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23.森の管理者の頼み2

 


 ウォーベアを倒したカリュネラのところにタケルたちがやってくる。


「主―! やっつけたよー!」


 そう言ってカリュネラはタケルに抱き着いてくる。


「見ていたぞ。カリュネラは結構強いんだな」


「まあね!」


 和気あいあいとしている横でフォリンはカリュネラのあまりの強さに驚いていた。


「カリュネラ先輩にはもう逆らえないっすね」


 元々逆らう気がなかったのだが、目の前で圧倒的な力を見せつけられるとなおのこと逆らう気がなくなったフォリンであった。


「で、どうやってはちみつを採るんだ?」


 ウォーベアは倒したが、それでも巣の周りには大量のブラッドビーがいる。そいつらを片っ端から殺していけば採れるだろうが、それはかなり大変そうだし、ピルカ的にはそれはやめてほしそうだった。


「私に任せなさい!」


 そう言ってピルカはブラッドビーの方に向かうが、ブラッドビーからは一切襲われずに巣の中心にいる女王のところにたどり着いた。そこで言葉を使わずに意思疎通を行ったところ、了承をもらえたようで、木のうろの奥の方にあるはちみつをピルカが持っていた陶器の入れ物に入れてもらって帰ってきた。


 無事にはちみつを持ってこられたようだが、ピルカの顔は暗かった。


「私の分はもらえたけど……これ以上は無理だって……」


「は?」


「いや、だって! あの子たちにも必要なのよ!」


「それは分かるが……」


 どうやらウォーベアにはちみつを持っていかれすぎて、ブラッドビーたちに必要なはちみつすら足りていないようだった。それでもピルカの頼みだからというのでギリギリ分けてもらえたらしい。


 しかし、タケルはここにはちみつを採りに来たのだ。それがいきなり採ってはダメと言われてもそう簡単に納得はできない。かといって、ここで大虐殺を行う気にもなれない。タケルは腕を組みながら少し考える。


「蜜の原料となる花があればいいか?」


「そうね! あんたの力ならそれができるわね!」


 そう言ってピルカは再び女王のところに向かって何かやり取りをしたあとにまた戻ってきた。


「それならいいって」


「よし、それじゃあ、どっか花が咲いているところにでも案内してくれ。そうすれば俺が増やしてやる」


 タケルは花の種は持っていないし、女神様のギフトボックスの中にも花の種はない。しかし、そこら辺に生えている花があれば、そこから種を採取して増やすことができる。それを何回か繰り返せば辺り一面を花畑にすることができる。


 ピルカがブラッドビーに頼んで、花が咲いているところに連れて行ってもらう。


 少し歩いたところに、パンジーの花が何輪か咲いていた。タケルは手をかざしながら花の成長スピードを一気に上げて、種を作り出す。そうして手にはパンジーの花の種が残った。


「よし、どうせなら巣の周りに作ってやるよ」


 タケルはブラッドビーの巣の周辺で少し開けた場所に着いた後、そこで種の増産をした。ひとしきり種を作ったあとその種を周辺にばらまいた。そしてタケルは地面に手を付き育成スキルを使う。結構範囲が広いが、さんざん農業をやって鍛えたのでこれくらいは難なくできる。


 そうして一気に花が咲き誇る。辺り一面が花畑になる。


「「「おー」」」


 少し離れた場所からその様子を見ていたフォリンとカリュネラ、ラグナが声を上げる。


「これでどうだ?」


「ブラッドビーたちも喜んでみるみたいよ!」


 近場に蜜の原料となる花畑があれば、簡単にはちみつを作れるようになるだろう。これでタケルがはちみつをもらっても大丈夫なようになった。


「じゃあ、これに頼む」


「任せなさい!」


 タケルはピルカに陶器の瓶を渡すと、ピルカはブラッドビーの巣の方に行き、はちみつをもらってきてくれたので、タケルはそれを受け取った。


「よし、これではちみつもゲットしたし、さっさと帰るか」


「まだ終わってないわよ!」


「まだ何かあるのか?」


「むしろ、ここからが本番よ!」


 帰る気満々だったタケルに対して、ピルカが言う。タケルは帰りたい気持ちもあるが、女神様からのクエストでもあるのでむげにはしない。


「で、何するんだ?」


「いや、その、ちょっと秘密の場所にね」


「秘密の場所?」


 なんだか歯切れの悪いピルカ。その秘密の場所とやらがどんな場所化をあまり言いたくなさそうである。


「そう。あんまり人には知られたくない場所なんだけど……タケルあなた一人で私について来なさい!」


「主が行くなら、僕も行く」


「我も行く」


 ピルカは色々な状況を考慮したうえでタケル一人を選定したが、カリュネラとラグナが食い気味に言った。どこだかよく分からない場所にタケルを連れていかれるのが嫌なのだ。だから、二人とも意志は固い。


「俺はどっちでもいいけどな」


 そんな二人をよそにタケルはのんきに気構えている。


 女神様からのクエストなので、タケルとしては一人で来いと言われても行くつもりでいる。


「うーん、まあ、あなたたち二人くらいなら……」


 意思の固そうなカリュネラとラグナを見て、ピルカはぐるぐると頭の中で考える。この二人もきちんとした戦力になるので、連れて行くことに不満はない。しかし、あの場所は特殊だ。ピルカが守らなければいけないので、人数が増えると大変なのだ。


「あー、じゃあ、俺っちはいいっすよ。ここで応援を待って、ウォーベアの肉を町に持って帰るっす」


 フォリンは大変そうなピルカを察してか、不参加を決め込んだ。


 それにウォーベアの肉をこのまま放置してしまったら、他の魔獣に食われる可能性もある。それを防ぐためにここで応援が来るまで見張っているようだ。


「じゃあ、俺たち三人で行くか。早い方がいいんだろ?」


「そうね。早いに越したことはないわね」


「うし、じゃあ、フォリン。ここは任せたぞ」


「了解っす!」


 こうしてフォリンを除いたタケルたちは、ピルカの後について森の中を進んでいった。


 ある程度進んだところで、タケルはピルカに質問をした。


「で、その秘密の場所とやらはどこにあるんだ?」


「もう少しよ」


 もう少しという割にはまだまだ森の中で、特にどこか特別な場所に着くような気配がなかった。


「着いたわ」


「ここなのか?」


「そうよ」


 タケルが疑問に思うのも当然だ。ここは普通の森の中と大して違う場所ではない。秘密の場所というにはあまりにもありふれた場所だった。


「まあ、こっちの世界じゃあ、たいしたところじゃないわね。でもね、こっちの世界には用事がないのよ。私が用事はあるのは、向こうの世界」


 そう言ってピルカはいつの間にか持っていた鍵をタケルたちに見せびらかすように見せる。


「私の特殊スキル【万界の鍵】を使って、異なる位相の世界にあなたたちを連れて行くわ!」


 ピルカはそのカギをその場の空間に差し込み回す。すると、どこにもなかった扉が現れて通れるようになった。


「さあ行くわよ! フェルネアを救いに!」



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