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第六章 (2)

 ようやく地区本部基地に辿り着きましたが、何やら不穏な動きが…。


自 2011年7月19日

至 2011年7月19日


一部追加 2012年3月28日


 地区本部基地に着いたファルコンの艦橋に基地司令のマーガス大佐が訪れた。

「マルコフ艦長、ご苦労だった。無事、新造艦を地区本部まで届けてもらったことを感謝する」

 マルコフとマーガスは握手を交わした。だがこの物言いはちょっと引っかかる。届けて…ということはここにいる全員が、只の輸送要員の様な言い方である。

「つきましては、ここで皆さんの任を解き、一度基地の方へ移って頂く」

「それはどういうことですかな」

 マルコフが聞き返す。全員の任を解くというのは穏やかではない。

「運用メンバーには多数の民間人が入っていると聞いている。前線基地で認められたのは暫定的な処置ということではなかったのか?」

「ちょっと待って下さい。だとしても私たちは元々ファルコンの要員としてワズに赴きました。その我々の任も解くというのですか?」

 ミックが口を挟む。上層部が何を考えているのかは判らないが、命をかけて戦って来たのにこの仕打ちはあんまりである。他のメンバーも大佐に険しい目を向ける。

「軍本部からの指示だ。今後のファルコンの乗員に関してはこの後の会議で決定されることになっている」

「それはこのまま我々が任を解かれたままになる可能性もあるということですか?」

「何とも言えない。私は軍本部からの指示を伝えているだけなのでな」

「伝えているだけって。今まで二度の戦闘を乗り切った我々の立場は!?」

 ショウやエドナーもミックに続いて声を荒げる。

「黙りたまえ! これは軍本部の決定だ! お前たちは軍法会議にかけられたいのか!」

 詰め寄る艦橋メンバーに対して、マーガス大佐が一喝する。みんな押し黙った。誰だって軍法会議にはかけられたくない。だが、ではこの煮えくり返る怒りはどこにぶつけたらいいのだろう。

「マーガス司令、一つ確認させていただきたいのですが」

 それまで黙って様子を見ていたエリナが口を開く。

「はっ、何でありましょうか、エリナ中将殿。この決定に関してでしたら、例え中将のお言葉でもくつがえせませんが…」

 流石にエリナに対して強面で対応はできないようだ。中将相手に命令口調を使う程、命知らずではない。

「いえ、そうではなく。本部の決定は私の提出した報告書を見た上でのことかどうかを確認したいのです。その点について司令は何か聞いておられますか?」

「はっ、詳しくはわかりませんが、エリナ中将殿の報告書も参考にしたと聞いております。その件に関しましては、本部から派遣されて来た幹部の方に直接お聞きになった方がよろしいかと存じます。会議にはエリナ中将殿にもご参加頂きたいとのことでしたので…」

「そうですか…。わかりました。マルコフ艦長、この場は決定に従うしかないようです。我々一同、一旦船を降りましょう」

 マルコフを振り返ってエリナはそう告げる。マルコフはうなずいた。この場で争うのは得策ではない。それはいたづらに事態を紛糾させるだけであろう。渋々とではあったが、ミックたちもうなずく。

「マーガス司令、艦内の各部署のメンバーたちには私たちから説明させて下さい。その方がトラブルは少ないと思います。あと、それ以外の民間人についてはどうなりますか?」

「わかった、その様に手配しよう。あと民間人に関しても当分は基地内で生活してもらうことになる」

「機密の問題ですね」

「そうだ。どれぐらいの期間になるのかはまだはっきりしない」

「それは致し方ないと思います。では民間人の方の移動を先にお願いします」

「うむ、ではあとはよろしく頼む。失礼する」

 マーガス大佐は一礼をして、艦橋を出て行った。艦橋の扉が閉まり、声が聞こえなくなったのを確認してミックはマルコフ艦長に向き直る。

「艦長、このままでいいんですか? 俺は納得できませんっ!」

 マルコフにどなってもしょうがないのだが、怒りの矛先を持っていく場所が他になく、つい声を荒げてしまう。いずれファルコンを預かることになると思えばこそ、いろいろと努力して来たのである。ここで降ろされてしまったら、すべてが無に帰してしまう。それはどうしても嫌だった。

「軍本部の決定に逆らうわけにはいくまい? 軍にいる以上、本部の決定は絶対だ」

「それは…その通りですが…」

「まだ私たちがこの船を預かれないと決まった訳ではないわ。乗員に関してはこの後の会議で決定されるって、基地司令が言ってたでしょ。私にも参加しろと言っていたし、呼ばれた以上、できるだけのことはしてくるわ。だからここは皆、怒りを納めて冷静になって」

