表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
43/47

第十章 (2)

 お待たせしました。ようやく次話です。


 いよいよアーケナクト戦線に到着します。戦闘場面が稚拙なのは目をつぶっていただけると嬉しいです。古今東西の海戦も調べたりしたのですが、平面なので宇宙空間の立体には無理がありました。


自 2012年5月7日

至 2012年5月22日


 一方その同じ時、エリナの立案した作戦はカンジュンの指揮の下で実行されていた。

「全艦出撃!」

 カンジュンの号令で戦いの火蓋が切られた。とは言え、敵を叩くことが目的ではなく、できるだけ損害を少なくした上で、本隊に合流することが目的であるから、艦載機は出さず、主砲及び副砲にての応戦になる。無論、やむを得ない場合は艦載機の出動も視野に入れてはいるから、全員待機状態ではある。

「先鋒、一斉射撃!」

 横一列の陣形をとり、敵に向かって主砲が放たれる。これを見て敵も一斉にこちらへ主砲を放つ。

「散開! 第二陣用意!」

 敵の反撃のビームが届く前に、さっと先鋒隊が上下に分かれる。敵の主砲はその間を抜けて行った。

「第二陣、一斉射撃!」

 次の艦隊が、間、髪を入れず、同様の陣形で敵へ主砲を放つ。これもまた先鋒同様、単純に上下に分かれて敵ビーム砲をよける。ここまで来れば、敵もこちらの動きが見えて来る。次の攻撃は波状攻撃に切り替えて来た。無論、エリナもその程度のことは想定済みだ。それまでの単純な上下への散開ではなく、あらゆる方向へ敵の主砲の動きを見ながら移動し、同時にこちらも波状攻撃に切り替え、主砲の他副砲も使い弾幕を張り、緩急をつけさせ、陣形をめまぐるしく変えさせるという手を打ち出している。しかもそれに加えて速度もこまめに変化させた。それは敵の動きを予め細かくシミュレートした上での指示で、しかも始めからの作戦であったため特に混乱もなく、こちらの方がかなり有利に展開できていた。実際、これほど正確に敵の動きが読めるものだろうかと思う程それは正確で、結果、敵の度肝を抜き、かつこちらはほぼ無傷で本隊に合流できたのである。そして同時にこれは敵にあなどれない相手が本隊に加わったことを知らせることにもなったのである。


 増援部隊が合流時に派手に暴れてくれたおかげで敵は一気に引いた。こちらの動きから余程の参謀が加わったと思われたのだろう。様子を見る限り、当分動きそうになかった。当面はこちらの動きを静観するつもりなのだろうと思われた。

「流石ですね。最小の手数で敵の動きを封じ込めてしまいましたよ」

 ダレンが嘆息する。それはハルカも同じ気持ちだった。

「本当に見事だったわ。噂以上だわね」

「司令! リー大佐がお着きになりました」

 デッキから連絡が入り、ハルカとダレンは席を立ち、ミーティングルームへと向かった。ドアを開けると顔なじみのカンジュンの姿が目に入ってくる。同行者は六名、そのうち二名が女性である。この作戦に参加した各部隊のリーダーだろうか? だが確か部隊は第八方面隊を含めて全部で六つの筈だ。とすると一人多い様だが…、ではそれがエリナ中将殿だろうか。その二名をそっと見やる。一人は三十歳前後だろう、髪を短く切り揃え、まっすぐに正面を見据えている。いま一人はかなり若く見える、もしかしたらまだ十代かも知れないと思える程。だがその規模はともかく部隊を預かっているのであればおそらく二十歳は越えているのだろう。

「久し振りじゃのユージーン司令、要請を受けて我ら増援に馳せ参じましたぞ」

 カンジュンがハルカに歩み寄る。階級的にはハルカの方が上だが、軍歴はカンジュンの方が長いのだ。それにハルカはかつてカンジュンの下にいたことがあり、カンジュンの口調も遠慮のないものになっている。

