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第七章 (3)

 上手く途中で切れなかったので、少し長くなってしまいましたが、これで第七章が終わります。


 ようやくファルコンがファルコンとして動き始めました。しばらくは、単独だったり、チームに入ったりしながら、あちこちの戦場を渡り歩く予定です。


自 2011年9月3日

至 2011年10月8日


 一方その頃、エルは久しぶりにリーザの部屋を訪ねていた。既に皆から認められた恋人同士とは言え、戦闘の続く最中〈さなか〉、そうそうゆっくり会える訳ではない。しかも、リーザはともかく、エルはベンとともにメインの操縦士であり、中々艦橋を離れられないのである。まあ今度は航海班にも新メンバーは増え、戦闘時はともかく普段は少しは息を抜ける様にはなったのだが…。

「それにしても二人とも軍人になっちまうとはなぁ」

 エルがつぶやく。そもそもリーザだって、軍に勤務してはいたが、正規の軍人ではなかった。基地内で見聞きしたことに対する守秘義務こそあったが、それ以外は普通の会社の事務員と対して変わらなかったのだ。

「そうね。でもおかげでこうして一緒にいられる様になったわ」

 こてんとリーザがエルの肩に頭を持たせかける。エルがその肩を抱き寄せた。ほとんど戦闘はなかったとは言え、最前線で仕事をし、月に一度程度しか会えなかった二人である。今の方が危険は大きいとは言え、一緒にいる時間は格段に増えていた。その分、思いもより深くなっている。愛し合う二人にたくさんの言葉はいらない。互いにそばにいるというそれだけで充分なのである。

「いつ命がつきるかわからないけどな」

「それでも今は一緒だわ」

 正規の軍人になり、戦場に身を置く様になった以上、いつ何が起きてもおかしくはない。そのことは二人とも良く承知している。それでも今までは互いに知らないところで命を落としていたかも知れないことを思えば…と思う。どちらも戦闘員ではない分、多少は安全とは言えたが、それでも100%ではない。白兵戦にでもなれば、命を的にすることになるし、逆に戦闘員でない分、射撃能力は落ちるから、その方が危険とも言える。だからこそ、わずかでも共にいられる時を大切にしようと思うのかも知れない。


 翌日、心地良く晴れた空のもとと言いたいところだが、宇宙空間にそんなものはない。とにかく少なくとも気持ちだけはそんなつもりで、ファルコンは最前線基地を出発したのだった。ちなみに現在の最前線基地は不定形の小惑星――というか星の欠片?――上にあり、ワズのように大きな惑星ではないため、当然、太陽にあたるものはないのである。

「ファルコン発進!」

「了解〈ラジャー〉、ファルコン発進します」

 ミックの指示をベンが復唱し、ファルコンはゆっくりと基地のポートを離れて行く。

「全方位レーダー作動! 周囲に気を配れ」

 カールがレーダー員に指示を飛ばす。

「メインエンジン出力上昇! 第二宇宙速度に移行」

「総員第二戦闘配置!」

 機関部へ指示を出すエドナーの声にショウの声が重なる。

「通信班、偵察衛星からの情報を随時、技術部へ」

「了解〈ラジャー〉!」

 サラの指示をリオが受ける。それを受けて今度はエリナがサブブリッジのデビーへと指示を出す。

「デビー、通信班からのデータを逐次分析してメインブリッジに上げて」

「了解〈ラジャー〉!」

 サブブリッジから返事が返る。各部署に指示が行き渡り、艦内に緊張感がみなぎる。ここから先はいつ敵が現れてもおかしくはない。浮遊物の陰に敵がひそんでいる可能性だってあるのだ。偵察衛星からの情報を分析しながら、ファルコンはゆっくりとワズに向かう。分析するデータは最新のものだけではない。今回の任務の為には、過去のデータこそ重要なのだ。そちらは急ぎではないので、メインコンピュータールームの方へ送られ、そっちで他のデータとつなぎ合わせる形で分析が進められている。こちらの方は元研究所員のマックが中心になっていた。


