33.結婚と建国宣言
ノクタリア王国での仕事の大部分を終わらせると、タケルは軍を率いてヤマトの町に戻ることにした。まだ完全には終わっていないが、ヴェルノアとバルガスに任せてある。
帰路の中、一人もんもんと悩んでいるフィリーがいた。
(さて、これからどうしようかしら)
タケルがこの戦争を始める前つい勢いでタケルにあんなことを言ってしまった。でも、不思議と後悔はなかった。多分あれが私の本心だからだ。正直私だってジルが殺されたことには悲しかったし怒りもあった。だから、きっとタケルが虐殺する道を選んだとしても彼について行っただろう。
結果として虐殺を行わない選択をしたのはちょっとだけほっとした。でも、タケルならその道を選べると思っていた。彼は農業なんてやっているし農民を自称しているが、明らかに教養や知識がある。異世界から来たという話だが、きっとそれなりに地位の高い家の出身なのだろう。
そして、ノクタリア王国の属国化にも手を貸してしまった。ここまで関わっておいて今更どこかに行くというのは無理だ。もちろん私の気持ちとしてもヤマト王国に残るつもりではあるが、私はこのままヤマト王国にいることはできるのだろうか?
問題となるのがお母様だ。絶対に口を出してくるし、場合によって手も出してくるかもしれない。今までは隠れていたから何とかごまかせていたが、国を作り周辺国と国交を結ぶのであればごまかすことはできない。
自分が直接話をつけに行くか。いや、でも、うまいこと私のことを利用されそうな気がする。それだけは絶対に嫌だ。私のせいでタケルに迷惑をかけたくない。
じゃあ、どうすれば……、
「なあ、フィリー」
タケルがフィリーに話しかける。
「ん?」
フィリーは考え事の真っ最中で生返事をした。
「俺と結婚しないか?」
「うん……ん? えっ、ちょっと、今なんて言った!?」
いきなりのタイミングで、耳を疑うような単語が耳に入ったので、フィリーは動揺した。
「だから、俺と結婚しよう」
「えっ!? そんないきなり……」
フィリーはいきなりではあるがそう言われてうれしい気持ちがあり、頬を赤らめるが、すぐに返事もできなく言葉に詰まった。
「嫌か?」
「嫌……じゃないけど……だって、私は……」
「フィリーがなんか抱えてることくらい知ってるさ。もし何か問題があるなら俺が何とかしてやる」
「ふぇ!?」
フィリーはあまりの嬉しい言葉に、思わず普段では絶対に見せないような反応をしてしまった。
「それなら問題ないだろ?」
フィリーには一つだけ心に引っ掛かっていることがあった。
「……いや、でも、セラフィナは?」
「ん? なんでセラフィナの名前が出てくるんだ?」
「いや、だって、二人は人族でしょ! それにセラフィナは可愛いし……」
「もしかしてこの世界って同族としか結婚できないのか!?」
「いや、そうじゃないけど……同族が一般的なのよ。それでセラフィナのことはどう思ってるのよ!」
「どうって……別にセラフィナに対して恋愛感情は一切ないぞ。なんか俺のことをやたらと崇拝してくるし……なんか恋人とか夫婦になれる気がしないな」
「ふーん、そうなんだ」
フィリーは自分が考えていたことが杞憂だと知りほっとする。
「俺はフィリーが好きだし、これからもずっと一緒にいたいんだ。だから、俺と結婚してくれ!」
フィリーは照れながら右に左にと視線を動かし少しだけ迷った様子を見せたあと、はにかみながら言った。
「いいわよ」
「本当か!?」
「うん、私もタケルのこと好きだし」
「それは良かった! 一緒に幸せになろうな」
「うん」
そう言ってタケルとフィリーは見つめ合ったのに自然と顔が近づいていきキスをした。
◆
タケルはヤマトの町に戻ってきたあと、建国宣言をするために広場の演壇に立った。
演壇にはフィリーやカリュネラ、ヴェルノアの他に各部族の長たちも立っている。暴動が起こることはないが、念のために演壇の前には警備兵たちが立っている。
タケルは一人前に出て演説を始める。
「俺がこの場所で畑を耕してから色々なことがあった。始めは獣人族が俺の配下に加わったな。その時はこの場所にろくな建物もなくてよ、みんなで一緒に家を作ったりしたな。それからエルフ族やオーク族も配下に加わって多少は町っぽい感じになったな。そのおかげもあってネザリス王国との交易も始まったな。北部での争いから配下が一気に増えたから、その当時のことは知らない奴も多いかもしれない。
そんなざっくりとした過程を経て、俺は国を作ることにした。
はっきり言っておくぞ。
この国は俺の俺による俺のための国だ!
俺は俺のやりたいことをやるし、俺のやりたくないことはやらん!
俺は誰よりも強欲だ!
俺はお前らが暗い顔をしているのは嫌だ!
お前らが暗い顔してるのにのんきに笑うなんて出来ねーからな。
だから、お前らを全員幸せにしてやる!
最高の人生を送らせてやる!
一緒に最高の国を作るぞ!」
そう言ってタケルは拳を上に挙げる。
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
それに合わせて聞いていた観衆は拳と大声を上げる。
そして歓声が静まった後、タケルはフィリーをそばに寄せ、さらなる言葉を放った。
「そうだ! 俺はフィリーと結婚したぞ! みんな祝ってくれ!」
「おおおおおおお!」
「おめでとうございます!」
「ご結婚おめでとうございます!」
「こりゃあ祝い酒が必要だな! がっはっはっは」
観衆が口々にタケルを祝福する言葉を送った。
「あれ? まだ結婚してなかったんすか? あれで?」
「……らしいな」
タケルとフィリーと近くで見ていたフォリンとシェイドにとっては、結婚していなかったという事実の方が驚きだったようだ。




