【遼太朗】
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・【遼太朗】
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十月上旬ながら今日は暑い日だ。
本当はオープンなカフェでお話をする予定だったんだけども、直前で室内のカフェに変更になった。
先に着いて、ドキドキしながら待っていると、僕を見るなり近付いてくる一人の男性がいた。
「うわ、マジでTwoCooLのベイルさんだ……あ、俺、長谷川ブックスの長谷川遼太朗です。普段は書店員やってます、って、あのご存知ですよねっ、すみません……」
物腰柔らかく、頭を何度もさげながら僕の対面の席に座った遼太朗さん。
僕は一旦立ち上がって、
「TwoCooLのベイルです。よろしくお願い致します」
と頭をさげると、遼太朗さんは「いやいやいや」とラジオの時と同じ声を出してから、
「とりま座りましょう」
と言ったので、僕も改めて座って、とりあえずコーヒーを頼むと、遼太朗さんはクリームソーダを選択した。
僕は何かカッコつけてコーヒー頼んじゃったなと思っていると、遼太朗さんは、
「何か、子供っぽくてすみません。圭みたいですよね」
僕がすぐさま、
「いや遼太朗さんがクリームソーダって言った瞬間からもうクリームソーダの口ですよ」
と言ってみると、遼太朗さんが小声で、
「コーヒー」
と言ったので、僕はすかさず、
「いやこれでコーヒーの口になってくれ……じゃないんですよっ」
と、ついお笑い芸人仲間と喋る時みたいにツッコんでしまうと、遼太朗さんが驚きながら、
「おもろっ、やっぱおもろっ、拾ってくれる」
と言って、めっちゃ嬉しかった。
そもそも僕が長谷川ブックスのラジオのファンだから、って伝えておくと、遼太朗さんは「いやーマジかー」と独り言のように呟いた。
軽く雑談から入って、良い滑り出しだと思ったところで遼太朗さんがこう言った。
「そう言えばあの本棚のことなんですけども」
と切り出してきて、僕は背筋がピンとした。
まさかここで文句を言われるか? と身構えていると、
「何か良いアイデア無いですかね、何かマンネリというかみんな結構考えている子もいて。勿論最高のやりがいだ! ばりに楽しんでる子や、まあ俺もどちらかと言うとそのクチなんですけども、何か派手なことしたいじゃないですか」
何か……気を遣われているというか、それとも遠回しに文句を言っているのか、もうハッキリ言うことにした。
「すみません、僕が変なアイデア言ったばっかりに仕事が増えてしまったみたいで……迷惑を掛けてしまい、申し訳御座いませんでした……」
遼太朗さんはキョトンとしてから、
「え、あの……めっちゃ嬉しかったですし、全然迷惑じゃないですよっ、何か勘違いさせてしまいましたかね、その直後のラジオで……あの、これマジなんですけども全然有難いです。本屋自体の売り上げも伸びていますし、俺給料あがりました」
僕はおそるおそる、
「本当に、あの、そんなんなんですかっ」
遼太朗さんは頷いてから、
「本屋の売り上げが伸びているんで、変な残業も少なくなって、ライブとか見られるようになってます。お金もあるし」
あぁ、そうだったんだ……僕としてはずっと大きな問題として、大きな申し訳無いとして抱えていたけども、本人からしたらこんな感じだったんだ。
なんとなく力が抜けてしまうと、遼太朗さんが、
「noteでそのくだり削除していたせいですかね? あれは翔也の判断で、まあ、なんというか、帰省したら翔也のこと普通に殴っておきますねっ」
と明るく笑顔で言った。
いやいや、
「全然! 全然もう分かれば大丈夫なんで!」
「いやー! 翔也のミス! これから新潟に一緒に行って殴りに行きます?」
「行かなくて大丈夫です!」
ちょっと間があってから、遼太朗さんが、
「で、本題なんですけども、面白いアイデアとかないですかね」
僕はふと浮かんだので、
「じゃあ翔也さんの地元で売れている本、つまり田舎で売れている本のコーナーにして、タイトルも凝って”ワープ本棚”として、売り出してみたらどうですか? さっき、マンネリで結構考えている子がいるって言っていたと思うんですけども、そういう子は例えば自分の地元とか、地元じゃなくても地方で流行っている本を置いてもいいと思うんです。その地方の本屋さんごとに売れている本とか集計しているじゃないですか」
遼太朗さんは興味深そうに前のめりになってくれている。
僕は続ける。