 いくつか気になる情報はあったもののワズに至るまでの間、敵と出会うことはなかった。ただ最後の追撃のあともどうやら敵はこの辺りまでは一度ならずやって来た様だった。おそらく新造艦に関する情報を少しでも得たいと思ってのことであろう。この分だとワズの研究所の方も荒らされている可能性が高い。問題はどれだけの情報が残っていて、それがどれだけ敵に流出したかということだ。これはかなり難しい問題である。何が残っていたのかわからないのだから、何をとられたかなどわかる訳がないのだ。それでもそれを調べるのも、今回の任務の一つである。これは調査に赴いたのがファルコンであるからこそできることでもある。今現在、研究所のデータについて詳しいメンバーが全てこの船に乗っているのだから…。ワズに着いたメンバーは、被害状況を調べるグループと、研究所のデータの状態をチェックするグループの二手に分かれた。無論、緊急時に備えて艦に待機しているメンバーもいる。特に艦橋メンバーはそのほとんどが各部の指揮官であるということもあり、艦に残っている。艦橋を離れたのはエリナとカールの二人だ。これは研究所の調査にはどうしてもエリナの力が必要だったからで、カールはその補佐役である。本当はサラかマリーを連れて行きたかったところだが、サラは副艦長だし、万が一敵が来た時のことを考えると砲術班長のマリーを連れて行くわけにもいかなかったのだ、と、これはまあ表向きの理由である。


「何処から研究所内に入る気だ? 表の入り口は破壊しちまったんだろ? かといって脱出口を使う危険は犯せないわけだし…」

「まあね。取り敢えず正面から行って様子を見るわ。少なくとも誰かが侵入したかどうかはわかるかもだしね。まっそこも上手くカモフラージュされてるかも…だけど」

 とにかく侵入されたことがわかれば、データが盗み出された可能性を考えなければならなくなる。逆に侵入されていないことがはっきりすれば、データの流出について心配する必要はなくなる。そしてそれがわかって始めて次の行動を確定できるのだ。

「見えて来たぜ、エリナ。あれがその残骸だろ」

 先頭を走っていた車両からマックが声を掛けてくる。崩れ落ちた建物の上に敵の中型艦が乗っかって無残な姿をさらしていた。その手前の荒野には、やはり敵の中型艦がそこここにこれまた無残な姿をさらして散らばっていた。

「マック、皆を指揮して敵艦から何か情報を引き出せないか試してみて。多分破壊されていて無理だとは思うけど、何らかのデータを引き出せるかも知れないから…」

 敵があの後、何度かこの空域にやって来ているのなら、残骸からデータを取られない様に破壊するか、データボックスを取り外して持ち去るかしているだろう。流石にまだこの短期間では艦そのものを回収できなかったのだろう。何よりまずはファルコンの追撃に力を注いだ筈だ。それにワズの基地は破壊されてしまったが、この辺りの制空権――制宙権か?――が完全に連盟に移ってしまったわけではない。何より連盟側はここに仮基地すら造ってはいないのだ。敵艦に向かうマックたちと離れて、エリナとカールは研究所の入り口…というか、入り口があったと覚しき辺りに向かった。崩れ落ちた瓦礫の山を先ずは観察する。

「少なくともこの辺りを掘り返した形跡はないわね」

「そうだな。けど手前の建物は研究施設としては使われてなかったんだろ?」

「今はね。でも以前は使われていたし、現在使われていたかどうかなんて、あちらさんにわかる訳ないじゃない? まだ機材の一部はこっちにも残ってたから探知機とかで探れば何らかの反応は出た筈よ」

「ふむ、つうことはこの辺には探索には来ていない?」

「まだわからないわ。どのみち入り口付近には大したものはなかったしね」

 入り口にあった機器はセキュリティシステムとドアの開閉システムだけである。ちょっと慣れた技術者なら探知機のデータだけで、それを判断できるだろう。ならばこの辺りを掘り返してなくても不思議ではない。

「取り敢えず、崖内部の入り口辺りまで行ってみましょ。そもそもメインは崖の内部だし…」

「しかし、これじゃどうほじくり返しても、中には入れないんじゃないか?」

 まさにあらゆるものが崖の方に向かって崩れ落ちて積み重なっている。元の出入り口はおそらくこの何層も下になるだろうが、ちょっと掘っただけで、すぐ周りから崩れてしまいそうである。

