【ハイシーの画像】
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・【ハイシーの画像】
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相変わらず、タレント政治家の為田仁が生成AIを使って『収入の少ないヤツはSNSやるな』という動画を投稿している。
そんな攻撃判定を広くして一体どうしたいんだろうか。批判する領域を増やしているわけだから、賛成者も少しずつながら減っていくような気がするんだけども。
常に良い意味でも悪い意味でも燃えている感じがする。今の時代、バズることが若干悪いことにもなってきているけども、こういう表に出る人にとっては炎上も肥やしだ。
そのタレント政治家の動画で登場する男性が徐々に、というか結構本格的にハイシーに似てきているような気がする、と思ったのは三日前くらいで、今の動画は完全にハイシーだ。
唇の下にあるホクロの位置まで完璧にハイシーと一緒で。さすがにこれは酷いんじゃないかなと思っていると、何だかタイムラインが不穏になってきた。
あくまでこのタレント政治家が生成AIで作った動画のハイシーが『収入の少ないヤツはSNSやるな』と言っているだけなのに、ハイシーそのものがそう言ったみたいな話になってきているのだ。
僕のSNSアカウントにも、マジの忠告みたいに『ハイシーさんの危険思想を止めてください』とか『というかハイシーだって収入少ないんじゃないの? ダブスタになってない?』とか書き込む人が増えてきて、一応僕はそのことをハイシーに知らせるんだけども、ハイシーにだってそのことは制御不能で、
「で、俺、どうすればいいかな?」
と不安そうに僕へ言ってきた。
でも僕もどうすればいいか分からない。
ハイシーの事務所から事前に言われていたことがあり、それは僕のSNSアカウントにも極力画像は勿論音声も出すなという話だった。
何で生成AIでお楽しみくださいみたいな悪ノリをしているくせに、本当の画像はダメなんだよという話だが、それがまあ事務所が保有する権利だとか言っていて、従うしかないわけだけども、さすがにハイシーに『俺じゃないですよ』的なことは言わせたい。
そのことをハイシーから事務所に伝えてほしいと頼み、ハイシーが事務所にLINEしたんだけども、全然返信が返ってこない。
ハイシーは「じゃあ今日の現場でマネージャーに伝えるよ」と言って仕事に出掛けて行った。
僕は家でネタを書くわけだけども、何かこのSNSの感じが不穏過ぎて、気が気じゃない。
時折SNSを確認しては『違うならハイシーさんから声明を出してください』という書き込みがきていて、こっちもそのつもりだよと思うしかなかった。
夜になり、ハイシーが帰ってきて、開口一番にこう言った。
「ダメだ。この炎上というかバズりさえも糧にしたほうがいいとか言われて、火消しはするなって言われた」
そんな、まさか。
ちょっと運営が炎上に旨味を見出し過ぎているのでは。
というかある意味、僕の火消しだって場合によっては油を注ぐ行為になるのかもしれないから、みたいな話をハイシーとしていたけども。
ハイシーの表情は曇るばかりで、最後に、
「でも、何か、無理だと思う……事務所の意見は絶対って言われているから……」
僕はもう思ったことがそのまま口から出ていた。
「そもそもハイシーの事務所、大丈夫? よくお笑い活動はOKしてくれたね」
「まあお笑い活動のほうはそれも炎上になればって感じで。事務所が大丈夫かどうかはもう何か考えたくない」
つまり事務所は大丈夫じゃないと言っているわけか。行間を読むなと言う人もいるけども、このくらいは読んでも大丈夫だろう。
というかお笑い活動は炎上の一環だと思っていたんだ。心外だな。面白くない漫才をやって叩かれて有名になるとか思っていたんだろうな。
ある日、ついに決壊した。
『ハイシーは為田仁さんのSNSに登場させてくれと懇願し、お金を積んだから動画で登場している』
『これはハイシー側からの売名行為で、為田仁さんは善意で付き合ってくれただけに過ぎない』
『要はハイシーがお金を払ったってことで、おけww』
そんな言説が溢れかえってきた。
