・消えた“カーズィ・キルシュ.”・
ファリスは“家”にいた。食事処“薫草亭”で、“ユリシア”と“カーズィ”を待っていた。
× × ×
「ーーーーっ、ファリス!やばいっ!」
“ミーディ・ラバンディン”が飛び込んで来た。何と聞く間も無く、言った。
「“カーズィ”さんがいなくなった!」と。
ユリシアが青褪めた“まま”、硬直した。魔法でも“掛けられた”様に。
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「ミーディさん。落ち着いてよ。で、“説明”して。出来る?」
ファリスは意外に冷静だった。
ミーディ・ラバンディンは、一呼吸置いてから、何とか話し出したのだった。
『カーズィ・キルシュ』は、『洞窟』へと入って行った。勿論“ひとりで”だ。その“後”の話だ。先ず、ファリスは此処へと帰って来た。ファリスが居ても、“出来る事”等“無い”からだ。ならばどうするか。“帰っ”て、“ユリシア”を『まもれ』ば、良い。
はじめから『カーズィ』に頼まれていたのだから。「何か“あったら”頼むな。」と。だからファリスは言い付け通り、帰宅した。ユリシアの元へと。
出来た“弟”だった。
「ーーーーーっ、それでーーーーー、カーズィさんはーーーーー」
ユリシアがやっとの思いで絞り出した声で、そう言った。顔色ならば、真っ青だった。
ミーディも未だ不安そうな顔色であったが、話した。
「だからーーさ。一度はちゃんと“出て来た”んだよ、カーズィさん。なのにさ、ーーーー」
「“消えちゃった”と?」
ファリス・リコルドは、案外“冷静そう”に、そう返したのだった。「……………、ファリス?」
ユリシアは、不安で真っ青な顔色のまま、そう彼の“名”を呼んだのだ。「ファリス……………」
“ねえ?何か知ってるの?”と、ユリシア・レインスィートは、そう聞いてみた。不安なままで。
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「ーーーーーーーーっ、!」
“おっと”とそう言いながら、“カーズィ・キルシュ”は、“其の地”へと、“立った”。“知らない土地”だった。
“気配”は“するな。”ーーーーそう思った。
× × ×
「其処で何してるんだ。“立入禁止”だぞ。」
「!!」
キルシュは、ゆっくりと振り返った。其処には。
“男”がひとり、立っていた。ーーーーーーーーっ、『気配』も『無し』に。
『甘い香り』だけがーーーーした。
× × ×
「“気配”消すなーーよ。“びびる”だろ。」
カーズィ・キルシュは、そう言った。相手は応えた。
「消して無えよ。“誰”だ?おまえ。“コスプレイヤー”って訳じゃあ『無い』んだろ?『坊ーや』。」
“コスプレイヤー”の意味が理解らないカーズィ・キルシュは答えた。“確信”があった。“確認”だった。
「そっちは“陽藍”の『関係者』か?物言いが『そっくり』だな。ーーーー『奴』に。ああ、『名前』ね。『コスプレイヤー』てのは知らんけどな。俺は『カーズィ・キルシュ』って『名前』なんだけどな。『通じて』るか? それでさ。」
“音”が、鳴り出した。“男”は“見覚えのある板”を、持ち出したのだった。そして、
「ーーはい。ああーー、はい。ーーーー。『でしょう』ね。はいはい。『了解』ですよ。」
“板”を耳へ当てて、“そう”言った。そして、
「取り敢えずついて来いよ。」そう言った。
やたらと“色気”を漂わせた、長身の、少し間違うと“華奢”な男だった。が、本当に華奢な訳では無い。靭やかな“猛獣”だった。“首輪”をつけた。色気有る瞳で一瞥されたがカーズィは問い掛けた。
「あんたの“飼い主”は『陽藍』で『いい』のか?『不正解』なら、行かないぜ? “薫り”も『甘ったるい』しな。ーーーー『誘惑』されちまうし。 で?『答え』は?ーーーーーー」
“男”は“呆れ”て、言った。“意味わからない奴だなーーー”ーと。
「ついて“来なく”ても“いい”ぜ。“本日の警備係”に“排除”されちまいな。“さっきの奴”みたいに。」
“猛獣”は、そう言った。顔色も変えずに。カーズィは応えた。“さっきの?”と。
「“その”侵入者だよ。俺が“追ってる”のは。“何処”行った?!」
カーズィ・キルシュは真剣に、そう聞いた。だが、
