7.雪合戦
ヤマトの町に雪が降った。そして夜が明けた早朝。雪に大はしゃぎしている人たちがいた。
「雪だー!」
「雪だー!」
「わん!」
タケルとジル、ラグナは辺り一面雪となった空き地に全力で突っ込んでいった。
誰の足跡もないまっさらな場所をどんどん侵略していった。
そしてタケルは雪玉を作り、ジルに当てる。
「タケル兄ちゃん、やったな!」
そう言ってジルは反撃をするが、タケルは軽々と避ける。
「ははっ!」
「待てー」
ジルはどんどん近づくがタケルも距離を取るため、一方的にジルが攻め立てる形になった。
少し遊んだところで、本格的な遊びに入る。
タケルとジルはそれぞれ雪玉をコロコロ転がして大きくしていった。それを家の前まで持っていき、タケルが作った雪玉の上にジルが作った雪玉を乗せ、雪だるまを作った。
「よし! 完成だな」
「かんせーい!」
無事に立派な雪だるまを作ることができ満足しているところにフォリンがやってきた。
「兄貴何やってるんすか?」
「ようやく来たか。待ってたぞ。フォリン」
「な、なんすか」
改まって待っていたなんて言われたことでフォリンは少し緊張した。
「雪合戦をするぞ! 人を集めてこい!」
「はぁなんだ、そんなことっすか。了解っす。今すぐ集めてくるっす!」
フォリンは力が抜けたように返事をした後、雪合戦をするための人たちを集めに行った。
そうして空き地には、警備部に所属している獣人、エルフ、オークが集まった。
それからチーム分けを行った。
赤チームは、タケル、ジルとフォリン、シェイドの他、獣人やエルフ、オークの合計十名の混成チームだ。
青チームは、バルガス、ダルム、エルフ族長の孫であるセリオンの他、獣人やエルフ、オークの合計十名の混成チームだ。
それぞれのチームで番号の付いたゼッケンをつけている。
「よし! ルールを簡単に説明するぞ。当たり判定は頭と胴体だ。手や足は判定外だから注意しろ。あと雪玉以外の攻撃は禁止。やったらその時点で退場だ。勝敗は敵陣地にある旗を取るか、敵を全滅させるかのどちらかだ。ルールは以上。何か質問はあるか?」
タケルは集まったメンバーを見渡すが特に何もないようだ。
「ヴェルノア、審判は任せた」
「お任せください。完璧なジャッジを下しましょう」
タケルたちはそれぞれの陣地に移動する。
雪合戦をやろうとしている場所の周囲には何かタケルが面白そうなことをやっているということで観客が集まってきていた。
「タケル! ジル! 頑張って」
応援するフィリーに向かってタケルとジルは手を振る。そのあとにタケルはジルに耳打ちをしてとある作戦を話す。
「この機会に奴に恥をかかせてやる」
セリオンはこの町に来てから警備部に入りだいぶしごかれていた。自分の才能に奢りあまり努力をしていなかったセリオンはもういない。しかし、それでもかつて屈辱を与えられたタケルに対しての悪感情は消えていない。そのためこの機会に生まれ変わった自分の力を見せつけてやろうと考えている。
それぞれのチームが指定の位置に着いたところで、ヴェルノアが開始の合図をする。
「試合開始!」
「一か所に固まるな。広がれ広がれ!」
タケルたちは攻めと守りで五人ずつ分かれる作戦を取った。攻めにはタケル、フォリン、エルフ二人とオーク一人だ。
敵の青チームも同様の作戦を取ってきた。攻めてきたのはダルムとセリオン、獣人一人、エルフ一人、オーク一人だ。
当然敵との距離が近くなればなるほど、雪玉は当たりやすくなる。しかし、そんなのお構いなしとばかりにタケルは一人突出して攻めた。
「タケル様を狙え!」
バルガスが後ろから指示を出す。
敵はタケルを集中砲火する。しかし、タケルは飛んでくる雪玉を時には避け、時には腕ではじき飛ばしてダメージを食らうことがない。さらにそんな中でも雪玉を作り投げてくるのだから敵としてはやっかいな敵だろう。
そうこうしている間にタケルの他のメンバーも攻め上がってきて敵に狙われていない状況で悠々と投げることができる。
「さあ、当てるっすよ!」
フォリンは調子に乗ってどんどん雪玉を投げていくが、そう簡単には当たらない。当然敵も防ぐのだ。そして、手持ちの雪玉がなくなったので、雪玉を作ろうとしゃがみ込んだところで、雪玉が命中してしまった。
「赤四番アウト!」
「うわっ、しまった!やられたっす」
「何やってんだ! フォリン!」
後方からシェイドの叱責が飛ぶ。
「よし!」
フォリンを倒したことでセリオンはガッツポーズをするが、顔の横に雪玉が当たってしまう。
「青三番アウト!」
「セリオン、隙だらけだぞ」
タケルがニカッと笑いながら、意識の外から雪玉を投げていた。それを何とも恨めしそうに見るセリオンであった。
「ははっ! おもしれーな。いけー」
雪合戦を酒のつまみにしながら酒を飲んでいるバルドたちドワーフが野次を飛ばす。
「敵の注意はタケル様が引いている。その隙に敵を仕留めるのだ!」
「おお!」
シェイドが部下を二人率いて攻勢に出る。
「うぐっ! 引くな、引くな! 攻めよ!」
シェイドたちの攻勢が激しくなったのを受けバルガスは一瞬ひるむが、負けじと自分たちも一人を残して攻勢に出る。
「赤七番、九番アウト!」
「青八番、九番アウト!」
互いに二人ずつ退場となる。
「やるな! でも、その分俺に余裕ができたぜ」
互いに攻勢に出たことでタケルに余裕が生まれたのだ。タケルはさらに敵との距離を詰めていた。敵の攻撃の中心であったダルムに向かって雪玉を投げる。
ダルムはそれを何とかはじくが、その雪玉の後ろにはもう一つの雪玉があった。
「なっ」
それに気付きながらも反応ができず顔に思いっきり当たってしまう。
「青、二番アウト!」
ダルムはアウトの宣告を受けてとぼとぼと退場していく。
「ぐ、お前も上がってこい!」
バルガスは最後に守備に残ったメンバーも前線に投入することにした。
それを見たタケルは思わずニヤリと笑う。
「いいのか? 俺ばかり見て」
嫌な予感がしたバルガスは思わず後ろを振り返る。
すると、そこには旗が刺さっている雪だるまに手をかけようとしているジルがいた。
「あっ」
気付いたときにはすでに遅し、そのままジルは旗を掴み取り、大きく上に掲げた。
「タケル兄ちゃん! 旗取ったよ!」
「勝負あり! この勝負、赤チームの勝ち!」
ヴェルノアが超えたか高に勝敗を宣言した。
「いえーい!」
タケルとジルはハイタッチをする。
「ジル、面白かったか?」
「うん! すごい楽しかった!」
「お汁粉ができましたにゃ!」
試合が終わったころ合いを見計らってエルミィはお汁粉の炊き出しを出す事にした。
「おっ! お汁粉だって。食いに行くぞ」
「うん!」
タケルたちはお汁粉を味わっていると、次の組が雪合戦を始めた。
それを見ていたタケルは思いついたことを言葉にした。
「来年はもっとちゃんとした大会にでもするか」
「それ楽しそう! 楽しみ!」
「じゃあ、来年の楽しみだな」
こうしてタケルの冬のとある一日が過ぎ去っていった。




