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18.救出作戦2

 

 刑務所の扉を少しだけ開いて除くと、そこは看守室となっていた。見える範囲に居るのは四人。


 幸いなことに気は緩んで雑談をしており、こちらには全く気付いていない。


 再び二匹のディープスパイダーが部屋の中に入って天井の方から近づいていく。二人の兵士の首に飛び乗りかみつく。


 すると兵士はろれつが回らなくなり明らかに様子が変わった。


「おい、どうした?」


 その異変に気付いた他の兵士が二人に近づく。その隙を狙って、タケルは部屋の中に入って、男たちに近づく。


「なんだ! 貴様は!?」


 タケルはそれを無視して腹をなくって気絶させる。もう一人残った男は果敢にもタケルに殴りかかった。


「おらっ!」


 タケルはそれを躱し顎に一撃を食わせると、そのままその男も気絶した。


 麻痺した男たちにもそれぞれ首を絞めて気絶させる。


「ふー何とかなったな」


「兄貴、鍵があったっすよ」


 兵士を気絶させるのをタケルに任せていたフォリンは牢屋のカギを探していた。


「よし、さっさと救い出すか」


 こうしてタケルたちは、地下にある牢屋の方に向かって行った。


 一つひとつの牢屋を確認していくと、ようやくブロムを発見した。ブロムは手枷をはめられたまま地面の上で眠っていた。


 タケルたちは牢屋のカギを開け、中に入る。


「おい、ブロム起きろ」


 タケルがブロムをゆすって起こすと、半分寝ぼけたような目でブロムはタケルを見る。


「……どうして、お前がここにいる!?」


「そんなもん決まってるだろ。助けに来たんだよ」


「いや、俺は……」


 ブロムの心は折れかけていた。タケルのところに行くのを諦めて大人しく領主の言うことを聞こうと。だからこそ、来るはずもない助けに来て困惑していた。


「どうする? 嫌っていうならこのまま置いていくが」


 困惑していたのを拒否と感じ取ったタケルが改めて聞いた。


「ふざけるな! タケルについて行くに決まってるだろ!」


「そいつはよかった!」


 タケルはニカッと笑った。タケルが手枷を外しているときに、ブロムが言った。


「朗報が一つある」


「なんだ?」


「俺はうまい酒を造れるぞ!」


 ブロムはうれしそうに笑いながら言った。


 牢屋から出て移動する最中に、ブロムは領主とタルグリンから聞いた話をタケルに話した。


「へぇ、それじゃあタルグリンって奴がブロムの酒を台無しにしていたのか?」


「いや、たぶん領主とグルだと思う。タルグリンは慎重な男だ。それがスパイを使って酒を台無しにするなんてリスクのあることをやるわけがない。もしバレたら相当な罰が下る。そんなリスクを取らんでも奴の商会はうまくいっている。だから、領主もこの件に関わっているのだろう」


 カザルでは領主の権限が強い。仮に犯罪をしても領主がもみ消せば、無罪となる。つまり、タルグリンは無罪になる保険があったからこそ、スパイを使って酒を台無しにさせたということだ。


「なんでわざわざそんなことするかね?」


「たぶん俺が領主様の意向に逆らったからだ。領主様は出来がいまいちのワインにも、クラウン・レッドの認定をしろと迫ってきたことがある。でも、俺は拒んだ。そこそこの酒に国王陛下からもらった称号をつけるわけにはいかないとな」