「だから“その説明”をするから、先ず“ついて来い”よ。“今日”忙しいから暢気に『こんな場所』で話してると、俺だって『殺される』んだよ。来ないなら置いてく。勝手に『彷徨え』。じゃーな。」
男はすたすたと歩き出した。直感で彼を“陽藍の関係者”と判断したカーズィは、その後を追い掛けた。“取り敢えずついてく。他に宛てが無い。ーーーー”そう言ってだ。
“例のあれ”の“破片”と“遭遇”したカーズィ・キルシュは、単独で再び“異なる世界”に“降り立って”しまったらしい。しかも“或の神”様、つまり自分の“師匠”の『星』に。
『ははは』と力無く笑った“カーズィ・キルシュ”だった。不思議なのは『追跡』して来た『匂い』が、『消えてしまった』のだ。“隠れた”にしては“可笑しい”程に。ーーーー
“まさか”ーーーーな。流石に“彼”は、そう思った。“消える訳はーーーー”と。
見付けたのだ。ダンジョンの“奥”影に。“生き延びた原種の或の花”ーーーー“ムーン・シャドウ”の『蕾』を。奇跡だと思った。“鑑定”までしたーーーー奇跡の“生き残り”だった。
溢れた“種”が“無事”で、『土』に隠れてたすかったのだ。
其れが“今回陽藍が持って来たもの達”に紛れて、“魔力”を注がれ、促されて、ーーーー。無事に育ち、“或の場所”に“在った”ーーーーのだった。
だが『例のあれ』の『影響』が残っていたのだ。『破片』の様に。
植物を育てる為に注がれた『魔力』を、横取りして『成長』した様だ。『例のあれ』は。じわじわと。
それに、カーズィが気付いて“調べに”入ったのだが、花を“駄目”にせぬ様にと気配りし過ぎて、ーーーー結果『逃げられ』た。『洞窟』の外へと。
外に未だ“ノミニオ”達が、数人“残って”いたのだった。それでカーズィは流石に焦った。
“彼等”に被害を出さない方法は、あの時“彼”には“ひとつ”しか無かった。
「『“結界”』で酒野郎毎、包んで、ーーーー」
「え゛それであの“調合師”にいちゃん、“此処”迄来ちゃったの?」
“華月 陽藍”が、一緒に居た“息子”の紺へと説明すると、息子の紺の方は、そう父へと返したのだった。陽藍と紺は、カーズィが“降り立った”場所からは、やや離れた“場所”に居た時の事で在ったのだ。
勿論“紺”は“気付い”て、父へと“何か来た”と告げた。父はそれに“来たな”とだけ答えて、此のふたりは“此の場所”からは、ーーーー。動かなかった。先に起きた“騒動”の、後処理中〜だったのだ。
“携帯電話”で、“部下”『瑞穂 翔平』へと、“指示”だけ“出し”た。翔平は『でしょうね』ーーーーと、答えていた。
❂ ❂ ❂
「ーーーーは?! “結界”で閉じ込めて“自分毎”『宇宙空間』まで、放り出したーーーーっ、だと!? 何してんだ!其れ! 死んじまう“やつ”だろが!」
“瑞穂 翔平”は、そう叫んだ。“カーズィ・キルシュ”へと。キルシュは応えた。“嫌?”ーーーーと。
「“結界”は“空間”だから『可能』だよ。『空間内』を『空気』で満たせば“いい”訳だろ? 楽勝だろ。ま、『彼奴だけ』放り出す方は、結果『失敗した』訳だけどな?」と。
しかし参ったなーーーーと彼は又ひとり言った。
「折角“依存された種”だけは“回収”するつもりーーが。まさかーーーー又『消滅』させられちまったーーーーとは。」と。
「ま、『巧く且つ迅速に、』剥がせなかったーーーー『俺』の落ち度か。っ、たくっ。本気で参った。出直しだな。ーーーー」
そう言った“ところ”で、“知っている声”が、して“来た”訳だ。
「ところが“調合師”君。“そうでも”なさそう『なんだ』よね。」と。
「やっ、“よく”来れたね。“迷子”に“なる”んだよ、“普通”ーー“鼻”が“僕並み”なの?」
「おっ、“居た”。ん?何『そうでも』“ない”って。後“鼻”なら、“人間並”だ。あ、“邪魔してる”ぜ。因みに“途中”で“逸れ”はしたが、“バーシル”が“案内”してくれたぜ?
ま、“無茶しやがって!呼べよ!”って、怒られたけどな。彼奴は“無事”か“分かる”か?」
“カーズィ・キルシュ”は、そう問い掛けて、横に居た“翔平”に呆れられたのだった。“こいつーーーー、無茶苦茶だなーーーー”と。
カーズィ・キルシュは確かに“消え”た。“或の星から”はーーーーだが。消えた“彼”は、“此処”に在る。
「此処が“マサル”の故郷な訳ね。『成る程』ね。」
“来れて良かったよ”と。