「うーん、そうねぇ、壁でも立てて支えないと掘り進めそうにないわね」

「掘っても掘っても崩れる様なら、一度壁を立てて、あとから外してもわからないんじゃないか?」

「でも一度掘り返したら、下の方の瓦礫が上に乗ってしまう筈じゃないかしら…」

 一度掘り返したものを上下そのままに元通りにするのは、実はかなり難しい。だから上下が入れ替わっていないかを調べれば、どこまでほじくり返したかわかるのである。そうして見るとこの辺りは多少は掘った様だが、そこまで深くは掘っていない様だった。

「この分だと中には侵入できていないかもね」

 エリナはそう言いながら瓦礫の山を外れ、むき出しになった崖の方へ向かう。

「おい、エリナ、どこへ行くんだよ」

「こっちに一つ、隠された入り口があるのよ。まっ中もかなり破壊されてるから、入り込めるかどうかはわからないんだけどね」

 崖の前に立ち、ぐるりと崖を見回す。それからとある箇所に手の平を当てた。崖の一部がぐぐっと中に引っ込む。どうやら掌紋認識システムらしい。中に入るとすぐに戸は閉まってしまう。極力発見されないように工夫してあるのだろう。

「ここの通路自体は無傷の様だな」

「緊急用の通路で、向こうの出口も隠されているから、自爆システムの対象からも外してあるわ。ただ出口の先はどうなってるかわからないわよ」

 出口の扉は難なく開いたが、その先はまさに破壊され尽くした荒野だった。爆風によってひしゃげた部屋のドア、火災によって煤けた室内には燃え尽きた本がそのままの形で灰になって残っている。

「爆発のあと火も出たみたいだな」

「というより、そういう風にしてるのよ。爆発だけじゃ書類は消せないから」

「成程な…。つうことはお前の親父も…」

 流石にその先を言うことはためらわれた。だが、エリナだってそんなことはとうに覚悟している。別に今回だって遺体を探しに来たわけではないのだ。

「爆発で粉々になってなけりゃ……ね。何がどうなってるかなんて誰にもわかりゃしないわ」

 実際、自分が現場を離れたあと、何が起こったのかは誰にも…、いや敵の方はその時点でまだ大型艦が無事だったのだから、ある程度はわかるかも知れないが、現場にいなかった自分たちには何もわかりはしないのだ。

「粉々って…、お前…」

「そういう可能性もあるってことよ。だからあなたと来たのよ」

 どうなっているかわからないからこそ、姉弟達は連れて来れなかった。かといって一人でその現場に乗り込む勇気もなかった。だからこそカールを…カールだけを連れて来たのだ。遠いあの日を知っている彼だからこそ。カールの方もわかっている。最悪の事態を予想していればこそ、他の誰でもない自分と来たのだということを、それを口にするのは踏ん切りをつける為だということを…、カールは承知していた。

「まっ遺体の捜索に来たわけじゃないからな。とにかく侵入者の有無のチェックだ」

 話を切り替える。結果として遺体を見つけることになったら、その時はその時である。手分けをして…と行きたいところだが、あちこち崩れかかっていて危険も多い。単独行動では倒壊に巻き込まれた時、助からない可能性があった。慎重に瓦礫の山を乗り越え、或いは回避し、先へ進む。見たところ侵入者の形跡はないし、貴重な(或いは重要な)データも残されていない様である。まあ侵入者の有無はともかく、データに関しては完全に崩れ落ちていて、確認できない部屋などもあるので、正確なところはわからない。ただ、確認できない程、崩れ落ちている部屋は誰も容易には侵入できないだろう。あるかどうかもわからないデータの為に、そこまでの危険を冒すとは思えない。エリナはどの部屋が誰の研究室か正確に把握しているが、他の研究員はそうでもない。まして敵にはその部屋が研究室なのかただの倉庫なのか、判別できないだろうと思われた。