「あえて田舎感を押し出して、売れてはいないのに野草の本とかも置く演出とかあってもいいですし。愛媛で流行っている本のコーナーを作るとしたら、みかんの本とかわざと置くみたいな」
遼太朗さんは深く息を出してから、
「ベイルさん、天才ですね。それめっちゃ良いです。じゃあマンネリで考えている子とか、一旦それにしておくのも面白いかもしれませんね」
何かウケているようで良かった。完全に思いつきだったけども。
すると遼太朗さんが間を少し置いてから、
「実はですね、全然違う話なんですけども、配信ラジオを一部動画化したいなぁって思っているんですよ。これも俺らのマネタイズの一環なんですけども」
僕は相槌を打つように、
「いいですね、そういうのはどんどんやっていったほうがいいと思いますよ」
「で、TwoCooLは芸人さん方面にツテあるじゃないですか、だから編集作業とかできる人を紹介してくれませんかね……急にすみません、図々しくて」
編集作業のできる人……ちなみに僕はできない。でもできたらすごくいいんじゃないか。
それも長谷川ブックスに関われるなら、すごく嬉しい。
ここは勇気を出して言ってみるしかない。何故なら今は流れがすごく良いから。
「僕、全然編集作業したことないんですけども、勉強ちゃんとするんで、僕がやってみていいですか……ね?」
「めっちゃ恐れ多い!」
とデカい声を出した遼太朗さん。
いやでも、
「僕はリスナーとして長谷川ブックスの勘所が分かっているつもりですし、その、なんというか、僕、実はほぼ無職で、バイトとかしないで、ハイシーの主夫みたいな状態なんです。だから家でできる仕事がほしいなと思っていて」
人に言うことは正直憚れるような内容だけども、遼太朗さんならと思って言ってみることにした。
すると遼太朗さんは「なるほど」と言ってから、
「めっちゃ嬉しいです。これほど良いことは無いです。マジでよろしくお願い致します」
そう言って深々と頭をさげた遼太朗さんに僕は、
「いやいや、仕事していないんでっ」
と言うと、遼太朗さんは、
「そもそも漫才が仕事ですし。まあとにかくベイルさんにやってもらえるならそれが本当に良いんですけども、収益化するまではお金払えませんよ? いや払いますけども。そりゃ払うわ、払う払う」
とまるで一人二役のように言ったので、
「今、透明な人形で腹話術してます?」
とツッコんでみると、遼太朗さんは吹き出してから、
「いや払うって話です! 透明な人形こさえてないです!」
と言った。
その後も普通に雑談をして、僕が無職みたいなことを言っても何も気にしている様子は無かった。
結局、圭も無職で無職耐性があるということなんだろうか。まあ何でもいいや。
僕と遼太朗さんは改めてDMでやり取りしたり、時にはリモート打ち合わせをして、親交と仕事を深めていった。
僕が編集した動画の第一弾として、長谷川ブックスのトークを『ベイル・セレクション』といった感じで打ち出した。
このベイル・セレクションの肝としては、僕はあえて配信ラジオに参加しないということだ。
リスナー目線でセレクションを作るということにするため、長谷川ブックスのラジオのゲストとして僕が出るということは基本的に辞めることにした。
そうすることにより、長谷川ブックス三人の自画自賛感を無くす狙いがある。ワンクッション置いているというか、他者の目があるみたいな感じのほうがリスナーの心に染みやすいかな、と。
ベイル・セレクションという案は即採用になったところで、企画も出したいという話になっていった。
そこで僕はビブリオバトルのバトル抜きで、全ての本にリスペクトある感じで紹介していくという案を出した。
それだけだと普通なので、あえて翔也さんは選ぶ本から田舎感を出してもらい、遼太朗さんには都会感のある本を紹介してもらうことにした。
その田舎感とか都会感とか分かりづらいけども、そこはまあなんとなくで、そもそも翔也さんはスローライフ系の異世界転生やほのぼの系にライト文芸が好きで、遼太朗さんは最先端のキレキレなエンターテイメント小説が好きだったので、そこを強調する形にしてもらうことにした。
また、圭さんにはネット発でもいいからオススメの漫画を紹介してもらうことになった。圭さんは毎日無料のネット漫画やSNS漫画を読んでいるので。
ジャンルは結構この三人だけでも網羅できているような気がする。圭さんにも役目を持ってもらうことに対して、一番喜んだのが翔也さんだった。
リモート打ち合わせでは、
「圭にも何かやらせるの本当に良い! そうだよね! SNS漫画とかの紹介とかも面白そうだもんね!」
