22.意思の確認
町では戦争に向けて様々な準備が進み始めた。
そんな中タケルは部族に属していない者たちに、今後どうするかの意思確認をしに行った。
タケルなりのけじめだ。国を作ればこれまでののんきな暮らしとは違ったものになる。それが嫌で離れるという人がいてもおかしくはないし、タケルとしても見送るつもりだ。
そしてまずはラグナ、カリュネラ、ヴェルノア、アルネイアを集めて、これまでの事情を説明した。
「で、俺は国を作ることにしたし、ノクタリア王国を潰すと決めたが、お前たちはどうする?」
タケルは内心少しドキドキしながら問いかける。
「もちろん我は主の国造りに協力します!」
「僕も協力するよ!」
「当然、私も主様に従います」
「私も協力します」
全員タケルに賛同してくれたのでほっとする。特にラグナとカリュネラはずっと一緒にやってきたのでいなくなったら正直へこむところだった。
「ところでさ、国を作ると何か変わるの?」
カリュネラが質問をする。
「うーん、それは未知数だな。少なくともカリュネラ達を隠すことはしないから、その方面で厄介ごとがあるかもしれないし、ないかもしれない。ただ、お前たちを見捨てることはしないから安心してくれ」
この世界では基本的に魔獣は人類の敵という認識だ。その上位存在である魔物や魔人も人類の敵なのだ。だがこの国ではラグナ、カリュネラ、アルネイアなどがいるため、その点で他国から何か言われる可能性がある。だが、教会の人たちを招いたときにラグナの存在は知られたが、そこまで問題視されなかったので何とかなるだろうとは思っている。
「ふーん、そんなもんか。それよりも楽しみだな! ノクタリア王国に攻めるときはさ! 思いっきりやってもいいよね!?」
「兵士相手なら思いっきりやっていいぞ」
一般人の虐殺は行わないと決めたが、兵士相手であれば何の問題もないのだ。
「やったー!」
思いっきり暴れられる場が用意されたとあってカリュネラは大喜びしている。
「ところで主様、襲撃のあった村では魔方陣があったそうで」
「ああ、そうだな」
「それを確認すればどんな儀式を行ったのか分かるかもしれません」
「そっか、お前は詳しいんだったな。それじゃあ、任せる」
「承知いたしました。すぐに調査に参ります」
次に会ったのはピルカだ。
「よお、ピルカ」
「何やら国を作るみたいね」
「まあな」
「事情は色々と聞いたけど……まあ、私から言うことはないわ。ただジルのことは残念だったわね。私もちょっと面倒を見てあげたけど、あの子がいなくなるのは少し寂しいわ」
ピルカはタケルの家で世話になっている以上ジルとの接点も多い。たまに一緒に遊んでいたり畑仕事をやったりしていたので、それなりに仲が良かったのだろう。
「……」
ピルカの言葉に対してタケルは沈黙で返す。ジルのことについては自分でもどう言えばいいのか完全には整理がついていない。
「お前はここから離れるのか?」
「はぁ? なんでそうなるわけ!」
「いや、なんか俺が国を作るのを快く思ってないみたいだし」
「まあ、確かに国を作るっていうのはびっくりしたわよ。あんた嫌そうにしてたし。でもね、それとこれは話が別よ。国造りに協力するつもりはないけど、私はここに残るわ。……まあ、今まで通りの仕事だったらやってやらないこともないわ!」
「ふふ、そうか。ありがとうな」
「べ、別に、と、友達なんだからこれくらい普通でしょ!」
「そうだな。お前が友達でよかったよ」
「へへ」
友達と言われてピルカは嬉しそうに笑った。
次に出向いたのは、ドワーフたちだ。
「お前たちはどうする?」
「そんなもん決まってる! 俺はここに残る!」
ブロムはきっぱりとここに残ると宣言する。
「そんなあっさりと決めていいのか」
「ここ以上にうまい酒を造れる場所があるなら教えてくれよ!」
「はは、それはねーな!」
「だろ? だったら俺がここに残る理由になる」
酒職人であるブロムはここに残ることになったが、他のドワーフたちはどうするのかとタケルはバルドリンたちの方を見る。
「じゃあ、俺たちも残るしかねーな」
「全くだ。ここ以上にうまい酒をがばがば飲めるところなんてねーからな」
「ちげーねー!」
「「「がっはっはっはっはっはっは!」」」
ドワーフたちは何とも愉快な理由でヤマトに残るのを決定したのであった。
次はセラフィナのところに行った。
「セラフィナはどうする?」
「タケル様が国を作るというのであれば、それは女神様のご意志なのでしょう」
「いや、どうだろうな。今回はクエストというわけでもないし……」
少なくとも今回クエストは出ていない。俺がやることが正しいのか間違っているのかは分からない。だが、人生なんてそんなものだとタケルは割り切っている。
「そして愚かなノクタリア王国が滅びるのもまた女神様のご意志なのです」
「そ、そうか?」
タケルの勘では女神様にはそんな意思はない。もしそうなら滅ぼせとクエストを出している歯ずらからである。だから、これから行うのはタケルの意志なのだ。
「はい! そうに違いありません! ですから、タケル様が国を作りその場所で私が女神様に祈りを捧げるのもまた必然なのです!」
「じゃあ、残るってことでいいのか?」
「はい。これからもどうぞよろしくお願いいたします」
タケルは少し困惑しながらもセラフィナが残ってくれてよかったと思っている。ひと騒動起こしたにもかかわらず、すぐに帰りましたじゃあ無駄なことをしただけになるからである。
ヴェルノアは襲撃があった村に赴いていた。
「これが……」
村の広場に広がっている魔方陣を見た。いまだに一部では血が残り物々しい雰囲気な場所であるが、それに一切かまうことなく魔方陣を観察する。
「このような劣悪な魔方陣で人の強化をもくろむとは、人間とは何とも愚かなのでしょう」
ヴェルノアはこれが人を強化するための魔方陣であることは何となく察せられた。ただ、劣悪な魔方陣にもかかわらず最後まで魔方陣が起動した様子がうかがえるため、正直驚きもしていた。
「あの者たちと繋がるはあるのでしょうか……もしそうだとしたら……うれしいんですけれどね」
ヴェルノアを復活させたあの二人組をヴェルノアは忘れていない。あの時与えられた屈辱はいつか必ず返すと決めているのだ。
調査を終えたヴェルノアはタケルの下に報告を行った。
「あれは人の強化を行う儀式で使われる魔方陣でしたね。本来であればデメリットがあるので使わないものなのですが……敵は何やら焦っているようですね」
「焦ってる?」
「ノクタリア王国が危機的状況にあるのか、どこかの研究者が実験の成果を出せとせっつかれていたのかは定かではありません」
「なるほどな。まあどんな理由にせよ。俺たちに手を出したことには変わりねーな」
「仮に実験を行ったものが分かった場合、どうされますか?」
「殺す」
タケルの目はもう復讐や憎しみで曇っていない。しかし、それはそれとして、実行犯を野放しにしておく趣味もない。だからあっさりとヴェルノアに命令する。
「承知いたしました」
こうして戦争に向けて準備が進んでいくのであった。




