✕〜〘閑話〙〜〖カーズィ・キルシュ.〗✕
〚冷たい水の中なのだと理解った。然し何故なのか違和感等は無く心地すら良い。肺一杯に吸った空気の有難みを感じながら、手に抱えた“素材”をばら撒いた。其れは自然と、役割りを知っていたのでは無いのかと思う様な優美さで水の中を進み行ったのだった。いいや、“役割”ならばやはり知って在たのだろうーー其の“意思”を、ーー与えたのだから。意思は放たれた“魔力”を纏いて彼等を役割へと誘ったのだ。時折、魔力の溶けた其の水の気泡が、運ぶ素材の流れとの狭間で生まれてはあがり、又水は流れを持つーーーー。そして又役割りを持つ次の素材達が、“水”という“空間”の中へと、放たれ行った。次々と。意思を持たせた“其れ”達は、“此処”を“住処”と認識したのだ。“水”と“魔力”と“彼等”が言った。素材はふつふつとしゃべるーー。意外と皆、おしゃべりだ。声が聴こえる。。。素材と呼ぶ“植物”達は皆、おしゃべりで。調合師に語り掛けて来る。“今が食べ時”、“未だ早い”、“もう熟れ過ぎた”、“僕を其の薬草と混ぜないで”。ーーーー“私は単独で美味しい”。“彼と一緒に成りたい”。ーーーーーーと。
薬草達はーー賑やかだ。薬草の纏いし魔力は饒舌に語り掛けて来る。いつもの様に。こんな時でも。だから。ーーーー。聴こえぬ訳は無い。だってそうだろう?聴こえぬと言うのならば問いたい。“何の為の魔力在りき存在なのか”ーーと。魔力纏いし素材の声も聴こえぬのならば調合師等も。冒険者等も。皆職を改めたら良いのだ。“触るな”。“彼等”は言う。“分かり合えぬのならば”と。“彼等”は繊細だ。手荒なまねは好まぬ彼等。愛を好み。勿論慈しまれたく。ならば愛くしんだら良いのだ。何故なら彼等は愛しい。
“愛されれば”良い。“相思相愛”の様に。相思相愛の様で。与えるだけでは足りぬから。与えられるだけでは足りぬから。救けて救けられて、それも出来ぬという者ならば、触れねば良いのだと彼等は答えた。“尊い”存在。
“自分達”は、“生かされて”在るのだとーーーー知れれば良い。知らぬのか?。“糧”を“知らぬ”者は存在するのかーー?ならば何故“生きる”のだ?出来ぬなら。“知らぬ”なら、気付かぬなら。ーーーー
知ろうとせぬならーーーーーー
滅ぶ“べき”だ。【そう】だろう?
“花に”聴け。木に、幹に、草に、種に。全てに問いたら良い。答えは“同じ”なのだ。“僕等”とは“彼等”の恩恵に、
“生かされて”存在るーーーーモノなのだ。
気高い“緋色梨”も放たれた此の冷たい水の何処かの居場所でこう言った。“美味しい酒になる”と。
紫至宝も張り切った。“寝かせて置いてくれ”と。良い酒になるのだーーと。
彼方此方で、果実達囁いた。“僕達は酒になる”からと。ーーーー頼もしい唄声が響いた水中だった。色鮮やかな果実領域が一層鮮やかに水と溶けてから賑わい唄ったのだ。“ああーーーー決めた”よーーと。
勝ち誇った様にもそう唄った。
ーーーーーーー
そして。
水に放り出された野菜軍達も。実でも在り又“種”でも在り又は“苗”でも在った彼等だが。ーーーー。南瓜が水の中を踊る。ーーーー。スイートポテトも負けずに騒ぎ踊り泳ぐ。ーーーー。赤ベリーは緑の葉と苗と蔦のパレードを絡み合ってみせた。
緑、黄色、赤ーー紫ーー橙ーー、多種多様な野菜達。“水を得た魚”の如くーーーー。自分達の“居場所”を見付けて見出しては、ーーーー揺らいで巡った。
“此処は僕達の住処だ”と“主張”した。きっと、ーーーー遠く無い“未来”に力強く“実る”ーーーー未来が“みえ”た。
“失われた”全ての植物達の代わりにと彼等は“此の星”を“住処”と決めた。
認めたーーーーーーのだ。“星”と“住まいし人々”を。“此の水”を。〗
〖“喧嘩”する事の無い、“此の水”の“中”ーー
《神が創りし奇跡生る水》の“中”でーー。そう、“全て”の“植物”達は、“カーズィ・キルシュ”へ、告げた。彼に“だけ”聴こえたーーーーー
〘事実〙。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー此の、ーー秘密の“情事”〛
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「ーーーーーーーーーッ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ーーーーーっ、はぁッ、ーーーーーーーーーっ、はぁっ、つ!」
水音と水飛沫の中から、〖カーズィ・キルシュ〗は、出て来たのだった。荒い息と共に。
限界迄吐き出した空気のお陰で、集めた“全て”の“宝物”達は、放てた。
無事に“生命の源の水の中”へと。“融合”出来た。
……………………イメージ通りだった。
此の星の、しがない只の調合師はそう思ったのだ。ーーーーそして、
待って居た“彼等”へと答えた。「成功だ」よーーーーと。此の地上にて。
地下から上がって『来た』ずぶ濡れのままの調合師に、不安で待ち構えた面々は、ようやく安堵と歓喜した。労いと共に。
もう冷え始めていた空気が未だ興奮の中の調合師の頬を撫でて流れて行ったーーーー目を綴じた彼は其れに吹かれて思った。“幸せ”だと。
濡れた服が彼の四肢に張り付いてみせた。乾かしもせずにただ吹く風に吹かれた。ひやりとした冷たさの中で、ほんの少しの違和感だけを残した彼は、心配したユリシアにタオルで拭かれたのだった。“風邪を引きますから!”と。何故だかーーーー。彼は其れに無抵抗に、ふわりと笑っただけだった。珍しくも。彼は何も言わずにーーーー。何もしなかった。ただ、笑顔なだけで。
戸惑ったユリシアが滴り続ける伝う水を懸命に拭いていた。ーーーーいつまでも。そして、
“全て”終わったかの様にカーズィ・キルシュは“その晩”だけーーーー。寝込んだのだった。高熱を出した。然し当人は何処吹く風の様で。治療を拒み、寧ろ拒絶してみせた。“明日には直る”と。ユリシアさえ遠避けて独りで労いも施しも遠避けた。
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「よお、お疲れ様。“調合師”君」
寝込んだ“宿屋”の一室だった。“彼”だった。カーズィ・キルシュは答えた。声に為らない声だった。然し“通じた”様だ。互いににやりと、悪い笑みを浮かべたのだから。
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「“手遅れ”?」 「ああーーーー」“そうだな”ーーーー華月 陽藍は、そう言った。
〘間話〙〜〖カーズィ・キルシュ.〗〜end.
第二部、一章完☆です。二部、第二章の前に、カーズィさんの〖水の中〗の作業の様子を閑話にしてみました。普通は本篇に入れる気もするのですが、考えてみて、本篇のシーンでは無いーーーー必要無いシーンだなと、思いまして。閑話の表題に、初めて無茶苦茶悩みました(笑)
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