翔也さんは圭のことが本当に好きなんだなぁ、と思って、何だかほっこりした。
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・【ハイシーのBL売り】
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相変わらずBL売りをしているハイシー。
最近は民放の深夜番組に結構出ていて、何だか女性タレントからモテている様子。
勿論台本もあるだろうけども、だとしたらちょっとハイシーにべったりというか、
「イケメンでちょっと面白くて、ちょうどいい!」
と売れている女性芸人さんからも、かなり好評みたいだ。
ちなみにこの”ちょっと面白くて”ぐらいが本当にちょうど良いらしい。
こっちのセンスに気付かないくらい面白くないヤツは嫌だけども、面白過ぎても彼氏としては変なところ嫉妬してしまう、と。
気の利いた返しとそこそこのワードセンスが重要らしい。実際ハイシーはフリートークも面白いと思うので、ちょっと評価が低いくらいには思ってしまうけども、まあそのちょっと面白くてが本当に好まれているみたいだ。
まあでも、女性芸人さんの言うちょっと面白くて、って実際のところ、結構ハードル高いだろうし、一般の中に入ったらやっぱりハイシーはめっちゃ面白いなんだと思っている。
そんなモテているハイシーに僕は自宅でちょっと言ってみることにした。
「何かハイシー、テレビでもモテているからさ、僕邪魔だったら全然すぐに一人暮らしするからね」
ハイシーはキョトンとした顔をしたのち、ハハッと笑ってから、
「テレビのあういうのは全部社交辞令だから! 辞令だから!」
「辞令ではないでしょ。でも本当に何かみんなメロいって感じの目をしているよ」
「メロいってそんな! メロンの早食いじゃないんだから!」
「メロンの早食いに恋する女性なんていないよ」
正直ハイシーはいつも明るい。だからこそ何か我慢してしまっているのでは、と考えてしまって。
僕はちゃんと本心を引き出したくて、
「いやだって面白い人とか可愛い子と付き合えたらハイシーも嬉しいんじゃないの? ハイシーは仲良くなった子と付き合いたいでしょ?」
「ほら、アイドルって恋愛NGだからさ! ドヤァ!」
「ドヤァって口で言うことじゃないよ、でも裏では大体付き合ってんでしょ?」
「そうそう、酒井も付き合ってるよ、女性アイドルと」
それ、さらりと言っていいことだったのかどうか分からないけども、
「じゃあハイシーだっていいんじゃないの?」
「いや俺は女性とかいいよ、別に」
と何だか少し不機嫌そうになってきたハイシー。
そんなにアイドルとしての自分に一生懸命なんだなぁ、と思ったその時だった。
「俺さ、正直女性って苦手なんだよねっ」
と自嘲気味に笑ったハイシー。
そんな話聞いたことなかったので……いや、長文LINEの時に性別にこだわらない的なことを書いていたか、でも、
「そうだったの? いやでも昔からモテていたじゃん。女子とも普通に話していたし」
ハイシーはちょっと困惑した面持ちで「あー、まねー」と後ろ頭を掻いた。
僕はその辺をちょっと突っ込んで聞きたくなって、
「実際ハイシーのこと良いと言っているクラスメイトの女子もいたよ」
「まあでも……ゴメン、ちょっとベイルをさげる話になるかもだけど」
急に矛先がこっちへ向いてきて、ビックリしたけども、ハイシーが僕を直接傷つけたいというニュアンスではなかったので、
「うん、別に、エピソードがあるなら教えてよ」
と答えると、ハイシーは言いづらそうにこう言った。
「俺さ、中学時代に女子から『ベイルと喋ると格が落ちるよ』とか言われてさ。そこから女性が苦手なんだよね。だから俺はベイルと一緒にいるほうが楽しいし、ベイルのほうが好きなんだ。だから何か女性見ると、裏でそういうこと言ってくるかもとか思ってつらくなるんだ」
まさかそんなことを女子から言われていたとは。
あのイジメは僕だけが傷ついていたと思っていたけども、ハイシー側もつらいことがあったんだ……というより、それでも僕を選んでくれたことが本当に嬉しい。
話としては軽くディスられたような話だけども、中学時代なんて僕目線だともっと酷かったし、それ以上にハイシーの良いところというか信頼できるところが新たに見つかって、心が温まった。
今日の長谷川ブックスの配信ラジオはハイシーがゲストで一緒に喋ることになっている。
勿論僕はベイル・セレクションの件があるので、参加はしない。一緒に横で聞いているだけ。
遼太朗さんがデカい声で早速開始の声をあげる。
「長谷川ブックスの、長谷部ー!」