「こちらこそ要請に応じて頂き、ありがとうございます。で、後ろの方々は?」

「わしと同様、要請に応じた各部隊のリーダー達じゃ」

「ショーゴ・キサラギです。大尉として中隊を率いております」

「リディア・マクドゥーガルです。中尉で小隊を預かっています」

「タナー・クリストフです。私も大尉として中隊を預かっています」

「ニコル・カーツです。位は少佐ですが、遊撃隊を率いています」

「ミック・ゲイルです。中尉で新造艦の艦長をしております」

 カンジュンの言を受けて、各自が次々と自己紹介をする。これで六名中五名までが名乗りを上げた。二名いた女性の内、先に名乗ったのは年上の方の女性である。とすると残るは若い方の女性だけだが…まさか…ね。カンジュンが彼女に近づき、ハルカに向き直る。

「それから、こちらが今回の作戦の立案者の…」

「エリナ・ランドルフです。現在は新造艦ファルコンの参謀をしております」

 敢えて階級は語らない。そのままハルカの方に歩み寄る。

「お初にお目にかかります。ユージーン少将のお噂はかねがね。お会い出来て光栄です」

 にっこりと微笑む。その様子にカンジュンとミックを除く六人が息を呑む。中将というには余りにも若い。本人が名乗っている以上、嘘ではないだろうが、まさか…という思いでいっぱいである。

「余りに若くて驚かれた様ですね。信じられないのも無理はありませんが、別に無理に信じていただこうとも思っておりません。どちらにしても私は私でしかありませんから」

 人に信じてもらう必要はない。エリナには自分が自分であるという確固たる信がある。それが揺らぐことはない。それがあったからこそ、あの修羅の日々を乗り越えてこれたのだ。そのエリナの様子に逆に誰もが納得する。成程、これは確かにあのエリナ中将に間違いはない。年齢を感じさせない強さ、それはこうしたところから来るのだろう。己を信じる強さ、それでいて自分は自分でしかないと言い切る潔さ。それは自分を過信していないということでもある。それが人を魅きつけるのだ。

「こちらこそ、エリナ中将殿とお会い出来て光栄に思っております。以降お見知りおきを…」

「私は今は一参謀に過ぎません。肩書きも階級名も不必要です。エリナだけで結構です」

「そうもまいりません。ではせめてエリナ参謀と…」

 まあ状況から見ても今はそれが妥当だろうと考えて、エリナはそれを受け入れる。階級制度の厳しい軍の中で中将という立場はそれなりに重い物ではある。まあ、最もカンジュンやミックはその呼称を使うことはないだろう。彼らにとってエリナはエリナでしかないのだ。

「で、これからわしらはお主らの指揮下に入る。指示を…」

 カンジュンがハルカに先を促す。ハルカはダレンを見やった。「あっ、ああ、はい。では…」

 ダレンがうなずき、ミーティングルームのパネルに戦線の全体図を表示する。

「我々が死守しているガイナック鉱山星がここ。で、現在位置がここ。敵は先程の戦闘の後、ここまで後退しています」

「動きは?」

「今のところは特に」

 カンジュンの問いに簡潔にダレンが答える。エリナは口を挟まない。ここはカンジュンに任せておくつもりなのだろう。

「皆さんの配置ですが…」

 と、ダレンが各部隊の配置を指示する。ファルコンを除くすべての部隊に指示を出してからハルカを見やってうなずく。

「新造艦の方はしばらく旗艦について頂きます。艦の能力の見極めも必要ですし、何より簡単に失わせる訳にもいきません」

 当然であろう。いかに性能が高かったとしても安易に前衛に出して失うわけにはいかない。しかもどの程度の性能かハルカたちにはまだわからない。だからどう使えばいいか現時点では判断できない。ついでにできればその間にエリナの能力を借りたいとも思っている。先の作戦の見事さを思えば、現在のやや膠着した局面の打開も可能ではないかと思わせるだけの力がある。指示に従い各部隊が散って行く。ミックも艦に指示を伝えるべく戻っていったが、エリナはハルカに請われてまだ旗艦に残っていた。


