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1.クエスト報酬とポーション職人

 


 今日はブラッドビーのはちみつを使ったハニートーストを食べる日だ。


 タケル、フィリー、ジル、ラグナ、カリュネラ、エルミィ、ピルカ、ヴェルノア、そして最後にフォリンがいる。


「足りるか?」


 タケルがブラッドビーからもらったはちみつの量は瓶一つ分だ。全員がたっぷりかけたら足りないような気がしなくもない。


「あんた、食べるの遠慮しなさいよ! 私はあんたを許してないんだからね!」


「あなたの許しなんて必要ありません」


 ピルカはヴェルノアにとげとげしく言うが、ヴェルノアはどこ吹く風とばかりに適当にあしらう。


「まあ、大丈夫でしょ。うまく分け合いましょう」


 フィリーが何とかその場を収める。


「できたにゃ~」


 焼きたての食パンをそれぞれ一枚ずつ配る。そして中央に置かれるはちみつの入った瓶。


「じゃあ、フィリーが全員に分けてくれ」


「任せて」


 フィリーが順番に皆の食パンにはちみつをかけていく。


 一番多くかかっているのはフィリーの分だ。そして一番少ないのはフォリンだ。そのほかのメンバーは皆同じくらいの量だ。


「俺っちのなんか少なくないっすか?」


「そうかしら?」


「フォリン、はちみつの分配権はフィリーにある。文句を言うな」


 フォリンは食べられないよりましかと思い、納得する。そもそも本来フォリンはお呼ばれしていない。貴重なブラッドビーのはちみつを食べられるだけでもラッキーなのだ。


「いただきます」

「「「いただきます!」」」


 タケルが両手を合わせていただきますをすると、他の皆も併せていただきますをした。そして皆が一斉にハニートーストに口をつける。皆そのおいしさに驚愕した。


「うっま~い!」


 ピルカが飛び上がりながら大げさに喜ぶ。


「ああ、この味よね。これがたらないのよね」


 フィリーはうっとりしながら、おいしそうに味わう。


「こんなにおいしかったのか!」


 カリュネラは今までこの森にありながらも食べてこなかったことを後悔した。


「ふわわ、おいしすぎて、気絶しそうだにゃ」


 エルミィはあまりのおいしさに何かおかしくなっていた。


 女性陣は一様に大喜びしている。男性陣は女性陣ほどではないが、そのおいしさを味わっている。


「ジル、おいしいか?」


「うん! 甘くておいしい!」


 ジルはいつもより元気よく、夢中になってハニートーストを食べている。


 ヤマトの町にはまだ甘味がほぼない。甘い芋くらいだ。そのためがガツンと甘みのあるものは貴重だ。サトウキビから砂糖が作れればいいが、その種もないため、作ることはできない。


「そう言えば、女神様からのクエストで何か報酬もらえなかったの?」


「何かもらえるものなのか?」


「知らないけど、何かあってもおかしくないんじゃない?」


 そう言われてみると、確かにそうかもしれないと思い、タケルはウィンドウを開く。


「おおっ!」


 クエストクリアの文字が表示されていた。さらに詳しく見ると女神様のギフトボックスの中にある種の種類が増えていた。よくよく見てみると、薬草の種類が増えている。


「薬草や香辛料の種類が増えてるな」


 タケルの分かる範囲だと、ショウガ、ミョウガ、ニンニク、ワサビ、セロリ、コショウ、唐辛子、山椒、ゴマなどがある。それ以外にはよく分からない名前の薬草もある。


「これは料理の幅が増えるんじゃないか?」


 薬味や香辛料が増えればそれだけ料理の幅が増える。塩だけの肉でも食えるが、やっぱり故障があった方がうまい。


「いやいや、ちょっと待ちなさいよ。今、薬草って言った?」


「ああ、たぶん薬草だ」


 ギフトボックスのウィンドウには成長した時の作物の写真も載っているので、タケルは草っぽいものを薬草だと判断した。


「それなら、そっちが先よ。フォリン、食べ終わったらミクシオンを呼んできて」


「はいっす!」


 ハニートーストを食べ終わったフォリンはミクシオンを呼びに行くと、すぐにミクシリオンを連れて戻ってきた。


 ミクシリオンはこの町でポーション作りを行っている女性のエルフだ。エルフの移住のときにエルドールやサイラスなどと共にやってきた。勤勉に仕事に取り組んでおり、ポーションの品質も高い。この町にとってもとても役に立っている存在だ。


