・ケースバイ『ノミニオ』・
「あ、」
「なんだ?ーー巧? どうした?」
直夏の問いに、巧は何でもないと答えた。
「青兄ちゃんだなって。」思っただけだと。
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「ーーは?」
直夏は言った。渋い顔をしてだ。巧は表情を変えなかった。そして、
「え?感じない直兄? 青兄ちゃん来たよ」と、言ったのだ。直夏は面食らうばかりだった。
辛うじて、
「ーーどの辺に?」と聞いたのだが、
不思議そうな顔の巧が言った。
「地下?」と。
彼の視線と指先は下を目指した。
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「は?地下に行く?!」
俺は巧に抗議したのだった。巧が離脱すると言うのだ。なつめと理とやらは、不安そうに見ていた。自分達を。リィンツィオとリッツもだ。そしてユリシアも。
巧が言うには。
彼には『青』という名の兄がいた。そして今、巧は兄の気配を此の星にて感じていた。それも地下で。
此の洞穴だが、下に行く道は、無い。分かれ道は有るが、上や下に行く『通路』は無いのだ。
行く先は、ただ『奥』に行くだけ。時折『部屋』の様な『空洞』が在って、植物の群そう地になっている。薬草もあれば、他の植物も在る。木の実が生る木が生えている場合も在る。香辛料とかな。余り無節操には生えてはいない。空洞の部屋ごとに、特性、特徴がある。空洞には略『必ず』、『光』が指す『穴』がある。天にあいているのだ。飛び降りる馬鹿はいない。下の植物を台無しにするからだ。道具を使って降りるのも不可だ。穴の周辺は崩れ易く危険だからだ。下手すれば、植物が瓦礫と共に埋まる。例えやった奴は助かろうとも、罪に問われるので皆やらない。洞穴、洞窟周辺は『危険マップ』にマーキングされている。一般市民にもそれは知られているから、幼子でも知っている。そもそも幼子は『こんな場所』まで来ないがな。
そういった理由で植物採取には『入口』から皆入る。ただし、『許可証』が要る。『剤薬師』、『調合剤薬師』、『調合師』、『業者』、などなど。『冒険者』もだが、洞窟に入れる面子は、必ず『証明証』を持っている。
チップ無しが入ろうとすると、必ず入口で弾かれる。つまり入れない。昔は入れたらしいが、荒らすわ荒らされるわで、対策したとの事だ。
当たり前だよな。
でーーだ。俺は巧を見た。巧は動じず目線も反らさなかった。
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「悪いね『ノミニオ』」
陸は言った。ノミニオは頷いた。
「じゃ、いってきます」と。
× × ×
「ど~も~『はじめまして』?」と、ノミニオが言った先に、男が二人いた。ひとりは巧だった。
× × ×
「はれ? なんで『巧』サンが?」
ノミニオは言ったのだった。
× × ×
「『陸兄』が連絡くれたのって、君かな?」
巧の横にいた、恐ろしく美形の男がーーそう言ったのだった。瞳が深い深い青色だった。『藍色』というか。そんな色味だった。誰かを連想した。が、ノミニオは答えに行き着く前に、正解を知った。巧が彼を『兄』だと言った。兄の『青』と言うらしい。彼は正しく青だった。
瞳もそうだが、全体的なオーラが、青く冷たい。何よりもーー髪色、彼の髪は、青み掛かった薄い黒だった。光りに晒されると、青味が強まる様な。
何よりやはり冷たかった。一種独特だった。
× × ×
直夏が、俺を呼んだ。巧が『離脱』して、『さあどうする』ーーとなった時だった。
そして彼も又信じ難き事を言い出した。『悪いな俺も離脱する』ーーと。
× × ×
「ーーと、言う事。で、陸君から話聞いて、俺は合流したんだけどね?」
