つようになった。今回戦った相手も今までであればそれなりに倒すのに時間がかかったような相手だ。それなのにたったの一撃で葬ることができるようになった。この自分の手であらゆるものを手に入れることができるのだと思うと笑みがこぼれた。
「ちょっとマズいことになったみたいですよ。ブラド族長」
ラピノザが話しかけてきた。
「なんだ」
ブラドはせっかくいい気分に浸っていたところに水を差され不機嫌そうに答える。
「どうやら獣人族は馬人族と手を組んだらしいですよ」
奴隷として捕まえた獣人がそう言っていたらしい。獣人族は自分たちだけでは対応できないと判断し、他の種族と手を組んだのだ。その結果、巨人は獣人族と馬人族の両方を相手にすることになった。
「どうするおつもりで?」
いかに魔獣を操ることができるようになり、強い武器を手に入れたとしても他二つの種族とぶつかり合うのは巨人族にとっても厳しいものだ。勝利することはできるだろうが、被害が大きくなるのは明白だ。
「俺に考えがある」




