・やり過ぎ青君と『制裁』者・
「ちょっと行って来るね」と、彼は言ったのだった。
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「っ、ーーーーっはっ」
呼吸を忘れていたらしい俺は、それを思い出した。息を飲むとは、正しくこの事なのだろう。目の前の光景は既に残虐惨劇だった。
とても異質な。
「ーー青兄ちゃん。……………………他のやり方あるよね。…………………」
最早巧は正しく呆れて物が言えなかった。兄は『無い』と答えたのだから。
青のお陰で『残りかす』の『分解ショー』は、続いたのだった。何より匂いが酷かった。酒臭いーーそして薬草臭かった。薬草を酒に漬けて効能を高める代物も聴くが、此れは全くの別物だ。単に臭い。異臭という奴で在る。通常なら鼻が麻痺する。が、今は結界があった。陸が張ったのだ。彼ーーノミニオへと。ノミニオは今『陸』に護られていた。故に『転送』にも耐えれたし、今此の場に在れる。普通ならば、絶命する『異臭』という名の『毒素』の『中』だった。
先程からずっと、『残りカス』の悲鳴ともいうべき『声』がーー鳴り止まなかった。聞くも耐え難い程に。まるで拷問であるーー嫌『拷問』なのであろうーーノミニオは心が挫けそうだった。
酷過ぎる。えげつないのだ。ぐちゃぐちゃに為ったかと思うとーー又『形成』されてーー又『青い靄』が取り囲んでーー『黒い靄』はーー崩れ行く。苦しみながら。それを幾度と無く、飽きずに繰り返した。青はニヤニヤと傍らで眺めていた。腕組み等しながらだ。
時折巧が、苦言するが、青はニヤつくだけで、聞かない。その都度『悲鳴』が音量を増やした。それが聴くに耐えなかった。ノミニオがげんなりした頃だった。×××××××××××
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「っ、此の『馬鹿』っ」
と、言うーー『美声』がーー鳴り響いたのは。場違いな位に美しい声色は、まさかの陸だった。ノミニオはきょとんとしてしまった。『夢かな?』と。
陸はその腕に子供をふたり抱いていたのだった。とても可愛い『子供』を。
× × ×
「げっ陸兄。」
青は言ったのだった。ーーーーーーーー
× ー × ー ×
「全くお前は馬鹿だよな。仕事も任せられないよ」
陸は溜息を吐いた。その吐息すら美しいとノミニオは感じた。本当に場違いな位美しい男だと。
「理桜?真琴? いい?馬鹿な『おじさん』の『真似』しちゃいけないよ?」
美しい男は連れた子供にそう言った。こくんと頷いた無垢な存在が眩しかった。かわえぇな〜おい。何者?その子達??心が洗われた。
と、陸は青を睨んだまま、子供達を降ろした。ゆっくりと地面に降り立った子供達は天使かと思ったが、どうも『男の子』と『女の子』の様だった。ふたりとも女の子かと思ったのだが、違ったらしい。しかしーー可愛い。きょとんとしているが。陸にしっかりと掴まっていた。
「真琴、理桜、じゃあ『はじめよう』か。」
華月 陸はふたりの子供にそう、やさしくほほ笑んだ。
× × ×
子供は陸を見てから、共にこくんと頷いた。そして陸が言った。『青、邪魔するな。』ーーと。
青が渋そうな顔をした。言葉に詰まりながらだ。再び子供達に目をやると、いつの間にか手に『グラス』を持っていたのだ。俺は目が点になった。『は?』ーーと。
子供達は呆気に取られた俺を他所に、いつの間にか『残りカス』為る『黒靄』の前に、立っていた。慌てる俺。『危険だ』ーーと、言う間は無かった。
「此の『コップ』の中身は、『薬』と『毒』です。」
女の子が言った。
「おじしゃん、『どっち』を『選び』ましゅか?」
男の子は、どうやら未だ、舌足らずの様だった。しかし、『しっかり』していた。
すると、不思議としか言いようが無いが、『黒靄』がーー晴れたのだ。中から『人間』がーー出て来た。ーーーー傷だらけで。
「こっち、『傷』直す、やつゅ。」
女の子が言った。
「んと、『こっち』、心『治』しゅ、の。ーー」
男の子が言った。そして、
「「どっち??」」
ーーと、ふたりの子供は『聞いた』のだった。
× ー × ー ×
