×閑話× *佐木夫婦の緩やかな調査隊*〜旦那が無口です。〜
「直夏? ずっと黙ってるけど、何で?」
此の辺りには龍の降らせた雨は、未だ届かぬ様で、地面は未だ渇いていた。佐木 友理奈と夫の直夏は、兄陸に言われ、やはり兄の卓から頼まれた『隠れた』洞窟の入口捜しを再開していた。渇いた地面はやや埃っぽさを感じた。それで直夏は黙っているのかと思ったのだが、どうも違うらしい。それで友理奈はそう聞いたのだが。しかし返答は意外だった。『ダンジョンの気配を探っているーー』と。
友理奈は一応の反省をみせたーー時だった。懐かしい『声』にふたり振り返ったのは。
* * *
「やあふたり共、元気だったかい?」と。金髪の美男子、美青年だった。目を見張ったふたりは時を同じくして言ったのだ。叫ぶ様に。
「「アレフゥロード」様?!」と。言われた男は嬉しそうに笑った。眩しい笑顔が際立ったのだった。美の縁で。
高貴な気を纏いし美青年は、名をアレフゥロード・ガイサースというが、佐木夫婦と同じく此の星ーー酒星の者では無かったのだ。佐木夫婦住まう、名前の無い星の者でも無くーー彼は『白神』管理する、と或る星ーーの、住人だった。其の星の『ガイサース』という名の国の王である。小国ではあるが。して、何故其の小国ではあれ、他の星の一国の主が、此の様な場所にいるのだろうかーー疑問だらけではあるが、何の事は無い。頼まれたからで在った。
「驚いたかい? 陽藍様に、頼まれたのでね。ふたりを手伝いに来たのだ。宜しく頼むよ、直夏、友理奈も。」
彼はそう言った。
* *
「ーー嬉しいが、アレフゥロード。自分の『国』は良いのか?」
大丈夫なのかと佐木 直夏は心配でそう問い掛けたが、アレフゥロードは余裕だった。『弟がいる』と。ーー確かにアレフゥロードには弟殿下がふたりいるのだが。次兄カビダード殿下、そして王弟レザード・ガイサース。此のレザードが佐木夫婦、彼等には最も関わり合いが深い王子ーーというか『第三王位継承者』ーーなのだが。直夏にしろ、友理奈にしろ、だからこそつい、『頼むならレザードではなく?』ーーと、やはり思ってしまったのだった。
何しろアレフゥロードは既に『王』の立場だ。気軽なレザードと違い、ーー他の星に等『来て』いても良いのだろうかーーと。心配してしまった訳だ。更に言うなら、良くレザードも『ついて』来なかったものだなーーと。レザード・ガイサースは、此の星ではアウト・ワーカーと呼ぶ、それと似た仕事をするーーあの星での『冒険者』なのだ。故に適任な気もするし、何より直夏はレザードに『懐かれ』ているという自負もある。更に言うならば、レザードは以前友理奈に『気』があった。今でも嫌いではない筈だ。色々あり、彼も今は結婚したのだが。ーー初恋の女性と。
そんな直夏の思考を読み取ったのか否か、アレフゥロードは言ったのだ。はははと笑い、
「大丈夫だ直夏。国ならばカビダードがいるからな。私の弟は優秀だぞ。」ーーと。
× ×
王弟、次兄カビダード・ガイサース。直夏達とは余り縁深く無い人物だった。以前、少し話をさせてもらった位だ。優秀なのも良い人なのも分かったが。そういう問題なのだろうか?と直夏は思ったのだった。アレフゥロードの参戦は、正直とても助かるのだが。ーー甘えて良いのかと。佐木 直夏は、真面目だったのだ。楽して良いのか戸惑うのだ。ーーーー
* *
「ーーところで直夏、友理奈、『其処』に入口が『在る』のに、何故入らないんだ?」
しかしアレフゥロードはそう言ったのだった。其れはまるで『土竜穴』の様で……直夏は其れが入口なのかどうかを先程から悩んで、其の神経を集中させていたのだった。何故なら、ーーこんな小さな穴では出入り出来る魔物の種類等ーーそう多くも無く。気配がーー弱い。つまり大した『敵』がーーいない。敵が居なければ直夏に『察知』は無理に近かった。だからだった。故に今回、
その弱点「克服」して来いーーそう言われ来たのだったが。正直、
ーーー出来ないものは出来ないので在る。ーーそう、急には出来ない。出来る訳がーー無い。無茶だか人手不足もあり、『やれ』と言われた。負けず嫌いの直夏は嫌でも無く請け負ったーーのだが。………………未だ未だだなーーと彼は思ったのだった。だがーー、