 場所を艦橋に移し、ハルカとダレンは改めてエリナに向き直る。

「お引き止めして申し訳ありません。ですが、まだいくつか確認しておきたいことがありまして…」

「いえ、構いません。新造艦の性能については私が責任者ですから当然のことですし、戦略についてもお聞きになりたいのでしょう?」

 流石にきっちりとこちらの意図を読んでいるとハルカは思う。技術将校としてだけではなく一般的な兵士としての能力も買われた上での中将という地位なのだろう。噂はどうやら本当だった様だ。

「先ずは船の性能についてですが…」

 性能面で大きなものは新しいステルスシステムであろう。既に前回の作戦でその能力を遺憾なく発揮している。あとはこまごました部分で、戦略的にはあまり影響はないだろう。ステルスシステムにしても艦隊戦では余り意味はないのだ。

「戦略については私などより実戦経験の豊富なリー大佐殿の方が、よりお役に立つのではありませんか? 階級的には私の方が確かに上ですが、私は研究者でもあり、実戦経験はさほど多くはありませんよ」

 意見を出すことはやぶさかではないが、まだまだ若輩者の自分の意見がこんな激戦地で役に立つかどうかは心許ないのだ。エリナは自分が万能じゃないことをちゃんと知っている。上に昇りつめているとは言っても、実力はまだまだだとも思っているのだ。

「それは承知しております。ですがここの戦線は長い間膠着状態が続いています。打開するためには何か思い切った策が必要かと…。我々のようにずっと戦場にいた人間は頭が少々堅くなっていますから…」

 現場にいて内側から見ていると見えないものも、外からだと容易に見えることもある。また日々の業務に追われていると得てして全体像を見失いがちだ。まっさらな目で戦線の状況を見て欲しいと思う。

「わかりました。そこまでおっしゃるのでしたら…。私などの意見がどれ程お役に立つかわかりませんが…」

 そう言ってエリナは最近の戦局の動きは元より、過去のいくつかの大きな戦局の動きについても確認をした上で、いくつかの参考意見を伝えた。それがこの先の戦局で有効になるかはわからない。こちらに新たな戦略家が加わったことは既に敵に知られている。敵がそれを踏まえてどう動くかはまだ見えない。今はまさにどちらも腹の探り合い中なのだ。


 指定された位置にファルコンを移動させ、艦内に第二戦闘配置を指示する。この現場にいる間は戦闘配置を解除することはない。というか解除できない。今は特に動きはないが、それでも戦闘状態には違いない。どこで打って出るか間合いを測っている最中なのだ。いつ攻め込まれるか、いつ攻め込むか、本当に紙一重の差でしかないのである。ミックは艦橋から司令のいる旗艦の方を見やる。エリナはまだ戻って来ない。ということはまだあちらで作戦会議中なのだろう。ちょっと悔しい。年は大して違わない。多分、自分の方が二つか三つ上だろう。まあ軍歴は彼女の方が上だが…それでもこの差は大きい。自分も18で軍に入っていたら、もっと上の地位にいただろうか、いや多分無理だなと思う。今はともかく、あの頃はそこまで上昇思考はなかった。えっ…今はともかく…って、その思いに気づいて愕然とする。身近に目標とする相手がいるとこうまで意識が変わるものなのだ。己の身の内にあった野望に気づき苦笑する。そんなミックを横目で眺めながら、何を考えているのだろうとサラは思う。艦長として命令を下す時は力強く感じる視線が、こうした待機中の時、時折揺蕩うのを知っている。ひところより自信はついて来たのだろう。それでもその揺蕩う視線がどこかげ心細げで、何とか力づけてやりたいと思ってしまう。余計なお節介かも知れないのだけれど…。



 またもや人が増えてしまいました。最もしばらくは名前だけです。この先活躍するかは未定。


入力 2013年2月21日


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