翔也さんが即座に、
「サッカーのっ?」
とツッコむと、遼太朗さんが、
「石橋イワシによるサッカーキングダムということで」
と言い、それに対して翔也さんは、
「知らんサッカー番組のタイトル言われても」
遼太朗さんは軽く無視するように、
「というわけで今日は特別ゲストが来てくれています」
すると圭さんが、
「来てはないだろ! 繋いでるだけだろ! 来てるのかよ! 来てるのかよ! なぁ!」
翔也さんが吹き出しながら、
「何で今日だけそんなねちっこいんだっ」
ハイシーが笑いながら、
「リスナーの皆様! 初めまして! ハイシーです!」
遼太朗さんが拍手の音を入れながら、
「というわけでなんと、めろえもBlueLight兼TwoCooLのハイシーさんがこのラジオに参加してくれています!」
翔也さんがすかさず、
「来るという言い方、ちゃんとしなくなった」
遼太朗さんが笑いながら、
「ありがとうネット回線というわけで、ハイシーさんは元々このラジオのリスナーということで」
ハイシーは頷きながら、
「そそっ、なぁ」
と言って僕のほうを見たので、僕は小声で、
「あの、僕は参加していないから」
その声がどうやら遼太朗さんには聞こえたみたいで、
「今の一瞬だけ音量あげていた皆様、今のがベイルさんの声です。というわけで、ハイシーさんとベイルさんは一緒に暮らしているんだよね」
と言ったところで圭さんが、
「BLかよ!」
と叫び、翔也さんが、
「まあ合ってると言えば合ってるけども、今の時代はシェアハウスとかあるからね! でもハイシーさんの売り出し方的に合ってはいるけどね!」
ハイシーは笑顔で、
「めっちゃBLやったりますよ、毎日相撲してるもんなぁ」
翔也さんが吹き出してから、
「歪んだBL観、観念のほうの観ね」
遼太朗さんは即座に、
「歪んではないだろ、BLと言ったら相撲だろ」
翔也さんはすかさず、
「何か、多分だけど古いよ、発想が昭和の上司だよ」
ハイシーもここで割って入って、
「昭和の上司によるサッカーキングダム始まりましたねー」
と言えば、遼太朗さんもそれに乗っかるように、
「やっぱり昭和の上司としましては、ワントップは昭和の上司に全て任せろ、なんだよなぁ」
翔也さんが笑いながら、
「昭和の上司の一人称、昭和の上司?」
とツッコんだ。
ハイシーは毅然とした声で、
「そうですよね、昭和の上司としましてはワントップの昭和の上司が全部やるから、あとは全員手下のように働けなんだよなぁ」
翔也さんがちょっと語気を強めて、
「昭和の上司二人体制のサッカー番組? 同じこと言うヤツ、二人いるなよ!」
遼太朗さんはすぐに、
「ワントップが一番強い、強いぞ、ワントップ」
と言えば、矢継ぎ早にハイシーが、
「ワントップのムキムキさが結果に直結する」
翔也さんが「ちょ! おーい!」とデカい声を出してから、
「中身の無いワントップ論いらないよ! せめて詳しい戦術言えよ! いや基本書店員のラジオだよ!」
遼太朗さんは「いやでもさ」と言ってから、
「このペースでボケ合うこと無いから楽しくなっちゃった」
ハイシーは嬉しそうに、
「光栄です」
と言ったところで圭さんが、
「コーエーテクモかよ!」
翔也さんが即座に、
「信長の野望つくってる会社の話はしていないよ!」
と言ったところで遼太朗さんが、
「信長をワントップにして、敵兵に突っ込みたいですね」
間髪入れずハイシーが、
「そうですね、信長に弓矢を集めたいですね」
翔也さんは素早く、
「大将は一番後ろなんだよ! 信長に弓矢を集めるって大量に刺さっていくだけじゃん!」
ハイシーが笑いながら、
「いやいや、弓矢は戦場に一本でしょ」
翔也さんが「いや!」と言ってから、
「サッカーボールみたいなことはない! 一本の矢を奪い合いながら攻め込むゲームじゃないよ!」
遼太朗さんは笑いながら、
「いやでもその弓矢には恋文が刺さっているとしたら?」
ハイシーが「そうそう」と言ってから、
「じゃあ奪い合うしかないですよねー」
翔也さんは「おい!」と叫んでから、
「恋文が刺さっていたら、渡したい相手に渡して終わりでしょ!」
遼太朗さんが少し呆れるように、
「正論じゃん」
と言えば、すぐにハイシーが、
「セイロンティー」
するとここで圭さんが、
「無いよ! そんなティーバック!」
翔也が今日一の声の大きさで、
「セイロンティーという紅茶が本当にあって! 今のはそれをかけた駄洒落!」
ハイシーはちゃんとラジオに馴染んでいるようで、安心した。
そんな感じの、本当に意味の無い掛け合いをずっとしていた。




