・調合師、…………出番?・
「ーー混ぜるつーか『入れち』まうかーー。」
腕組みをした華月 陽藍は元神呑んだくれ野郎と化したそれを見ながら、そう言った。まるで、見下すかの様に。彼の頭上から。
「??ーーーーーあ?」
言われたのが自分なのだと漸くか気が付いた呑んだくれは、不思議そうにそう言った。
橋本 和希に押さえられたままで。
華月 陽藍は答えるでもなく、言葉を続けた。
『紺のようになーー』と。言われた狐はきょとんと父を見た。兄の腕の中で。
× × ×
「はあ?『入れ替え』るから『手伝え』?!?」
そう言ったのは、俺だった。薫草亭の前に、カーズィ・キルシュの声はそうして響いたのだった。ーーーー
華月 陽藍が言うには。此の『呑んだくれ』を『他の奴の身体』にーーぶち込むらしい。何の為に? 『制御』の為だ。後『入れられる』方の奴の『罰』でもあるとかでな。
その人間はやっちゃならん事をしでかしたらしい。何故だか陽藍はちらりとユリシアを見たのだった。俺が気に成る程の視線でな。
さておき。
『俺』に『それ』を『手伝え』ーーとは。「調合師の腕の魅せ処だろ?」ーーと。
そんなもんで腕はみせたかねーよ。珍獣か。俺も『そいつ等』も。ーー何なんだよ。
俺の反対を他所に準備は始まったのだった。××××××××××××
そして。
数分と待たずに『そいつ等』はーー来た。ひとつの肉体に、ふたつの『魂』が入っているというーー謂わば『珍獣』ーーの、そいつ『等』は。
神様だという女に連れられて。ーーーー色っぽいねーさんだな。……………………………本当に神様か?おい? 艶っぽいぞ?ーーやたらと。
昔付き合った『踊子』を連想させた。ーー嫌な気分だ。
「お待たせしました。陽藍さま。」
女が言ったーー
「おつかれ、ネグローニ。」
華月 陽藍は答えた。ネグローニというらしき女ーー神は、にこりとほほ笑んだ。嬉しそうに。
『あら「これ」が「労働力」』ーーとか何とか言いながら、うふふと笑ったのだった。
背筋に寒気為るモノを覚えたのは、決して俺だけでは無かった筈だ。ーー怖かったよ。流石『神』だな。寒気半端無いわ。特にマミアーノ達も、震えてた。
× × ×
陽藍からされた説明はこうだった。連れて来られた男は『アスタ・バーシル』と名乗る者だった。此の名を聞いた時ユリシアはびくりと脅えを見せた。理由は、
アスタ・バーシルとはユリシアを『追い詰めた』冒険者だったのだ。正確には、
『アスタ・バーシル』自体は、『それ』では無く、『外身』が。ーーわかり辛いか。
カラミの街で暮らしていたユリシア。茶屋に来た冒険者。それが『アスタ・バーシル』の外身、『肉体』だった。一応『中身』も入っては居るらしいーーが。『元神様』と一緒にだ。
その入れられた元『神様』の仮りの名が、『アスタ・バーシル』ーーだとかで。何の事は無い本人がそう『名乗った』ので、そのままそう呼んでいるらしい。『バーシル』と。アナグラムらしいぞ。
ヒントは『銀の髪のと或る星の神』ーーと言われた。理解らんが何でもいい。俺には関係無いからな。
因みに冒険者の方だが、元神と『契約』を交した際に、自分の名前は『失くした』らしい。故に『思い出せない』と。流石にその辺は『神』の所業ーー褒められはしないが変な力を加えると、ヤバイ事に『成る』らしいので、そのままらしい。ーー可哀想に。自業自得なので救われないとかで。
ユリシア苛めるからだろうが。反省しろや。ーーいかん。ーー取り乱したな。
それで。
今から『何』をするのか。
お気付きの通り『分ける』んだよ。『アスタ・バーシル』と『アウト・ワーカー』を。
正確に言うならアウトワーカー野郎から、アスタ・バーシル為る元神さま野郎を『抜く』。
抜いて其処に『酔っ払い』を、ぶち込む。アスタ・バーシル為る『元神』が、『肉体』に『拘束』され、自由を失った様に、酔っ払い酒神にも『ソレ』を実行するーーと。