佐木 直夏は華月 陽藍へとそう言った。が、俺、つまりカーズィ・キルシュがその会話を知る事はーー無い。離れた場所にいたのだから。
横ではなつめとサトシが、騒いでいた。『直夏さんの、裏切り者!』と『ーー俺、直夏さんて正直怖いーーから、これで良かったかも』ーーと。渋い表情で。
俺達は『探索』を続行していた。『秘薬』を探してだ。噂によるともっと深い場所の筈なんだ。あの『花』が在る場所はだ。特殊な場所。特に強い『場』に守られてる筈のあの花ならば、無事な筈なのだ。ーー恐らくはだが。巧が離脱し、更に直夏まで離脱した俺達は、情けなくも『心細さ』をーー感じていた。冒険者の端くれの名折れだな。
「ーー聞くがリッツ達は『花の場所』まで行った事は?」
事前に聞くべきであった事を、俺は今更ながら確認していた。冒険者のーー名折れだな。巧の『規格外』の強さにーー無意識に甘えていたらしい。ーー恥じて気を引き締め直す。ユリシアを見ながら。
リッツ達は頭を振った。『いいや』と。無いとの事だ。そうかーーやはりか。そもそも目的の花は、決まった『時期』にしかーー咲かない。依頼か何かでも無きゃ、冒険者は近寄らないかーーと、思った時だった。ユリシアが『あの…』と遠慮がちに可愛い声を出したのは。皆、注目してしまった。ユリシアはやはり遠慮がちに言ったのだ。
「私…………場所知っています…………。」と。俺は目をひん剥いたのだった。
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ちょっと落ち着きを取り戻した俺は彼女へ聞いた。『どうしてだ?』と。勿論リッツもリィンツィオも意外そうだった。大体ユリシアは『チップ』も無しにどうやってーーいや、落ち着け。俺は気を鎮めて彼女を見たのだった。ユリシアは、ゆっくりと理由を話した。
「以前ーー頼まれたんです。ーー二ヶ月程、前でした。アウトワーカーの方と、卸業者の方が一緒にーー来られて。『量産』したいので、『原種』が見たいーーとの事でした。」
つまり、業者から依頼された冒険者は、『護衛』は請けれるが、『花』に関してはど素人。業者が探す花を『見付けて』も、『判断』出来ない。業者も『現物』を見れば『判断』出来るが、そもそもその現物が『何処』に生えるか分からないので『案内』を頼んだ訳で。
洞窟内を全て探し回る時間は無いーーそれで彼等は聴き込みして、『原種』の判別と場所まで確認出来る人物にーー辿り着いた訳だ。それがユリシアだったと。しかし、それだとユリシアが『場所』を知っていた説明に為らない。ユリシアはそれについて続けた。実はーー……と。
「『店勤め』だった頃に、一度だけ洞穴に入った事があったんです。此の洞穴でした。なので場所を覚えていて、知っていました。それをファリスのお父さんに話した事があったので……」
店勤めだった頃に、ユリシアは店からの依頼で、此の『ダンジョンイズフラワーナイト』に、同行の形で入ったそうだ。目的は正しく今回探している花だった。やはり量産を目的とした業者が、その時は『コピー』しに来たらしい。運良く上手くコピー出来たのだが、量産には至らなかったとかで、目標にした商品は出回らなかったらしいーーが、類似品の生産の『参考』に成ったとかで、赤字は免れたとかで。カラミの街にいたんだよな?ユリシアは。言われてみれば、思い当たる商品を見た覚えがーーある様な気がした。『土産物屋』で。『香り付き』の酒が。ーーあれの事か?それ?
今回の調査依頼に関係ないので、今は確認する事を控えた。それよりもーー
「ーー正確な『場所』が分かるのかーー?」俺の問いにユリシアはこくりと頷いたのだった。『こっちです』ーーーーと。
× × ×
「青兄ちゃんーーどう?」
巧は兄に問い掛けたーー兄は応えた。
「見〜っけ。いくぞ巧。」ーーと。冷酷極まりないその表情をーーノミニオは目撃たのだった。