僕はハイシーに知らせることさえ躊躇していたら、僕の感じに気付いたハイシーが「スマホを見せてほしい」と真面目な面持ちで言ってきて、僕はもう黙って見せるしかなかった。
すると大手男性アイドル事務所のファンからは、
『こういう偽物の男性アイドル風は一般人のようなもの』
と書かれて、それがバズって、引用リポストでめっちゃ誹謗中傷され始めた。
さらには僕とハイシーが漫才していることも手伝ってか、
『面白い返し、期待してますww売名のカスww』
『アイドルも偽物、お笑いも偽物、全部偽物、実は整形でした。続きはこちらのブログで』
『お笑い風ごときがあ為田仁さんに迷惑を掛けるな、カス過ぎる』
とお笑い活動を交えた攻撃もされるようになってきた。
特に多いのが、
『お笑い芸人やってんなら、お笑いで返せ』
こんな状況で何か言ったら、また火に油なのに。
一番の問題がタレント政治家の為田仁が否定せず、逃げるように沈黙してしまったことだ。
『運営凸してみた』
という動画の再生数が回り出したその時だった。
ハイシーがLINEを僕に見せながら、
「事務所がキレてるわ」
と言ってきた。
何を今更というか、こういうのこそ稼ぎ時の炎上じゃないの? と思っていると、ハイシーが多分そのLINEを音読し始めた。
『ハイシーのせいで我々運営事務所に迷惑がこうむっております。電話攻撃により事業が中断しております。これは違約金相当で、解雇も辞さない構えです。何故売名行為なんてことに手を出したのか。我々運営事務所が頼りないと言いたいのか。もう修復不可能と見て間違いないでしょう。これは一方的な解雇ではなくて自ら申し出たわけですが、違約金は支払われるべきとは思うのですが、我々も鬼ではありませんので、払う予定だった給料を支払わないという形で終わりにしようと思っております。というわけでもう二度と我々運営事務所に関わり合いを持たないでください。事務所にも来ないでください。来たら法的措置や警察をお呼びすることになるでしょう。終わり。』
何だ、その文章……ハイシーが読みやすいように変えて音読しているって思いたい。
これを正式な文章として書いているんだったら、相当会社として仕事ができていないぞ……ほぼ無職の僕が思うことじゃないけども。
というか事務所がBL売りして、さらにフリーBL素材なので生成AIでお楽しみくださいとか悪ノリしていたせいだってきっとあるのに。
要は為田仁ってタレント政治家がハイシーで生成AI楽しんでいたら、他の生成AIの動画も似てきたとかそういうことでしょ?
マジで何なんだよ、為田仁というヤツもハイシーの事務所も。
ハイシーはもぬけの殻のようにだらりと座っているわけだけども、じゃあということで、
「ハイシー、事務所辞めたということは好きにSNSで発信していいということだよ。弁明の動画とかいっぱい出そう」
するとハイシーはみるみる元気になっていき、
「そうだ! そういうことだ! 俺もSNSするし、まずはベイルのアカウントで動画掲載しよう!」
僕とハイシーは急いで動画を撮り、ハイシーのアカウントも作り、その弁明動画はハイシーのアカウントで投稿した。
それこそ炎上商法だけども、ハイシーのアカウントの初動が伸びるようにと、そういうことにした。
勿論その投稿にもたくさんの批判は届いたし、ずっと僕らの言うことを嘘だと言い続けるアカウントもあったけども、基本応援してくれているようなアカウントはリポストをしてくれたり、引用で応援してくれたりして、ハイシーのアカウントのフォロワーもちゃんと伸びているようだった。
そのあと、すぐに酒井さんからLINEがきて、ハイシーが自分に来た運営の長文LINEメッセージを転送すると、酒井さんが、
『俺もあの事務所辞めるわ もうあそこの横暴にはやってられねぇ』
と送られてきて以降、やり取りは止まったままだ。
まあ酒井さんのことはいいとして、これからというわけなんだけども、
「ハイシーって、実際お金ちゃんと支払われていた?」
と思ったことをそのまま聞いてみると、ハイシーはうんと頷いてから、
「最初のうちはね、最近は全然だったけども」
「いやだとしたら”うん”じゃないじゃん」
「台詞を了承した意味で頷いただけで、内容に同意したわけじゃないからね」
「具体的に何ヶ月くらい?」
するとハイシーは斜め上を見ながら、
「でもまあ酒井と二人になってからは確実に支払われていないなぁ」
いや!