 エリナがみんなを見渡して口を開く。確かにまだすべてが確定した訳ではないのだ。できるだけのことをするというエリナの言葉に皆一様にホッとした表情を浮かべる。

「さあて、自分の部下に説明しに行かなくちゃ」

 エリナはそう言って部屋を出て行く。既に技術部のメンバーはサブブリッジに集まっている。他のメンバーもそれぞれ動き出した。艦橋にはベンとエル、サラとミック、そしてマルコフの五人が残っている。サラはエリナの出て行くところを不安げに見つめていた。ミックがその視線に気づき、声を掛ける。

「何か気になることでもあるのか、サラ」

「えっ…うん、エリナがね。無理をしないといいんだけどって…」

「出来るだけの事をするって言ったからかい?」

「ええ、あの娘、人の為だととんでもない無茶をしかねないから…」

 いつだって自分の事は後回しで、他人の為に駆けずり回っちゃうのがエリナなのだ。

「まあ確かに一番貧乏くじを引いてそうだけど、軍の上層部相手じゃ無茶もできないんじゃないか?」

 知り合ってまだ日が浅いとは言え、一番危険な仕事に率先して出向いていくところなどは、まさにそんな感じである。とは言え、エリナも馬鹿ではない。頭の堅い軍本部相手に真っ向から喧嘩を売るような真似はしないだろう。


 艦を降りた一行はそのまま基地内の宿舎に入った。乗船していた民間人も含めて、皆軍事機密に関わったとして、基地の外に出ることは認められておらず、と言って基地内をうろつくのもまた禁じられている為(それはそうだろう、ここの基地にはここの基地の機密というものがある)、それぞれ与えられた宿舎内にたむろするしかなかった。宿舎はほぼ部署ごとに分かれており、更にチームの結束を固めることになっていた。艦橋メンバーは大抵一緒に行動していたが、各部署のリーダー達は時々、自分達の部署のメンバー達のところへ顔を出していた。

 エリナは会議が始まる前に一度、軍本部から派遣されて来た幹部とやらに会いに出掛け、軍上層部の意向を事前に確認して来た。それによると、ファルコンの乗員については、軍の上層部でももめている様で、情勢はまだまだ流動的だとのことだった。軍本部の意向にも相反する二通りのものがあり、それをもとにこれから会議を開くのだという。

 会議には軍本部から派遣された幹部二名とファルコン側からマルコフ少佐とエリナ中将とが参加し、双方の橋渡し役として基地司令と副司令も参加することになっている。マルコフ少佐はファルコンの指揮を執った立場から実務面でのオブザーバーとして、またエリナ中将は開発責任者としての立場から技術面でのオブザーバーとして、発言を求められることになる様だった。本来の開発責任者のランドルフ中将の死に伴い、その重責はエリナに移っていたのだ。


「失礼します。エリナ・ランドルフです。今、お時間よろしいでしょうか?」

 本部から派遣された幹部二人の宿舎をエリナは訪ねていた。室内に招き入れられる前まではかしこまった態度を崩さず、また幹部たちも軍人らしくそれに応対していた。

「お久しぶりです。ご無事で何よりです」

「この度は我々の力が及ばず、ご苦労をおかけしました」

「階級が下とは言え、年長者に敬語を使われるとくすぐったいわ。私たちしかいないのだし、口調、変えてもらえないかしら?」

「そうだな。しかし、本当に良くも無事で…」

「せめて一体でも護衛艦をつけてやれれば良かったんだが、上の連中が渋ってな」

「気にしないで、どうせそんなとこだとは思ってたし、何とかなったんだからもういいわよ」

「良くはないだろう。それにしても相変わらず見事だな。半数以上が素人の集団を率いて連戦連勝なんだから」

「上は新造艦のせいだと思ってる様だが…いくら船の性能が良くたって、指揮を執る人間がボンクラじゃ何にもならん。あいつらはそこんとこがわかっちゃいない」

「まあ、今更言ってもねぇ。しょうがないことだし。それよりファルコンを私たちに任せられる様に出来る?」

「一応、そのセンの意見もある。もう一つは全員入れ替えだな。こっちの方が主流なんだが、本部の実力者がお前さんたちを買っているので、少数派といえども無視も出来ず、二案を提示することになってる」

「話の持って行きようでは、どうにか出来るってことね」

「まあそうだな。俺達二人、協力は惜しまないぜ。ここの司令達は役に立ちそうもないからな」

「地区本部司令は主流派ってこと?」

「長いものに巻かれろ派ってことだよ」

「成程、じゃあ作戦立てなきゃだわね」

 三人でヒソヒソと打ち合わせを済ます。仕掛けは会議の三日目ということになった。



 追加部分は最後の幹部たちとの会話部分です。


 エリナと幹部二人は何やら企んでいるようですが、果たしてうまく行くでしょうか? そしてまた何も知らないファルコンのメンバー達はどうするのでしょうか? 乞うご期待!


入力 2012年8月9日

校正 2013年5月14日


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