「や、アレフゥロード様。だって此の穴『無理矢理』拡げたら、……………崩れちゃいますよね?其れは不味いかなと思いまして。…………………それで悩んでました。どうやって『入ろう』かなって。」
横の妻友理奈はそう言ったのだった。ーーーー気付いてた訳?友理はーーーー?直夏は妻を侮っていた様だ。反省と驚きで妻を眺め過ぎる前に、アレフゥロードが言った。『大丈夫だよ』と。
「その為に私が来たのだよ、ふたり共。」
笑顔の国王様はふたりと立ち位置を代わったのだった。
* * *
「流石アレフゥロード様。ベテランの貫禄。流石私の『お師匠』さま。ね、直夏?」
友理奈は言った。『洞穴』内部にて。成る程ーーアレフゥロードが『入口』を作ってくれると、中は何とーー広かった訳だ。隠しーーダンジョンとは。隠したのではなくーー隠れてしまった『洞窟的洞穴』の事だった。永く人も獣も入る事無く、入口が閉じかけた『忘れられし』空間だった。
苔や茸やら、陽の光届かぬ方が好都合のもの達の『住処』ーーとなったそれ等は、やはり、ーーーー
『酷いな』とアレフゥロードが言った。やはりーー植物その他、皆被害を受けていた。酒の神だったモノのーーなれ果てからの。空間が『干乾びて』在た。ーーーーまるで、『洞窟』の木乃伊だった。渇いた、乾いた空間の土壁はーー鱗か何かの様に剥がれて落ちて来そうだった。亀裂は、其れに見えた。
アレフゥロードは辺りを見回した。気を集中するーー彼は思った。枯れた『空間』に『毒素』は無いーーと。研ぎ澄ました神経ーーつまり彼の魔力は彼本人へと其れを告げた。
「アレフゥロード様。どう処置しますか?」ーー友理奈はそう彼に問い掛けた。佐木 友理奈は自惚れたりしない。自分よりも経験豊富な、魔力にも長けたアレフゥロードに任せようと思った。
友理奈はアレフゥロードに『魔法と呼ばれる魔力の使い方』を習ったーーつまりレクチャーを受けたのだ。故に冗談でも事魔法に関しては彼を師と敬意し、又評したのだ。友理奈の初めての『師匠』は間違い無くアレフゥロード・ガイサースーー彼で在る。友理奈はそう思っている。
アレフゥロードは穏やかな表情で、緊迫とは無縁の笑みでこう言った。ではと。『手本を見せよう』ーーと。
アレフゥロードの『力在る言葉』は発動した。霧だった。ミストの力で潤いをーーーー何故、ーー気付かないーー私。
がっくりと肩を落とした妻を、夫なる佐木 直夏は、ぽんぽんと其の肩を叩いて、言葉も無しになぐさめたのだった。ーーーー直夏流で在る。
下手に何か言うとーー余計落ち込むーーだからだ。夫は彼女を把握していた。把握せずとも此の旦那はいつも此の位、無口だったが。何故ならば直夏とは世辞は言わない。言葉は包まない。だが、妻を傷付けたくは無い。ならば、方法とはーー『閉ざす』此れしかーー無い。だろう。
決して言わない。言ってはいけない。ーー『潤いミスト?ーー女子の常識だよね』ーー等というーー女子力不足の話等はーー
言うべきではーー無い。言ってはいけない言葉なのだ。妻、佐木 友理奈は必要以上に『女子力不足』をーー気に病むから体質(?)だからだ。
『気にしなくてもーー友理奈は綺麗だよ』ーーとは言えない旦那、其れが佐木 直夏なので在った。無口と言うより其れは照れ故の俗称へたれで在ろうが。
「私の妻、メルリアリノだけれどね、こうやってーー部屋の『湿度』を調えてあげると、『潤う』ーーと言って喜ぶのだよ。友理奈は未だ若いーー必要無かったね。でも覚えておくと良いね。ーーん?どうした? ふたり共?ーーーー」
言われたふたりの様子がーーどうだったかはーー言うまでもーー無く。
強いて言うならば、アレフゥロード・ガイサース様のそれは、いつもと変わらず穏やかなもの言いだった。〜優雅なまでに。
気を取り直せたかどうか、彼等は先に進むのであった。先は未だ長かった。〜今は未だ。
御来場有難う御座ます。〜さて、陸君は今何をしているのか〜そんな二部は今暫くお待ちください〜m(_ _)m此方、第一部『完』につき〜暫く更新お休み予定です。