「じゃあもう半年くらいじゃん!」
「最初のグループ解散騒動の頃にはなし崩し的に支払いが無くなっていたよ」
「めっちゃ確信犯過ぎない?」
「そりゃ確信犯だろー」
「いや言わないのっ?」
「酒井は何度も言ったよ、でも税金がどうのこうの言われると俺も酒井も詳しくないから、そういうもんなのかなって」
税金がどうのこうの……確かにそういうことを言われたら僕もどうすればいいか分からなくなる。税金って来年分が増えるとか言うし。
じゃあ、と思って、
「ここの家賃とか大丈夫なの?」
ハイシーは笑顔で、
「最初の頃は大盤振る舞いって感じでボーナスもあったし、俺って全然浪費癖じゃないじゃん? ラジオ聴けてりゃ満足な人間だから貯蓄はまだまだあるよ」
確かに一般人のラジオを聴いているくらいだもんな。長谷川ブックスのラジオはそもそもハイシーのオススメだ。
そこから一応ハイシーから貯金額を見せてもらって、まあ向こう一年は大丈夫といった感じだ。ここの家は結構良い感じなのに、家賃は高くないし。
ハイシーは伸びのような行動をしてから、腕をめいっぱい広げて、
「でも嬉しいよ」
と言い出して、何だ、バグったのか? と思っていると、
「これでベイルといくらでも漫才できるじゃん、いっぱい漫才しようぜ!」
そこから僕は漫才のネタを大量生産することにした。勿論、質も担保しているつもり。
ベイルはアイドルをスパッと辞める感じではなくて、アホな王子様キャラに個人的になり、歌もダンスもやっている。
個人的なアホな王子様って、本当にアホ過ぎるけども、ハイシーがそう自分で言ったので、その要素を漫才にたくさん散りばめることにしている。
ちなみにハイシーは深夜のテレビ番組や、何なら朝の情報番組のレポーターにも抜擢されて、テレビでも活躍している。
結局あの事務所は小さ過ぎて、芸能界から干すみたいなこともできず、何なら事務所自体にずっと悪評があって、ハイシーのことは使いたいけども、あの事務所だしなぁ、みたいに思われていたらしい。
だから事務所をやめてからのほうが絶好調で、僕は漫才の相方兼マネージャーといった感じで動いている。現場にはあまり行かないけど。
一回現場へ行った時に「ベイルさんもいるので漫才してくれませんか? 番組用に作って」と言われてしまい、そりゃまあ個人事務所なので断れずに、番組用のネタを作ってやって、それなりにウケたからいいんだけども、やっぱり僕はあまり表舞台に立ちたくなくて、現場には行かないようにしている。
それ以外は休日なんて無くして、ライブで漫才しまくり。
お笑い芸人さんの友達からは「これで立派にお笑い芸人一本だな!」と嬉しそうに言われて、本当に僕もハイシーも嬉しかった。
週末の地方ライブパックにも呼んでもらえることもあり、ハイシーは前座として歌とダンスを頼まれることもある。
ハイシーは元々歌もダンスも好きなので、前座としてできることは百パーセントやり切るし、嬉しい誤算として、長谷川ブックスの翔也さんがDTMを嗜んでいた。
なので作曲は翔也さんにしてもらって、歌詞は僕がお笑いテイストで書いて、前座の歌をハイシーがやって盛り上げている。
そこから僕が出て行って、最初の頃に作ったお笑いライブでのマナーを教える漫才をしてから、本番が始まるのが、僕とハイシーがそのライブにいる時の恒例だ。
そこそこ忙しくして頂き、お金もそれなりにもらえて、ハイシーのテレビ出演以外はずっと一緒で、長谷川ブックスの動画編集作業もやりがいがあるし、本当に楽しい日々を過ごしていたある日だった。
長谷川ブックスのバトらないビブリオバトルが突如バズった。
どうやらハイシーのファンだった著名人が遠回しの応援として、ハイシーもゲストでよく出ている長谷川ブックスのビブリオを推してくれたらしい。
