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閑話~紺君と・お兄ちゃん・の~『帰り道』。

 「紺、気持ち悪くなったら、言うんだぞ。」


 卓が紺にそう言った。此処はしがない宇宙空間で在る。大気等は無い。無いが彼等は平気な様子だ。良く見れば、二人は結界に護られている。卓が施した物だ。彼等の『星』迄はーー未だ遠かった。卓は、いつもよりも大分ゆっくりと歩を進めたのだった。紺の為にも。


 「ごめんね、卓兄ちゃん…………」


 途中で、紺は狐の姿のままで言ったのだった。力を使い過ぎて、本来の姿に成ったままだった。辺りは暗い。卓が照らす周辺以外はだ。だから良く見てみないと、紺の毛皮の色は、碧くは見えなかった。輝きも無かった。可哀想な位に。


 兄は弟に呼び掛けた。『謝るな』と。



 「紺は謝り過ぎなんだよ。もういいよ。分かったから。」



 紺は黙った。そして泣いてしまった。毛並は益々涙で濡れて、とても酷かった。卓は『帰ったら後で洗ってやろうーー』そう思った。




 子供だった頃、卓はひとりっ子だった。陸が生まれるまで。父は良くお風呂に入れてくれた。髪も身体も父が洗ってくれた事を、思い出した。


 忙しい父は余り遊んでくれなかったのだが、お風呂だけは父の仕事だった。母では『危ない』からと。建築家の父は、そのうちに、『子供が危なくないお風呂』をーー設計した。


 扉もだ。



 『子供がゆびを挟まない扉』。『角の無い柱』 『子供が階段からちない設計』、



 色々造りだしたーー卓は、父の『背中』をみてーー育った。父と同じ『建築家』の道を。ーー自然と目指し、そして歩いたーー時も在った。




 『父がみている』世界をーーみたかったのだ。





 今、卓は『モデル』だがーー『心理学』の専門家でもーー在る。専門は『犯罪・・心理学』ーー罪を犯すモノのーー『心理』が知りたかったのだ。






 『犯罪者』にられた事の『在る』彼にはーー『必要』だったのだろう。例え、『無意識』でも。子供だった頃だ。母は魅力的な女性で、卓は小学生だった。母は小学校まで、いつも卓を送ってくれた。『未だ危ないから』と。



 犯人は小学校の用務員の男だった。俗にいう『インテリ崩れ』だった。母に惚れてしまった。歪んだ感情は、母『友美』は、『自分に気が有る』ーーと解釈した。母はいつも『笑顔』だったのだ。用務員は良く花壇の手入れをしていた。登下校の際も。



 必然としてーー友美は良く『挨拶』をしたーーそれだけだった。嫌われ者だった男には、それだけが十分に理由だったのだ。恐ろしくも。



 用務員は、『父と母』をーー『目撃』た。仲睦まじい様を。然しーー『歪み』は『父親』が『いなけ』れば、




 「あの女性ヒトはーー遠慮しないで俺に好きと言える」んだーーそう言ったのだった。





 攫いに来た。『家』まで。友美は『防犯セキュリティ』をーー切ってしまったままだった。良く陽藍に注意されていたのにだ。




 用務員は、刃物を持っていた。陽藍を『排除』する為にだ。そして友美を連れて逃げようと思っていた。それが『正解』だと。





 卓と友美は家にたのだーー陽藍は、その日帰りが遅かった。





 母を逃がそうと思った卓は、『男』を『阻止』しようと、立ちはだかった。父が教えたのだ。



 『おまえはお母さんの「騎士ナイト」だよ』と。『お父さんが居ない時は、お母さんをよろしくな』ーーと。



 陽藍は、『お母さん』の言う事を聞いて、『お手伝い』よろしくな?ーーそういう意味だったのだ。






 帰宅した陽藍が『みた』のは、血溜まりの中の動かない『勇敢・・な』息子と、





 放心状態の『妻』だった。暗闇の家の中で。






 卓は、脳挫傷だった。用務員が執拗に、『叩き付けた』のだ。他に外傷は無かった。然し、『十分』だった。子供の命を『奪う』には。ーーーーーーーーー





 夫婦は最愛の息子をうしなった。『宝物』だったのにーーだ。友美はショックで、『出来事』を『把握』していなかった。『卓』をうしなった事を『理解』出来ずにいた。




 時々『思い出してしまい』卓を探した。その度陽藍が、優しく窘め、抱き締めた。




 陸は、『その為に』ーー産まれて来た。『卓に弟を作ってあげる』約束だな?と、友美に陽藍が言ったのだ。それ位しか、思い浮かばなかったのだ。友美の心を『癒す』方法を。




 犯人は逃げた。友美を連れ去れなかったからだ。彼は非力だった。彼女を抱えて逃げる事叶わない程度に。軟弱・・だった。



 そして陽藍は『犯人』をーー見付けた。陽藍は、趣味で『心理学』をっていた。犯人を捕まえられる程度・・に。




 寧ろ陽藍とは『野獣』の様な『モノ』なのかも知れないーー『嗅覚』で見付けた様なものだった。獣『特有』の『異様』なまでの『勘』が、彼が犯人だと告げたのだ。




 観察力ーー洞察力ーー言い方は多々有るーーだが、それらの『度』を超していた。それが『陽藍』だった。




 『普通』と『かけ離れた』モノーーだった。言葉で説明すると、嘘の様な『存在』だった。まるで『まやかし』の様な。未だ『人間』だった頃の、『彼』の話ーーだ。今よりも人間くさくーー無かった。彼はかがーー『卓越』していたのだ。今にして思えばだ。






 当時の卓は、気付いていなかった。彼にはただ、優しい父だった。尊敬していたーーそれだけだ。







 「紺ーー」



 卓は弟に聞いた。




 「紺はーー『お父さん』、好きか?」



 「………………………うん。………………」





 本当は卓は未だ紺に『色々』教えようと思っていたーーだが、



 「そうか。そうだな。じゃあ『紺』、もう『ごめんね』はーーいい。ーー今度は、」



 「??」





 「『ありがとう』ーーだ。それでいいんだよ、紺。謝り過ぎ。分かった?」





 紺が見た『兄』は優しく、優しく笑ってーー言った。紺は思った。『卓兄ちゃんが、多分一番お父さんに「近い」』と。






 笑ったお父さんの顔とそっくりだと思った。





 「…………お兄ちゃん。…………」



 「ーー何?」





 「帰ったら『お母さん』の『カレー』が食べたい。」




 苦笑した兄は言った。『ああそうだな』と。『痛いか?』と聞いたが、『治った。疲れただけ。……………………………卓兄ちゃん。…………………………………ありがとう…………………?。』









 紺は未だ少し、照れながらだった。卓はそんな『紺』を、ひと撫でした。家までは『もう少し』だと。



                            閑話~『帰り道』~end. 

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