「おい、エリナ、この奥」

 通路の一つを指差してカールがエリナに声を掛ける。その通路はすっかり崩れ落ちていて、とても通れそうにない。けれどこの先には…。

「ええ、総司令部だわ」

 だとすれば、父の遺体はこの奥だろうか。だが…これでは先には進めない。

「どうする?」

「あきらめるしかないわ。無理をして通る意味はないもの。総司令部に研究データはないから…」

 父の遺体の為に自分達の命を危険にさらす訳にはいかない。そんなことで命を落としたらそれこそ無駄死にというものだ。軍人として今、何を為すべきか、それを二人とも良く承知していた。

「仕方ねぇ…か。けど今をのがすと当分来れないぜ」

「却ってその方がいいかも知れないわ」

 骨になってしまえば、悲惨さも薄れるだろう。黒こげになっていたり、バラバラの肉片になっていたり…を見るよりは多分…。もちろん、そうじゃない可能性も残ってはいるが…。カールは慰めるようにエリナの肩をポンポンと叩いた。そのまま二人、黙ってそこを離れる。これ以上、何を言うことがあるのだろう。何を言っても慰めにも言い訳にもならない。そもそもどちらもそんなものを必要としていない。チェックしながらどんどん奥へ進む。

「この分じゃ、データの流出の可能性はなさそうだな」

「そうね。それに多分これからも無理だわ」

「引き返すか。下手すると崩れ落ちて来そうだし…」

「それが良さそうね。これ以上、危険を冒しても得ることはなさそうだし…」


 一方その頃、研究所の外では、マックが敵艦から何らかの情報が得られないか調べていた。

「メインのデータバンクは破壊されてるだろうが、乗員の個人データまでは手が回っていない筈だ。乗員の個室を調べろ」

 一つ一つの個室のデータまでチェックする様な時間はなかった筈だ。まめな奴が日記の一つも残している可能性はある。日記程詳しくなくても、スケジュール表の類なら、持っている者はもっと多くなる。それらに出発地や寄港地のデータがあるかも知れないのだ。プライバシーに関わることではあるが、今はそんなことを言っている時ではないし、必要なデータ以外については無視するのだから、プライバシーの侵害にはならない。軍人である以上、当然、守秘義務は承知している筈だし、そもそも今調査にあたっているのは元研究所員が大半で、軍人として認定される以前から守秘義務については良く承知していたのである。調査の過程で非常にプライベートな記述に行き当たったとしても、他言する事はない。まあ本人へぇーぐらいは思うかも知れないが…。

「おーい、そっちはどうだ。何かあったか?」

「スケジュール表はなかったが、面白いものがあったぜ」

「人のプライバシーなんざ覗くもんじゃないぜ」

「違う、違う、そんなんじゃないって」

「じゃ、何だよ」

「献立表だよ」

「献立ーっ!」

「そっ、見てみろよ。結構、いいもの食ってるぜ」

「へーえ、どれどれ、本当だ。あっちは物資が豊富なのかな」

「つうか、俺たちが緊急脱出で、充分な物資がなかったからだろ。今は結構普通だし…」

 あちこちで似たような会話が為されていた。献立表のほかにも音楽リストや書物リストなどが見つかっている。まあこっちは内容から持ち主の様子が垣間見えるという点で、プライバシーに近い物があるが、それ自体が誰か特定の人物を示すわけではないから、多少話題にしても問題はあるまい。例えば持ち主がミステリー好きだとか、ロック好きだとかわかったところで、そんな人間は世の中に掃いて捨てる程いるのだ。まあ中にはものすごく妙なものがあったりもするのだが…。そもそもこの手のものは娯楽として個人が持ち込むものであるが、例えば、銀河における知的生命体の種族についての本を、戦闘の合間に読みたがる人間というのは一体どんな奴なのだろう。この戦艦はその構造を見る限り、二足歩行のヒューマノイドタイプの種族用であるから、本を持っていたのも当然ヒューマノイドであろう。もしかすると学者を目指していたのかも知れない。それでもこの手の本は戦闘の合間に読むにはちょっと重い気がする。まあ人それぞれということだな。それはともかく、スケジュール表っぽいのはいくつか見つかった。取り敢えず必要そうなデータを記録する。あとですべて突き合わせて分析するためである。