その著名人の過去の呟きを遡ったら、ハイシーのグループの応援をたまにしてくれていた。
それを踏まえた配信ラジオ。
今日はハイシーはゲスト参加せず、長谷川ブックスの三人だけでラジオをする。
本当はハイシーのゲスト回の予定だったけども、このバズった話をメインでしたくて、ハイシーがいるとボケまくりになって会話にならないから、今日はお休みとなった。
遼太朗が開口一番に、
「長谷川ブックスの、バズったほうでーす!」
翔也が矢継ぎ早に、
「一応ぼくもあのビブリオでは喋っているから、遼太朗だけじゃないから」
遼太朗は「はいはいはい」と言ってから、
「いろんな解釈が生まれるところがいいことですよね」
翔也がすぐに、
「考察勢扱いしないでよ、全然当事者だよ」
遼太朗は吹き出してから、
「考察の有料noteを投稿する人」
翔也が「ちょっと」と不満げに言ってから、
「そういうのじゃないから、他人のふんどしマンじゃないから」
遼太朗が冷静に、
「そんな言い方無いから」
そのタイミングで圭が、
「他人のふんどしは青い!」
と叫び、翔也がすぐに、
「そんな芝みたいな。微妙にタイミングが遅いし」
遼太朗が「まあまあ」と言ってから、
「ブルーレット置くだけ、でね」
翔也がすぐさま、
「何でブルーレット置くだけで染まっているんだよ、ブルーレット置くだけの水流位置にふんどしを設置するなよ」
遼太朗が笑いながら、
「それかオムツのCMの青いヤツで染めている」
翔也がすかさず、
「じゃあそっちだよ! どちらかと言えばそっちだよ! 染めやすいのは!」
遼太朗が「そうだねぇ」と言ってから、
「でもあの青いヤツって何だろうね、もっと黄色くてもいいのに」
翔也が即座に、
「本物過ぎるじゃん! 黄色は! 青だから全然違くていいんだよ!」
遼太朗はう~んと唸ってから、
「でも黄色のほうが危険信号感があっていいじゃん、青色の液体は涼し過ぎる」
翔也は「いやいや」と言ってから、
「あの青色の液体に涼を感じたことないよ、風流だなぁとか思ったことないよ」
と言ったところで圭が、
「風鈴でもかよ!」
と声を荒らげて、翔也が間髪入れずに、
「風鈴の話はしていないよ!」
すると遼太朗がすかさず、
「いやでも風鈴って確かにそんな涼を感じないよな、鳴ってんなとしか思わない」
翔也が「まあね」と言ってから、
「風鈴が涼しいわけじゃないからね、でもそんな”鳴ってんな”なんて、市役所行った時に向こうで電話が鳴っているみたいに言われても」
遼太朗が「あー」と相槌を打ってから、
「市役所で鳴っている電話って、本当に俺に関係無いんだよなって感じだよな」
翔也が笑いながら、
「そりゃそうでしょっ、どこの業界でもそうだよ。自分の店じゃない本屋でも思うよ、僕は」
遼太朗が「いやいや」と言ってから、
「市役所が特にそうだよ」
翔也がツッコむように、
「市役所が一番鳴っているだけだよ、意外と他の店では鳴っていないからね」
遼太朗が「えー」と言ってから、
「でも飯屋の電話は何か、俺の頼んだメニューが来るの遅くなるかも、とか思うじゃん。ちょっと今後の俺と関係性ありそうじゃん」
翔也は吹き出してから、
「それはまあそうだけどもっ。若干細かいよ、話が細かいよ」
遼太朗が割って入るような早さで、
「狛犬」
と呟くと、翔也が呆れるように、
「それは大雑把過ぎるよ、大雑把過ぎるボケだよ」
遼太朗が「はいはい」とリズムを作ってから、
「ボケてもないけどね」
翔也が「え!」と言ってから、
「じゃあ狛犬ってどういう意図の台詞ぅっ?」
すると圭が、
「鎮座したいってことだろ!」
遼太朗がすぐに、
「そうそう」
翔也はちょっと言葉に詰まるような声を出してから、
「いや! 鎮座してるでしょ! ラジオ配信している時はマイクのある部屋で鎮座してるでしょ!」
遼太朗が小さめに「なるほど」と言ってから、