黒靄の『人間』は無言で。震える手をーー前に突き出した。そして、
× × ×
片方のグラスを掴んだそいつは、中身を一気に飲み干したのだった。そして、
× × ×
そいつは居なくなった。其処から。辺りには『花の様な』清々しい空気がーー『残った』。辛くかーー幸いーーなのか。
不思議そうに、ふたりの子供は『陸』を見上げた。グラスを握ったままで。陸の表情はノミニオには哀しそうに思えたのだが、それは一瞬だった。そして、ーー残った『グラス』の中身もーー無くなったのだ。おそらく陸の仕業だーーと。弟、巧はーーそう思った。
ノミニオは、何も分からなかった。恐らく全てが。
× × ×
「お疲れさま、理桜、ーー真琴。」
陸は優しくほほ笑んで、子供達からグラスを受け取って、消した。そしてノミニオを見た。ぎくりとするノミニオ。理由は解らなかった。
「ノミニオ、ありがとう。『お疲れ様』。無茶させたね?」
陸の声は優しかった。しかし、何故だかノミニオは『威圧』を感じた。理由を知るよりも、子供達が、早かった。
「「おちゅかれさま〜?」ちゃま?」
ふたり、可愛く言ったのだった。ーーノミニオはーー癒され和んでしまった。そして知った。ふたりの子供達の事をだ。ーー陸が笑顔で言ったのだ。『僕の子供達。』だと。
此の子供達の顔立ちが綺麗過ぎる『理由』をーー知ったのだった。
距離を置いたのは、青だけだった。和みの場から。巧は気付いて呆れた視線を向けた。そして陸に謝った。陸はそれを制した。そして、
「『青』、」ーーーーーーと呼んだ声が、ノミニオに『威圧』の正体を知らしめた。
やはり陸は恐かった。気のせいでは無かった。
× × ×
陸は青に散々に説教を始めた。此の役立たずに始まり『何度目だ?』と。
『毎回なの?』と俺は思った。ーーーーーーーーーーーーーー
巧は渋い顔で呆れるしかなかったのだ。ぼそりと口にした声をノミニオは聴いた。『海に見せられ無いーー』と。溜息は盛大だった。
暫しして、『青』が、口を開いた。
「僕の『やり方』は『ああ』なの。仕方無いじゃん?僕の『性質』なんだからさ。」
「それとも。『陸兄』と『僕の役割』ーー入れ替える?」
青は勝ち誇った位の、『真顔』だった。不気味な、位に。
俺は思った。恐らくだが、此の『青と言う男』はーー『悪』ーーだと。俺の中の本能がーーそう言った。
『先行偵察師』ーー成る俺の『直感』が。警告した。危険だと。
視線で横の巧に助けを求めたがーー彼は気付かず振り返らなかった。『兄』を見たままで。
そして真顔の『陸』サンが言ったのだ。馬鹿を言うなーーと。
「お前に『力』なんかーー授けたら『何人』殺すかーー分かったものじゃ無い。」
そんなおそろしい事は出来ないとーー陸サンは言ったのだった。俺の気持ちを知ってか知らぬか。
呆れたらしい陸サンが、『ーーそろそろ上にいこうーー』と言った時に、俺はようやく気が付いた。声も出ぬ程に恐怖に駆られていた事に。
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「ーーーーってえ、なんで寛いでる!?!」
やっとで『帰還』した俺達は、余りの『光景』にーーそう叫ぶしか無かった。
「よう、『遅かった』な。」
そう言った『暢気』なーー依頼主はーー在ろう事か『カードゲーム』をーー興じてやがった。し・か・も・だ。
「………………………。ガディン。……………………………負けたのか?」
店の常連『ガディン』が、負けて突っ伏していた。テーブルにだが。ガディンはカードゲーム『負け無し』のーー筈だが?
返事は『イエス』だった。
「カーズィさん。お疲れさま。『何か』食べます?」
そう聞いた友理奈は待ちくたびれたらしく、頬杖をついて、つまらなそうだった。理由は依頼主が語った。
「『俺』の娘、証拠にも無く『口説く』と、こう為るんだよ。ーー理解ったな?『坊や』。」
俺の依頼主は『目』が笑っていなかった。×××××××××××××××××
「さて。『お遊び』は終わりだな。」
華月 陽藍は言ったのだった。不敵な笑顔は美しかった。造られたーー美の様で。目を奪われ、惹き付けられーー縫い止められたのだ。
辛くも誰しもが。全て忘れてしまう程に。