 研究所の調査から戻ったエリナたちと合流したマックたちは、互いの情報を交換しあい、ここでこれ以上得るものはないと判断して、艦に戻ることにした。市街地で被害状況を調査しているグループに出会う。病院船での調査でもわかってはいたことだが、市街地における一般市民の被害者はやはり0だった。敵が来る前にシェルターに退避し、市街地に爆撃が行われる前に研究所へ逃げ込むことができたからだろう。あの時のエリナとリチャードの判断が彼らを救ったと言えるかも知れない。最初にシェルターのシールドの弱さに思い至ったのはこの二人だったのだから…。そして、その後のランドルフ博士を筆頭とする研究所の軍人の迅速な行動が、被害の拡大を防いだのである。一方、軍の施設の方はかなり悲惨な状況だった様だ。病院船も遺体の収容までは手が回らなかったのだろう。偵察衛星の情報によれば、敵大型艦がワズを離れるのとほぼ同時に病院船がワズに入ったことになっている。もしかしたらワズ上空で互いにすれ違ったのかも知れない。病院船のスタッフと直接会ったわけではないので、この辺りはただの推測に過ぎないが。

 病院船は軍の施設からかろうじて何名かを助け出した。瓦礫に埋もれていたり、脱出時に意識がなくて、取り残された者達である。重傷者はいない。多分、間に合わなかったのだ、生きているうちに助け出すのには…。まあ今となっては、どの遺体がそうなのか判別するのは難しい。即死でなかったとしても、どの時点まで生存していたか…は解剖でもしてみないとわからないだろう。そして今更それを知ったところで、結局は虚しいだけである。世の中には知らない方が良いことも沢山あるのだ。


 艦に戻ってデータの分析を行う。と同時に艦はワズを離れ、ゆっくりと敵陣へ向かう。ワズの周囲に設置された偵察衛星のチェックの為である。敵の動きを少しずつ逆にたどる。メインコンピュータールームでは、その間も絶え間なくデータの分析を行っていた。

「向こうの偵察衛星の位置はわかっているのか?」

「一応はね。ただ必ずしも最新のデータとは言えないから、100%じゃないわよ」

「それは…まあ、お互い様だろう。気付かれずに潜入できるか?」

「微妙ね。最新のステルスシステムは搭載してるけどね。実績はないわ」

「やってみるしかないってわけか…」

「まあ侵入を感知したところで、こちらが一隻ならすぐに攻撃はして来ないと思うわ」

「どういうこと?」

 ミックとエリナのやり取りを聞いていたサラが口を挟む。

「何が目的かわからないでしょ? 囮かも知れないわけだし…」

「向こうも様子見ってこと?」

「そういうこと。少なくとも私ならそうするわ。基地近くまで来ない限り、さほど危険はないわけだし…」

 エリナは時々こうして軍人としての物の見方を艦橋メンバーに伝える。およそ半数が軍人になったばかりと承知しているからだ。言わなくてもいいこともきちんと説明する。実戦と理論を同時に学ばせようとしている。それが生き延びるための有効な手段だからだ。

「ということは、敵の動きがないからといって、こっちに感づいていないとは言えないってことね」

「まあね。こっちの動きのチェックはしてるでしょうけどね。そこまで神経使ってたら前線じゃもたないわ」

 そうでなくても戦場というところは神経をすり減らす場所なのだ。敵の動きを知ることは重要だが、状況も考えず、無闇に攻撃を仕掛けることはいたずらに己れの恐怖心を煽りたてるだけである。戦場でパニックになるということは即、死につながる。とは言え、経験の浅いもの程、そうなりがちではあるのだが…。それはともかく、ファルコンは一応この辺りが双方の境界線と覚しき辺りを越え、敵陣へと切り込んだのだった。

 切り目が悪く二話に分けられませんでした。第七章はちょっと短めでしたが、いかがでしたか?


 最近、更新のペースが落ちていて申し訳ないです。しばらくはこのペースが続くと思いますが、気長に待っていただければ嬉しいです。


入力 2012年10月24日

校正 2013年6月25日


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