第六章 (1)
いよいよ戦闘場面〈シーン〉です。つたないところは勘弁してください。三次元のバトルは難しいです。そもそも戦闘場面は得意ではないので雰囲気が伝われば良いと言うことで許してくださいね。
あっ、でもこうしたらいいと言う指摘があれば直したいです。
自 2011年7月10日
至 2011年7月15日
一部 2012年3月28日
結局、次の補給基地に着くまで敵艦隊とは遭遇しなかった。いや、敵の動きを見る限り、基地の手前でこちらに気づいたが、基地からの援軍を恐れて迂回したっぽかった。ということは、おそらく基地から程良く離れたところで、襲撃してくるだろうと思われた。そしてその技術部の推測通りの位置で敵と出くわしたのである。それは補給基地と地区本部基地とのほぼ中間点辺り、どちらからも援軍を送りにくい位置だった。
「見事に予想通りの位置で現れたな。流石だ」
マルコフ艦長がエリナの手腕に溜息をもらす。それは状況の分析だけではなく、相手の心理状態にまで踏み込んだ上での判断だったことを知っていたからだ。いわゆる制服組の軍人であっても、ここまでの判断の出来る人間は少ない。実戦経験が少ないものにこの判断を下すことはできないだろうが、かといって実戦経験が豊富であれば誰でも出来るという訳でもない。実際マルコフ自身、エリナより遥かに実戦経験はあるが、ここまで正確に敵の出現位置を予測することはできないと思う。もちろんマルコフも大体この辺りで敵と会うだろうとは思っていたが、あくまでもこの辺りというレベルでしかなかったのである。
「総員、第一級戦闘配置!」
溜息をついているマルコフ艦長の脇で、ミックが艦橋のメンバーに指示を飛ばす。戦闘時の指揮はやはりミックが執る様である。
「イーグルチーム、出撃準備!」
「主砲、照準敵艦隊! 副砲、イーグルチームの援護準備!」
「メインエンジン停止。サブエンジンへの回路開け!」
「艦全体にシールド! 非戦闘員は食堂へ退避!」
各部署のリーダーたちがそれぞれの部署へ矢継ぎ早に指示を出す。
「リオ、地区本部及び補給基地、双方へ援軍の依頼を打電!」
この艦一体だけで大型艦一体、中型艦二体は荷が重い。援軍が来るまで持ち堪えられるかどうかさえわからない。とは言え、みんなこんなところで死んでしまうつもりはさらさら無かったが…。
「全方位レーダー作動。援軍の動きを探れ!」
どちらから援軍が来るかによって、艦の動きも決まる。護衛艦をつける気がなかったとは言え、こうして正式に出された援軍依頼は流石に無視する訳にはいくまい。記録に依頼されたことが残っているのに、援軍を出さなかったなどということになれば、それは充分、軍法会議ものである。正式な依頼に応えられないことがあれば、それは軍そのものの信用問題になる。それは軍に入ろうとするものの意欲を削ぐ事になるのだ。だって窮地に追い込まれた時、誰も助けに来てくれないということは死ねと言われる事に等しい。そんな戦場に誰が行きたいものか。軍に入る以上、ある程度、死を覚悟はするが、死ぬために軍に入るわけではないのだ。助かる命まで捨てさせられるのはごめんである。
敵は中型艦二体を前面に出し、大型艦をやや下がった位置に置いている。中型艦から艦載機が射出されるのに伴い、こちらもイーグルチームを出撃させた。双方まだにらみ合ったまま動きはまだない。それを見やってからミックはエリナに視線を送る。
「どう思う、エリナ?」
「後ろの大型艦の動きが気になるわ。前の中型艦二体はこちらの砲とイーグルチームとで何とかなると思うけど…」
データをチェックしながらエリナが答える。その目の前でどちらが火蓋を切ったのか判らないが、艦載機同士のドッグファイトが始まった。
「援軍が来るまで後ろの大型艦も牽制した方がいいと思うわ。ショウ、あなた確か小型戦闘艇のバトル戦績はAA級〈クラス〉よね。リチャードと私も出るから手を貸してくれない?」
「ちょっと待て! たった三機で大型艦に向かうってのか?」
ミックが声を荒げる。いくら何でもそれは無茶だ。
「敵を倒すわけじゃないわ。あくまでも動きを封じるための牽制よ。私もリチャードもバトル戦績は特SS級〈クラス〉よ。そう簡単にやられたりはしないわ。他に手はないし…だから許可を…」
確かに今、大型艦に突っ込んでこられたら勝目はない。艦長の方を振り仰ぐ。それへマルコフはうなずいて見せた。
「わかった。じゃあ頼む」
「デビー、艦橋に上がって私の代わりにここの指揮を執って」
エリナはサブブリッジに呼びかける。それからカールの方へ向き直った。
「カール、デビーの補佐、お願いね。じゃ、行ってくるわ」
そう後の事を頼み、ショウとともに格納庫へ向かう。入れかわりにデビーが艦橋に上がって来た。
「失礼します。部長の代わりがどこまで務まるか判りませんが、よろしくお願いします」