「確かに鎮座してるわ、俺。もう夢叶ってたわ、小学生からの」
圭がすぐさま、
「おめでとう!」
と言うと、翔也が笑いながら、
「そんなマンキンのおめでとうっ」
遼太朗が「そうそう」と言ってから、
「マンキンのおめでとうと言えば、俺らバズったなぁー、それもハイシーさんのおかげなんでしょ、実は」
その台詞に一緒にラジオを聴いているハイシーが、
「いやぁ、結局は長谷川ブックスのチカラだけどねぇ」
と言い、僕はそんなハイシーに、
「両者ってところじゃない? まずはハイシーに魅力があって、長谷川ブックスのビブリオ見たら長谷川ブックスにも魅力があって」
ハイシーは笑顔で、
「そしてベイルの編集にも魅力があって」
「僕は別にそんなじゃないよ」
軽く謙遜し合って笑い合って。
やっぱり二人でいるって、本当に気持ちが落ち着く。
長谷川ブックスのラジオは続く。
僕たちが会話している間に、翔也が喋ったことに対して遼太朗が、
「全員のチカラってことでじゃあ、ギャラの、収益の配分はまず俺が一括で九割もらうということで」
翔也がツッコむように、
「そんなはずないでしょ! ぼくと遼太朗と圭とハイシーとベイルのきっちり五等分でしょ!」
遼太朗が「いやいやいや」と言ってから、
「あの一番バズった動画は圭不参加だから、四等分にしよう」
翔也が語気を強めながら、
「そんな圭が可哀想だよ! ここは圭も何か言ってよ! というか言いなよ!」
そこから六秒くらいの沈黙が起きて、ハイシーが吹き出した。
僕も笑ってしまい、ハイシーが、
「圭って絶対上手いこといかないねっ」
「でもこれこそ上手くいっているとことじゃない?」
と僕が言うと、ハイシーは感心するように、
「確かになぁ」
僕らが会話している間もまだ誰も喋る様子が無いところで、翔也が「ちょ!」と言ってから、
「さすがに! さすがに案件だよ!」
遼太朗が「えー」と非難するような声をあげてから、
「いや翔也の判断が早いよー」
翔也はアツアツな感じで、
「いや! 僕デジタル時計見ていたけども、十三秒黙っていたよ!」
遼太朗が「ハハッ」と軽く笑ってから、
「デジタル時計を見るなよ、粘着質だな」
翔也は同じような強いテンションで、
「いや! 粘着質とかでもないし!」
また一瞬間があってから遼太朗が、
「もしや圭、オシッコ行ってた?」
すると圭が、
「家でオシッコ漏らすヤツいないわ!」
とズレ過ぎているツッコミをして、遼太朗が大爆笑。
翔也が溜息をついてから、
「圭が喋るターンだったの気付いてた?」
圭は「え」と声を出してから、
「会話に喋るターンとかないだろ!」
とツッコむように言って、翔也がすぐさま、
「割とあるよ! 質問されたら答えることが良しとされているよ!」
遼太朗がここで割って入ってきて、
「まあまあ。嫌な質問とかは答える必要無いから」
翔也がすぐさま、
「大人だな!」
と言ったところで、僕が小声で、
「でも遼太朗としては四等分にしたいわけだから、圭が何も言わないほうが得という考え方もできるよね」
ハイシーが「おぉ」と感嘆の息っぽいのを漏らしてから、
「確かに。大人のようでただのクズだ」
遼太朗が喋っている。
「なー、だからもういいんだよな、これで。何でも答えればいいって問題じゃないから、この話はこれとして、そろそろ大喜利のコーナーにいきますかっ」
と仕切ったところで翔也が、
「いや! よくよく考えたら! 遼太朗のお金バナシじゃん! 圭! 僕と遼太朗とベイルとハイシーの四等分になっちゃうよ! このままじゃ!」
と言って、多分遼太朗が舌打ちした。
そこから安定の沈黙五秒。
ハイシーが笑いながら、
「ここでも沈黙なんだっ」
僕は同調するように、
「規格外だよね、圭って」
と聴きながら笑い合う。
また多分遼太朗が柏手一発叩いてから、
