14.教会の調査団
アステリアは会議で決まったことをタケルとセラフィナに話した。
「教会としては確認しないことには認められないと」
「まあ、そりゃあそうだよな」
タケルとしても一個人が言っているだけの話をそのまま鵜呑みにするとは思っていない。教会内で地位があれば話は違うだろうが、教会にとっては賊として侵入してきたものでしかないからだ。
「ですが、真実だと確認できればセラフィナはヤマトの町に住む許可は取れました」
「本当ですか!」
「ああ、教皇様からお許しが出た」
教皇様のお許しという言葉を聞いてセラフィナはパーッと明るく笑う。
「タケル様、これで何の憂いもなく私はタケル様と一緒にいられます」
「まあ、認められたらな。……確認しに来る奴は信用できる奴なのか?」
認められたらそうなるが、逆に言えば認めなければそうならないのである。まだ主導権は教会側にあり、確認する人の気分次第でどうにでもなるものなのだ。
「調査に出向くヨハネス枢機卿は教会の中でも女神様への信仰心が篤い方です。……ですから、少なくとも女神様に関することで、私欲で意見を捻じ曲げるような方ではありません」
「なるほどね。それなりに信用はできるが、厳しく見られるってところか」
「……そうですね。策を講じて騙すようなことをすれば間違いなく見抜いてくるでしょう」
「タケル様、安心してください。あの地に行けばヨハネス枢機卿も必ず分かってくださるはずです」
セラフィナの微笑みながら自信満々に言うが、その自信がどこから来るのかタケルには不明だ。
「ヨハネス枢機卿よりも注意したいのは、エルシアという聖女代行です。これはタケル様の存在を疎ましく思っているサルビオ枢機卿のひも付きです」
「……サルビオって俺がぶん殴っちゃ偉そうな奴か」
「そうですね」
セラフィナが苦笑いしながら応える。
「一応聖女代行という聖女見習いの中でも筆頭という形なので、今回同行することになっています。もしかしたら何らかの妨害がある可能性も……」
というか、間違いなく邪魔するだろう。サルビオはセラフィナを手放したくなさそうだったので、ひも付きに嘘の報告をさせるくらいしそうだ。
「うーん」
「一応、私や他の二人の聖女候補生もいるので、それほど悪さはできないと思いますが……」
「まあ、それなら大丈夫……か?」
「大丈夫です。タケル様。それなりに見えるものがあの地に行けば感銘を受けるのは間違いありませんから」
相変わらずセラフィナは自信満々に微笑んでいる。
こうしてタケルたちは、教会の一団と一緒にヤマトの町に帰ることになった。教会の一団の受け入れもあるので、シェイドたちにはフィリーたちに事情を話すために先に帰ってもらった。
タケルとセラフィナは馬車で、聖騎士団長のアステリアが聖騎士を率いて一団を護衛するという形で送ってもらった。
グリムウェイル大森林の入口にたどり着いたところで、タケルたちは馬車から降りた。ここからヤマトの町まで馬車が通れるような道はないからだ。
「ふぅ~、ようやくここまで来たか」
タケルは馬車から出てきて背伸びをして体を伸ばしている。タケルとしてはラグナに乗ってさっさと帰りたかったが、そういうわけにもいかなかったのだ。
「本当にグリムウェイル大森林の中に町があるのか?」
馬車から降りたヨハネス枢機卿は独り言を言う。またグリムウェイル大森林は魔獣が多く住む危険区域という話が一般的なため聖女候補たちはどこか心配そうだ。
そんな人たちを見てアステリアは声をかける。
「ご安心を。我々が皆様をお守りするので」
護衛としてはこれ以上ない人選だ。そのため聖女候補たちはその言葉に安心をした。
しかし、その直後、何かに気付いたアステリアが大声を上げる。
「全員警戒態勢! 森の方から何か近づいてくるぞ!」
その言葉を聞いた聖騎士たちはいっせいに剣を抜き森の方を警戒した。
そんな状況でもあくびをしていたタケルはのんきな声で言った。
「そんな警戒しなくてもいい。あれは俺らの迎えだ」
森の奥の方から見えてくるのは、ホワイトウルフに乗っている獣人やエルフたちであった。
「兄貴~! 迎えに来たっすよ!」
その先頭にいたフォリンが手を振りながらタケルに声をかける。そしてラグナはタケルに飛びついてきた。
「おーよしよし。久しぶりだな」
「主、お待ちしておりました!」
ラグナがしゃべったことで、その場にいた皆が驚く。
「それはホワイトウルフの魔物なのか!?」
アステリアが問いかけた。
「ああ、そうだな」
そのタケルの言葉を聞いて聖騎士の警戒度を上げる。普段聖騎士は様々な国で魔獣退治をしているだけに魔獣とは戦うものだと刷り込まれている。そして魔物となれば倒すのが相当やっかいなため思わず、警戒をしてしまった。
その様子を見たセラフィナが穏やかな声で聖騎士たちに向かって言った。
「皆さん、剣を収めてください。このホワイトウルフは敵ではありませんよ」
聖騎士たちはその言葉を聞いてもすぐに剣は収められない。そして判断を仰ぐためにアステリアの方を皆が見る。
「……皆、剣を収めよ」
その言葉を聞いてやっと聖騎士たちは剣を収める。
ヨハネスはアステリアに近づき小さな声で問いかけた。
「アステリア殿、大丈夫なのかね」
「ええ、あの程度であれば私であればどうとでもなります。ただ私が驚いていたのは、あれほどまでに友好的な魔獣や魔物を見たことがないということです。何か魔術や魔道具で操っているわけでもなく、魔物と友好関係を築けるなど信じられません」
「女神アメリア様の使徒様か……」
ヨハネスは仲良さそうにしているタケルとラグナをじっと見つめるのであった。




