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24.女神アメリアの子

 


 周囲にいた悪霊をすべて倒したタケルたち。ボス以外はあっさりと倒す事が出来た。


「これで大掃除完了ね!」


 ピルカは少し疲れているが、それでも腰に手を当て一仕事やった感を出していった。


「さ、早くフェルネアのところに行くわよ」


 周囲には悪霊もいなくなったので、ピルカはさっさと先に進んでいくので、タケルたちはそれについて行く。


 そして目的地である大きな木のある場所にやってきた。周囲の木と比べ大きな木の枝の上で一人の精霊が幹にもたれかかっていた。


 その精霊のところにピルカは飛んでいった。


「フェルネア! 大丈夫?」


「ピルカは心配性ですね」


 フェルネアと呼ばれている精霊は微笑みながら返事をした。


「前よりも力がなくなっているわ」


「それは仕方のないことです。もとよりそうなる運命なのですから」


「でも安心して! ブラッドビーのはちみつを採ってきたわ。これを使えば少しは回復するわよ!」


「全く私のためにそんなことをしなくてもいいのに……」


「私がしたいからやってるだけ。ほら」


 ピルカはフェルネアの口元にブラッドビーのはちみつが入った瓶を押し付けると、しょうがないなという感じでフェルネアは受け取りゴクゴクと飲んでいく。


 すると、ほんのわずかだが消えかかっていた体が濃くなった。


 ピルカはその様子を見て少しだけ安心する。


「あ、紹介するわね。今回協力してもらったタケルとカリュネラとラグナよ! みんな強いんだから! あっという間にあの憎き悪霊どもを倒したんだから!」


 ピルカは自慢げにフェルネアに紹介する。


「タケル、こちらはグリムヴェイル大森林の全体を統括している木の大精霊フェルネアよ。あんたたちじゃあね、本来会えない存在よ!」


 ピルカはタケルたちになんだか偉そうに紹介する。


「見ていましたよ。人の子……いえ、女神アメリア様の子タケル」


「なっ」


 タケルは思わず声を上げてしまった。周囲にいたカリュネラ達も一斉にタケルのことを見る。


 当然のことながら、今まで女神様に転生させてもらったと言っても誰も信じてくれなかった。しかし、目の前にいる精霊は女神アメリアが生み出した人間であるということを認識していた。


 さらに、女神の子という言葉に心底驚いたのだ。言われてみればそういう見方もできる。この世界にタケルを産み落とした両親は存在しない。となると、女神アメリアの子と言っても過言ではないのだ。


「あなたはこの森の突如現れました。さらには普通の者には破ることができない結界までついていました。あんな真似ができるのは女神様くらいでしょう」


 フェルネアは驚愕しているタケルになぜ女神の子だと思ったのかという理由を説明した。


「女神様はごくまれにこの世界に干渉するということを私たちは知っています」


 どうやらこの大精霊は普通の人が知らないようなことも知っているようだった。


「まさか、あんたが女神アメリア様の子だなんて……」


 フェルネアの言葉を聞いて一番驚いていたのが、ピルカであった。


「まあ主ならそれくらいの存在って言われても納得かな」


 カリュネラはタケルが普通じゃない力を持っていることを分かっていたので、どこかそれに納得するのであった。


「主、すごいです!」


 ラグナはそのすごさがいまいちよく分かっていないが、嬉しそうにしっぽを振りながらタケルを褒める。


「おいおい、やめてくれよ。俺はただの農家だ。あまり変に持ち上げないでくれ」


 いきなり女神アメリアの子と言われて驚いたが、タケルの感覚としては農業が好きなだけのただの人間だ。あまり変に持ち上げられるのも困るのだ。


「外の連中には広めるなよ」


 この世界の宗教がどうなっているのか知らないが、なんだか面倒ごとに巻き込まれそうな感じもするので、秘密にしておきたい。あくまで異世界から転生してきたとか言っている頭のおかしい奴でありたい。


「まあ、言っても誰も信じないでしょうけどね」


 フェルネアの言葉だからこそ、ピルカは信じたのだ。そこら辺の人が言っても決して信じなかっただろうということは自覚している。


「そうだ! タケル、あんたの力を使ってこの木に活力を与えてちょうだい。この木が活性化すればフェルネアも元気になるのよ!」


 そう言ってピルカは大樹の幹を軽くポンポンと叩く。


 ピルカがタケルを連れてきた理由の一つがこれだ。悪霊を退治してもらいたかったというのもあるが、これはタケルにしかできない。だから、しつこくタケルに付きまとったのだ。


 ピルカの要求に対してタケルは悲しそうな表情を浮かべて答える。


「いや、俺の力は使わない方がいい」


「どうしてよ!」


「たぶん俺の力を使ったらもっと寿命が短くなるぞ。俺の力は成長させるのとセットで活力を与えるものだからな」


「そんなっ!」


 その話を聞いてピルカは愕然とした。


 タケルの力は作物を育てる過程で活力を与えるものだ。ただ単に活力を与えるものではない。成長、いやこの場合だと老化を進めることになるのだ。一時的には回復する可能性はあるが、それは寿命を削るのと一緒だ。


 自分を救う手立てがないことを知ってもフェルネアは微笑んだままだ。


「分かっています。私はもう長くないことを」


「いやよ!」


「ピルカ。前にも言ったはずです。私はただ循環するだけ。世界と一体になるだけだと」


「そんなの分かんないわよ! 私はあなたに消えてほしくない! ずっといてほしいのよ!」


 ピルカはフェルネアに縋りついて涙を浮かべながら喚いた。ピルカだって頭では理解している。でも、心がついてこないのだ。


 フェルネアは縋りついてきたピルカの頭を優しくなでながら言った。


「ピルカ、最後のお願いがあるのです」


 最後のお願いという言葉を聞いてピルカは喚いていたのをピタリと止めた。


「何?」


「ほとんどの悪霊は倒してもらいましたが、あの悪霊たちを送り込んできた元凶はそのままです。このまま放置していては、再びこの地に悪霊が住まう可能性があります。それではこの地の循環が正しく行われず、森は枯れ果ててしまうかもしれません」


「そんなのダメよ!」


「ええ、ですから。元凶となる悪魔がこの世界からエネルギーを奪うのをやめさせてほしいのです」


「分かったわ! 私が何とかしてみせるわ!」


 ピルカは涙をぬぐいながら決意する。これはフェルネアからの最後のお願い。何としてもこのお願いを達成してみせる。最後には憂いなく心安らかに逝って欲しいのだ。だからこそ、ピルカは心の中に闘志を燃やす。


「あんたたち行くわよ!」


 そう言ってピルカは森の方に向かって行く。それについて行くタケルにフェルネアは声をかける。


「タケル、どうかあの子の力になってやってください」


「安心しな。元からそのつもりだよ」


 それを聞いたフェルネアは安心したような表情を浮かべる。


 こうしてタケルたちは元の世界に戻っていくのであった。



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