「というわけで俺の意見が通りましたっ」
翔也が笑いながら、
「だとしたらそうだけども」
そんな感じでフリートークは終わって、大喜利のコーナーになった。
ちなみに大喜利のコーナーはもう僕もハイシーも参加していない。それはまあ当たり前かもしれないけども。
一回僕に大喜利の選考をしてほしいという話もあったけども、一応断った。
まだ大勢で仕分けしたほうがいいというほどの投稿数が届いているわけでもないし、自分をブランド化しているわけではないけども、僕選考の回みたいな特別回があったほうが良いと思ったから。あとは大喜利も僕セレクションの動画を別で作ってもいいわけだし。
大喜利もつつがなく終了し、ラジオ配信はまた次回といった感じで終わった。
ハイシーが楽しそうに、
「やっぱり長谷川ブックスのラジオって面白いよな」
と言い、僕も同調して、ちょっと感想を言い合った。
こうやって一緒にラジオを聴くって本当に楽しい時間だ。
家で一人が当たり前だったけども、一歩踏み出すだけでこんな違うなんて、と未だに若干慣れない。
いやハイシーが仕事でいない時も多いけども、そういうことじゃなくてって脳内で誰に論じているのか分からないけども、とにかく何だか新鮮な幸せさでいっぱいなんだ。
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・【タレント政治家・為田仁】
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なんとなくSNSを開いて見ていた時に、驚愕のニュースが僕に飛び込んできた。
なんとあのタレント政治家の為田仁が逮捕されたのだ!
内容は一体と思っていると、生成AIで作ったショタBL動画を公共の場で見ていたところを通報されて逮捕されたという話だ。
しかもネット上に飛び交っている噂を確認すると、ハイシーとショタのBL18禁動画だったらしい。
つまりはあのタレント政治家の為田仁は裏でずっとこういう動画をハイシーで作っていたみたいだ。
だから為田仁の作る生成AI動画に出てくる成人男性は全部ハイシーみたいだったんだ。ハイシーのことがそもそも好きだから、と。
SNS内ではなんというか答え合わせができたみたいな感じで、じゃあハイシーが頼んで動画に登場させてもらっていたわけじゃないんだとなっている。好きだから自主的にそうしていた、という。
そもそものところ、何でハイシーが為田仁に依頼して『俺に似せてくれ、宣伝になるから』とやっていた言説が主流だったのか理解ができないけど、誤解が解けて良かった。
結局そうだったら面白いだろうな、ということなんだろうけどもさ。
人は面白いほう面白いほうに流れていくけども、ちゃんと一旦考えることって大切だよねって改めて思った。僕と同じようなことをSNSの人たちも思ってくれていると有難いけども。
その逮捕以降『一般人はSNSをするな』や『収入の無いヤツはSNSをするな』という論が下火になっていった。
勿論それを主導していた為田仁を失ったからだろう。むしろ『こんな生成AIの使い方をするヤツはSNSをするな』みたいな論が出てきている。
確かにそっちのほうが正しいから、それに対して僕は何も思わないけども、でも生成AIが好きな人にとっては暴論なんだろうなとも思う。
ちょっとしたことですぐに正義と悪が裏返る世界になってしまっている。SNSは常に論で塗り替えようとしている。
昔はもっと息抜きの場みたいな感じだったのに、SNSが世論みたいになってしまっている。
もっとふざけた場で、もっと許される場だったらいいのにとも思うけども、許されないような誹謗中傷を繰り返して、いざ怒られると『冗談でした』と言うヤツもいるから、そうなることにも抵抗がある。