言う事らしい。そして『他の星』へ連れて行って『働かせる』と。
何でもアスタ・バーシルとやらは神様時代に自分の星の運営に失敗して『崩壊』させちまったらしいぞ。原形は残ってるがーー生物が絶滅しちまったとか。……………………………こわい話だな、おい。
現在神々が『再生』を手伝ってるそうだ。紺の兄神とかもな。主に『陸』の『手下』が中心になり、再建していると。そもそも陸の手下達は、『再建』の為に『雇われ』た、行き場の無い『神』達だったとかで。
今此の星を管理している熱女神『ヒートヴァームス』や、今来た『ネグローニ』とか、数名居るらしい。正しくは『眷属』。上司と部下の関係らしい。基本陸の言う事なら何でも聞くが、何方かというと現実にはほぼ『逆』だとか。
『もっと構って』とか『会いに来て』とか『褒めて』とか『愛人にして』とか『抱き締めて』とか『好き!』とか、無茶ばかり言われているらしいーー陸は。
『本当面倒くさい』ーーと語っていた。………………………………………今もだ。陸に絡まり邪険にされていた。『邪魔』と。
『仕事しなよ』と。
「いい加減にしないと『ご褒美』あげないよ、二人共。」
両腕に負けじと絡むネグローニとヒートヴァームスに陸がそう言ったのだった。観ていたマミアーノとリィンツィオがーーーーーーー嫌、言うまい。
「ーー何事だよーー」
呆然としたアスタ・バーシル為る『者』はーーそして言ったのだった。多分こいつ何も聞いて無く連れて来られたんだろーな。と、俺はそう思った。
嫌だって。デカい『ピッケル』みたいな道具、握らされていたのだからーーーーーー何やってたんだ?それで?山登りか?
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結果だけ言うと山登りでは無かった。『湖掘り』だった。
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かつてのそいつの星にはとても美しい『湖』がーー存在したらしく、『再建しろ』ーーと言われ『掘って』いたらしい。
人の身体ではきつい『作業』だったらしいが。ーーだよな。
ポンタ神虐めた奴等も『やらされて』居たらしいからーーまあ、幾分か楽だったらしいが。『神に戻れたらもっと楽だ』ーーと、そいつは言ったのだった。そして、
「だから『戻して』やるよ。」
と、華月 陽藍は言ったのだった。ぽかんとしたアスタ・バーシルはその後から歓喜した。
「?!ーっ、本当か!?」と。華月 陽藍はにやりと頷いた。
俺は、ーー何となくふっと『優』をーー見た。何故か。ーーそれは、思ったからだ。
『記憶』、『名前』を失くした『話』だ。ーーーー似てないか?『優』の『状況』と?
答えが出る前に、話が纏り俺の『出番』と為った。調合師の。
軽い調子で嫌がり暴れる『酔っ払い』元神を、橋本 和希は華月 陽藍に手渡した。襟首を掴まれた酔っ払いは、暴れ切れずに難無く押さえる『主』が、代わったのだった。そして陽藍は『荷物』の様に俺に『ソレ』を持って来た。途中、イチゴなるあの青年が、陽藍に『手伝いますか?』と問うたが、陽藍はそれを制した。
アスタ・バーシルが言った。俺を見て。
「ーーなあ?なんで『態々』その男にやらせるんだ?」と。
「フェアリーヴァース、あんた本人がやった方が『早い』だろ?」と。必要か?と聞いたのだった。
フェアリー・ヴァース陽藍は面白そうに笑ったのだ。酒神の冷汗を余所に。
俺は『仕事』を『始める』事にした。久々の大仕事に『腕』が鳴った。俺の魔力が、俺自身を纏い囲んだ。『媒体』と為るべく。楽しく為り笑みが溢れた俺は、恐らく不敵な笑顔で言った筈だ。
大丈夫だと。酒神に。「痛くしねーよ。」と。大人しく『していろ』と。目を剥いた酒神は、それで初めて『俺』を『みた』のだった。