ミックとマルコフの方を向き、そうあいさつすると、パネルの方に向き直った。エリナ姉さんの代わりがちゃんと務まるのか不安はある。けど、任された以上、出来るだけのことはする。やれてもやれなくてもやるしかないのだ。
「大型艦の動きに注意しとけ。中型艦の方は戦闘班に任せておけばいい」
カールがデビーに助言する。それへうなずき返し、モニターに注目する。大型艦に向けて三本の航跡が伸びて行くのがわかる。
格納庫へ走ったショウとエリナはそれぞれに空いている機に乗り込み、艦外へと出た。
「リチャード、私とショウと一緒に来て。大型艦を牽制するわ。バーディ、リチャードを借りてくわよ。そっちは任せるから」
三機は最高速で激しいドッグファイトの合間を縫って後方へと向かう。あのスピードで見事に双方のレーザービームの雨を交わしていくのはすごいと艦橋から彼らの様子を見ながらミックは思う。確かに彼らを倒すのは並みの腕では無理だろう。だが無論、すごいと思ったのはミックだけではない。すぐ脇をまさに一陣の風が疾風〈はやて〉の様に通り過ぎて行ったドッグファイト中の戦闘機乗りたちは敵も味方も目を見張ったのだ。その風は本当に一瞬のうちに通り過ぎてしまったのだったが、それでもそれが戦闘機だとは誰もが認識はした。が、その目で見ても尚、信じられなかったのだ。味方の機も敵の機も飛び交うレーザービームもすべて交わしながら尚、あのスピードで突っ切っていくその手腕が…。
「すげ、良く当たらねえよな」
「つうか、あのスピードで良く交わせるよな」
オットーたちが通信しあう脇で、バーディはまさに呆けていた。言葉すら出なかったのだ。確かに姉貴は只者〈ただもん〉じゃないとは思っていたけどさ、ここまで凄いとは…。
三機はそのまま敵大型艦に突っ込み、攻撃を加える。次の瞬間さっと身を翻して砲の射程外へと逃げる。そしてまた砲の向きを確認し、別方向から猛スピードでまた突っ込み、攻撃を仕掛け、敵が攻撃体制を整える前にまたさっと射程外へと身を翻す。この時、三機はそれぞれ別方向から飛来し、また別方向へと逃げる為、敵も砲の照準を合わせられない。勢い、じりっじりっと後退する羽目になってしまう。無論この程度の攻撃では艦体そのものに致命的な損傷を与えることはできないが、だからといって手をこまねいている訳にもいかない。だが既に副砲のいくつかは沈黙していた。といって、今、艦載機を出しても、いたずらに被害を増大させるだけであろう。何より彼らの腕は並ではない。艦体そのものへの攻撃だからこそ、致命的でないわけで、艦載機ではあっという間にやられてしまうに違いなかった。
もっともエリナたちもこうした戦い方が長続きするとは思っていない。とにかく援軍が来るまで、敵大型艦の動きを封じて置きたいだけなのである。
「エリナ中将、テラ少尉、ヤング中尉、本部基地からの援軍が来る。撤退せよ」
ミックからの指示が届き、三人は再びドッグファイト中のイーグルチームの脇をすり抜けて、ファルコンへ帰還した。本来ならリチャードはそのままイーグルチームに合流すべきだが、既に燃料も弾も尽きかけている。このまま合流しても大して役には立たないし、援軍が来た以上、無理をする必要もない。リチャードはそのまま格納庫に残り、一方エリナとショウは艦橋へと駆け上がる。体力の差でショウの方が先に艦橋に飛び込んだ。援軍の状況を確認する。
「よし、イーグルチーム、全機撤退!」
援軍の艦載機が射出されるのに合わせて、撤退命令を出す。そこへエリナも飛び込んで来た。
「デビー、サブブリッジへ戻って」
デビーと交代し、パネルを確認する。援軍は大型艦一体と中型艦一体、これなら任せても大丈夫だろう。既に敵戦力の何割かはこちらで叩いたのだ。ミックに振り向き、OKのサインを出す。
「では、後は援軍に任せて我々は撤退する。全速で地区本部へ向かえ」
「了解〈ラジャー〉、メインエンジン点火」
「エネルギー出力値100%。ファルコン、全速で地区本部へ向かいます」
ファルコンは戦線を離脱し、地区本部基地へと向かう。戦力の差はかなり大きかったと見られるが、流石に新造艦だけのことはある。とにもかくにも全員無事に戦線を離脱することができたのだ。無論、機体にも艦載機にも破損箇所はある。それでも今回も死者は出なかったのだ。これは凄いことである。
凄いと言えば、敵大型艦に向かった三機もそうだ。あの状況でまったくの無傷で帰還できたということは彼ら三人の技術力の高さを物語っている。特SS級〈クラス〉のエリナやリチャードはもちろん、ショウもこれを見るかぎり、AA級〈クラス〉どころかSS級〈クラス〉でも充分通用するだろう。――実際、この時の戦闘データをチェックした後、ショウのバトル戦績はSS級〈クラス〉に上がったのだ――
まもなく地区本部基地に辿り着きます。これからどうなるのか。
入力 2012年8月5日