「あの、私何かやってしまったのでしょうか?」


 ミクシリオンはいきなり呼び出されたということもあり、どこか恐縮している様子だった。


「タケルが新しく薬草を作れるようになったから、どんな感じのポーションができるか気になってね」


 どんなポーションを作れるのかというのは、町の産業や価値に直結する。そのためフィリーはなるべく早めに把握しておきたかったのだ。


「よし! よし! よーし!」


 ミクシリオンはタケルが新しい薬草を作れるという情報を耳に入れたことで、いきなりガッツポーズして叫びだした。


「サイラスが移住するっていうからついてきたはいいものの、ここでも作るポーションのいつもと同じ。品質の高い野菜を作れるっていうから、何か貴重な素材でもあるかと思えば、何もなし。ああ、このままつまらない一生が続くんだとやさぐれていたと・こ・ろ・に! ああ、神は私を見捨ててなかった! ありがとうございます!」


 ミクシリオンはテンションが高いまま身振り手振り大げさに自分語りをした。最後は女神様に祈りの感謝をした。


「それで、何があるですか!?」


 タケルに顔がくっつきそうな勢いで迫ってくる。近い、近いと思いながらも、その圧力に負けタケルは目に入った薬草の名前を適当に読んでいく。


「ルミナリーフ」

「ルミナリーフ!」


「ノクターナルリーフ」

「ノクターナルリーフ!!」


「アストラリーフ」

「アストラリーフ!!! ふーーーーーー!!!」


 ミクシリオンはいきなり叫びだしておかしくなった。


「あはは、あはは、あはは」


 ミクシリオンは家の中を幸せそうにスキップしている。様子がおかしくなったミクシリオンを見てタケルがフィリーに一言いった。


「なあ、エルフってあんな感じのばかりなのか?」


 サイラスにミクシオン。エルフの職人はそのことになるとテンションがおかしくなるような気がする。


「やめて! サイラスとミクシオンは例外よ」


 フィリーはタケルの戯言にぴしゃりと言う。どうやらフィリーはあの二人とは一緒にされたくないらしい。


「これなら中級の回復ポーションや魔力ポーション、それに上級の回復ポーションだって作れちゃいますよ!」


 今この町で作れるのは下級ポーションまでだ。回復ポーションの場合、ちょっとした切り傷や怪我であればすぐに直すことができる程度だ。しかし、中級ポーションになると、仮に指が切れたとしても切断面をくっつけてポーションをかければくっつく。さらに、上級ポーションになると臓器の損傷からの回復、指程度であれば生えてくるレベルで回復させることができる。


 素材が貴重でめったにないため、世に出回っている上級ポーションはほとんどない。しかしタケルであればいくらでも作れることから、ミクシリオンは頭がおかしくなってしまったのだ。


「ああ、楽しみだな~。……それで私に作らしてもらえるんですよね?」


 ミクシリオンはテンションが高くほんわかしている状態から、急に圧を出してタケルに問うた。その隣にいたフィリーが思わずビクッとしてしまうほどの圧だ。


「もちろんだ」


「よかった~。作らしてもらえなかったら、この町に毒をばらまいていたかもしれません」


 大人しそうな顔をしながら言っていることがめちゃくちゃ過激である。そして、ミクシリオンの知識があれば、それも十分に可能だということが怖いところである。思わず周りにいるフォリンやエルミィは苦笑いをするしかなかった。


「一応言っておくと、すぐに素材はあげられんぞ。たぶん貴重な薬草ほど育てるのに時間がかかる」


 タケルは改めて薬草の育成のことに意識を向けると、育成スキルを使っても、一瞬で大量生産できるということは無理だと勘が告げていた。特にめちゃくちゃ貴重な素材は、最上級の作物並みに手を入れないとこの場所では作れない感じだ。


 ただそれでも貴重な薬草を自由自在に育てられるというのは破格の性能なのだ。


「ええ、待ちます、待ちます。貴重な素材が使い放題になると思えば、我慢できます。ぐへへ」


 ミクシリオンはどうしようもないレベルで顔が緩んでいる。


「じゃあ、これからもポーション作り頼んだぞ」


「お任せください! このミクシリオンが全身全霊を込めてあまたのポーションを作ってみせましょう!」


 こうしてヤマトの町では順次、貴重なポーションが作られるのであった。



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