「つまり、自分の思うがまま酒を扱えるように策をめぐらしたってところか」


「だろうな」


 その話を聞いてタケルはむかついていた。もし仮に自分が丹精込めて作った農作物を台無しにされていたら、そいつをボコボコにぶん殴っている自信がある。


「それは許せねーな。領主を一発殴ってから行くか?」


「確かにむかつく話だが、さすがにそんなことはできんだろうが」


 ブロムは若干呆れながら言った。領主という絶対的な権力者の前には民は無力だ。どれだけむかつくことをされても黙って受け入れるしかないのだ。


 地下から出て、出口の扉に近づいてきたところで、タケルは異変に気が付いた。


「ん? こりゃあ、扉の先は囲まれてるな」


「あれ? 本当っすか?」


 タケルはほんの少しだけ扉を開いて、外の様子をうかがうと、そこにはたくさんの兵士がいた。


「いるな。全くフォリンのスキルは全然当てになんねーな」


「おかしいっすね。今も全然反応がないっす!」


「仕方ねー、俺が隙を作ったあと足止めをするから、お前たちは先に町の外の集合地点まで行け」


「危険だ。俺のためにそこまでしなくていい」


 ブロムを逃がすために一人おとりになろうとしているタケルをブロムは止めようとした。自分が大人しく捕まれば、この二人くらいは逃がしてもらえるかもしれないからだ。


「足手まといがいなけりゃ、逃げるくらいはできるさ」


 タケルは全く気負った様子はなく、軽い調子で言う。


「フォリン、ブロムを頼んだぞ」


「分かったっす」


「お前たちも二人のこと頼んだぞ」


 タケルに引っ付いていたディープスパイダーをフォリンの方に移動させる。


「しかし……」


「お前を助けに来たのに見捨てたら意味がねーだろう―が」


 タケルに引く気は一切ない。ので、早々に議論を終わらせて行動を始める。


「よし、行くぞ」


 タケルは勢いよく扉を開ける。すると、兵士たちは槍を構えてきた。その中でも身なりがよい騎士がタケルたちに向かって警告を行った。


「お前たちは包囲されている。大人しく牢屋に戻れ」


 タケルは兵士の言葉を無視して、地面に手をつける。そして、土魔法を発動させる。


 入口の門の方に向かって地面から土が盛り上がり、その上に立っていた騎士や兵士は転んでしまう。


「くっ、魔法使いだったのか!」


「うわっ!」


 盛り上がった土は徐々に高くなっており、最終的には門の高さまで盛り上がっている。


 こうしてフォリンとブロムが逃げるための道ができた。


「行け!」


 その言葉を聞いたフォリンとブロムはその道を走りだす。敵はいまだ混乱しており、まともに動けない。その隙をついてフォリンとブロムはどんどん進んでいく。


 途中で妨害をしてくる敵もいたが、二人の後についていたタケルが水魔法で水を勢いよく飛ばして撃退していった。


 フォリンとブロムは門の上から飛び降りて、そのまま逃げようとする。一方タケルはその場に残り少しだけ足止めをする。


「逃げ出した囚人は外の仲間に任せよ! 我々はあの男を捕らえる!」


 騎士が周りの兵士たちに向かって激励を飛ばす。


「ちっ、外にもいやがるのか」


 確かに確認すると、フォリンたちが逃げた逆の方から、こちらに向かっている兵士たちがいる。それが全員フォリンたちの方に行くと少し厳しいだろう。


「仕方ねー。もうちょっと暴れるか」


 タケルは門の上から飛び降りて、援軍の兵士たちの前に立ちふさがる。その場の指揮官である騎士が兵士たちに指示を出す。


「このまま串刺しにせよ!」


 兵士たちは持っていた槍を構えて、タケルの方に突進してくる。タケルは再び地面に手を付ける。そして、兵士たちが進んでくる道の前にくぼみを作る。兵士たちは夜で見通しが悪いのもあって、くぼみに転んでしまう。


「うわっ!」


「いてっ」


「何が起こった!」


 最前列の奴がこけたことにより後ろも詰まってこけてしまい、ぐちゃぐちゃのてんやわんやの状態になっている。


「うわ、死んでなけりゃ―いいけど」


 今回の作戦中、可能な限り兵士は殺さないようにフィリーに注意されていた。もし兵士を殺して恨みを買ってしまうと、将来的にドワーフたちの居場所がバレたときに強硬手段を取られる可能性があるからだ。引き抜いた時点で恨みは買っているだろうが、恨みの要素は少ない方がいいに越したことはない。それにタケルとしてもむやみに人を殺す気はないので、だいぶ手加減をしている。


 その兵士たちの後方からさらに馬に乗った男が三人やってきた。


「賊はどうやら相当な手練れのようだ。心してかかれ」


 真ん中にいる男が残りの二人に指示を出す。二人の騎士は馬から降り剣を抜き、タケルに切りかかってきた。


 タケルも剣を抜き、騎士の剣を弾き返す。するともう一人の騎士が横から切りかかってきた。それをタケルは後方に飛んで回避する。


「へぇ、なかなかやるな」


 この少しの戦いだけでも分かる。相手もそれなりにやるようだ。そこら辺にいた兵士とは格が違う。


「それはこちらのセリフだ」


 そうして二人の騎士はコンビネーションで切りかかってくる。タケルはそれを時には受け、時には躱して避ける。


「あの賊は我らに任せよ。残りの兵士たちは逃げた賊を追え!」


 先ほどから指示を出している男が、他の兵士たちにも指示を出す。


「行かすかよ」


 タケルは騎士二人の攻撃を避けながら、水魔法を噴射して兵士たちを吹き飛ばす。


「貴様の相手は我らだ!」


 タケルが魔法を使った隙をついて騎士が攻撃をしてくる。しかし、それでもタケルを捕らえることはできず、どこかいら立ちが募り始めている。


 そんないらだちが伝わったのか、残った一人は剣を抜きながら、近づいてきた。


「私の名はドラクム・ルーンデルク。この町の領主だ。もう賊の貴様に命はない。覚悟しろ」


 ドラクムは上から目線で何とも偉そうに宣言する。しかし、こいつの正体を知ったタケルは怒りがふつふつと沸いてきた。それは言うまでもなく、ブロムの酒を台無しにしていた黒幕だからだ。


「お前か! ゴミクズ野郎は!」



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