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第八章 (3)

 第三十五話です。敵地で現在、偵察中。ということで話はあまり大きく動きません。ちょっと退屈かも…。

 話の都合で、ちょっと短めです。


自 2011年11月26日

至 2011年11月28日

一部補追 2012年4月4日


 暗号通信の解読の結果、判ったことと言えば、何やら新しい作戦が進行中らしいということだけ。しかも肝心のその中身はさっぱりわからないという代物。どうすりゃいいんだ?こんなもの。

「本部に報告すべきかな?」

「ああ、いい、いい。ほっときなよ。詳細も判ってないんだしー」

 ミックの問いに投げやりにエリナが答える。ちょっと待てーっ、そんないい加減でいいのかーっと皆は思う。確か入手情報って報告義務あったよね。

「でも情報を隠しておいちゃ不味いんじゃないの?」

 至極最もな問いをサラが口にする。上層部とのトラブルは極力、避けたい。

「そりゃま、軍規ではどんな小さな情報でも隠すなって言ってるけど…。そんなの誰も守ってないって、大体こんな漠とした情報なんて役に立たないし、混乱するか、余計な仕事増やすか、そのどっちかしかないわよ」

 混乱…はまあ判る。こっちだって現在混乱中だ。けど余計な仕事が増えるとはどういうことだろう。

「下手したら、その詳細も調べろって任務、増やされちゃう。そうなったら面倒じゃない?」

「それは確かにそうだが、そんなんでいいのか?」

 ミックのあきれた様な物言いにエリナはにっこりと微笑み返す。

「軍規の解釈にもよるけど、一般的には、この場合の情報というのは与えられた任務に付随するものと言うことになってるわ。そもそも…これは軍規にも明記されてるけど、先ずは与えられた任務が基本かつ優先、それ以外は切り捨てOK。余計なことには手を出さない方が賢明ね。仕事を増やしたいんなら別だけど…」

「成程、要はそれも臨機応変ってことだな」

 ミックが納得してうなずく。今、引き受けている任務だけでも大変なのだ。これ以上余計な任務など引き受けたくはない。それにどっちみち、今ここから本部と連絡を取ることはできない。つまりこの件に関して本部の指示は仰げないし、こっちが情報を掴んだことも向こうには判らない。要は黙ってりゃ良いということだ。

「そういうこと。取り敢えず、今現在、この情報に関してわざわざ調べる必要はないってことよ」

「で、それは判ったが、これからどうするんだ?」

 口を挟んだのはショウだ。隠密行動中につき、戦闘班はすることがない。ヒマを持て余していらいらしているのだ。

「そうねえ、ここでこのまま通信を傍受してても埒があかないでしょうし」

 エリナが首をひねる。一見、迷っている様にも見えるが、その目に迷いの色は見えない。既に何か目論んでいるのに違いない。

「いっそ、街へ降りて見る? その方が情報収集はしやすいわ」

「軍に潜入するのか? それは危険だろう?」

「違う、違う。街で情報を集めるのよ。これだけの規模の基地のある街なら、相当雑多な人間が集まっている筈よ。人の集まる場所には情報も集まるわ」

 別に特にスパイとしての訓練を受けたわけではないが、エリナの交友関係はそれこそ多岐に渡る。その分様々な情報や知識も耳に入っている。流石に友人の中に明らかにスパイと判る人物はいなかったが、(仮に本当にいたとしてもプロならばそれを他人に明かす筈もない)記者等、情報収集に携わる人間は複数存在していたのだ。

「出来るのか? それにそもそも誰が行くんだ?」

 実際、現在艦に居るメンバーの中にそうした活動の出来るものなどいるのだろうか。元民間人はもとより、軍人達にしたって(後から補充された要員を含めて)そうした訓練を受けたものはいない筈だ。とは言え、現場では常に訓練されたものがいるとは限らない。必要に応じて誰もがそういう活動を担わされることは往々にしてある。

「私が行くわ。元々そのつもりだったし…」

「危険じゃないのか?」

「危険じゃないとは言えないわね。だけど、どんな作戦だって、100%安全が保証されている訳じゃない。リスクを減らすことは出来てもゼロには出来ないのよ。で、リスクを減らす為には私でしょ。状況を一番把握できる私以外に誰が行けるというの? それに皆も知ってる通り、友人を作るのは得意よ」

 確かに見ず知らずの相手と仲良くなれるという点で、エリナの右に出る者は少なくともこの船にはいない。いや、もしかしたら、この広い宇宙のすべてを探し尽くしてもいないかも知れない。「まあ、それは認めるが…」

「私では不安?」

 エリナだから…ではなく誰が行っても不安に思うだろう。それはミックだけではなく艦橋にいる皆の共通した思いだろう。だとしたら確かにエリナが行くのが一番安全と言える。

「判った。他に方法はないようだし、それで行こう。で、作戦は単独で?」

 他にもっと良い方法があれば、当然そのことを口にしているだろう。他の選択肢を示さないのは、それがないからだ。なら、それにかけるしかない。その上で、詳細な作戦についての情報を求める。

「いいえ、敵地に乗り込む以上、単独行は危険よ。何かあった時に対処できなくなるわ。だから…サラ姉さん、一緒に来てちょうだい」

「へっ? 私っ?」

 いきなりの指名にサラは戸惑う。スパイのノウハウどころか、軍のノウハウだってやっと判って来たところなのだ。

「女の子二人の方が、相手の油断を誘いやすいし、何よりサラ姉さんは人から情報を引き出すのが得意でしょ」

 男女の組み合わせは見た目自然に見えるだろうが、他人から情報を得るのは難しい。普通アベックは他人の事など気にしないものだ。それをあれこれ訊くのでは却って不審がられてしまう。その点女の子二人なら、他人とのおしゃべりは不審には思われないだろう。一人だとナンパされやすいが、二人なら多少はガードも効くだろう。それにそもそも、エリナとサラはぱっと見、美人というわけではないから、そっちの方はまあ大丈夫かも…。確かに軍人にだって、スパイにだって女性は少なくないのだけど、相手が油断しやすいのはやはり女子供であろう。



 次はいよいよ敵地に潜入します。基地の街での情報収集。さて、どんなことになりますやら。


 亀ペースの為、あまり推敲せずに更新しています。ストックが切れたら、改めて推敲しますね。


入力 2012年11月14日


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