いい塩梅は無いのかって僕一人が考えても仕方ないけども、そう望んでいる人は決して少なくないような気もする。
それは僕自身のバイアスなんだろうか、脳内エコーチェンバーなのか。変なカタカナ語が多くてもう訳が分からない。
まあそんなことより、今日は遼太朗とリモート打ち合わせなので、しっかりやろう。
時間になり、ウェブ会議に入ると、開口一番遼太朗が、
「為田仁、逮捕されましたね。いい気味ですよね」
と言った。
僕は相槌を打ちながら、
「まあハイシーをあの事務所から追いやった張本人ですからね」
「でも結果的には事務所やめられて良かったんですよね、確か」
「そうですね、でもギャラは全然支払われなかったですけども」
「そうらしいですね、でもなんというか、このまま続けていてもそういう事務所って支払わなかったと思いますよ、って、これだと為田仁への感謝になっちゃうかっ」
と遼太朗がへへっと笑った。
僕も吹き出してしまってから、
「まあ全部上手くいって良かったですよ」
遼太朗は頷いてから、
「そうですよねっ、つーかあの言説というか、一般人はSNSするなみたいなことに乗っていた一般人も黙りましたね」
「それは本当そうですね、そもそもその言説に乗っていた一般人って何だったんでしょうね、一般人が一般人を非難して」
「非難している最中は自分が一般人ということを忘れるんじゃないんですか、叩く脳、正義の脳になっていて」
「何かそういう人いますよね、自分が正義側に勝手に立ってしまっている人」
遼太朗はちょっと鼻で笑いながら、
「誰から見た正義って話ですよねっ」
そんな世間話からスタートして、今度は長谷川ブックスのビブリオで紹介した本を僕とハイシーで漫才にしてほしいという話になった。
本のネタバレナシ・バージョンと、ネタバレアリ・バージョンの二本書いて、さらに宣伝になればいいなといった感じだ。
世の中にはネタバレを見てから、読みたい見たいという人もいるらしいので。
さらには僕にオリジナル脚本のラジオドラマを書いてほしいという話にもなった。
圭は自分では一切書けないけども、アイデアだけはいっぱい出せるらしいので、何か良い案があればそれを使って書いてほしい、と。
圭がアイデアだけ出すって本当解釈通りで笑ってしまうと、遼太朗も吹き出しつつ「すみません、ツレがアホで」と言った。
本当いつか圭にも会いたいと思った。実際にその場にいたらどんな人なんだろか。勿論翔也にも会いたいし。
とりあえず僕が圭のアイデアが直通で見れるようにと、圭ともLINEのIDを遼太朗経由で収得した。翔也とは既に繋がっている。
現在僕は家で脚本やネタ台本をいっぱい書き、ハイシーは順調にテレビに出て顔を売っている。ゴールデンタイムの番組にも呼ばれるようになってきた。
僕は漫才の舞台にだけ立つ、ぼる塾スタイルをずっとやっている。
信頼できるスタッフのテレビ番組にはマネージャーとして同行することもあるけども、ハイシーのほうが全然社交的だし、僕はほとんど現場には行かない。
長谷川ブックスのユーチューブも順風満帆になっていき、同時に僕とハイシーの漫才もあげさせてもらっている。二組一つのチャンネルとして稼働している。
僕はそれぞれのチャンネルにして、姉妹チャンネルということにしたほうがいいですか、と提案したけども、遼太朗がそれを拒んだ形だ。
遼太朗が『そもそもテレビだって、別々の人が入り組んで一つのチャンネルを形成しているわけだから。このチャンネルはベイルがほとんど全ての編集に関わっているんだから、同じのほうが俺は都合が良い』と言ってくれた。
チャンネルの管理自体は翔也がやってくれるから、こっちも楽だし、信頼できる相手なので、全然収益のことは気にしていない。
そもそもハイシーのテレビ仕事と、僕とハイシーの漫才仕事だけで、一般的なサラリーマン以上には稼げている。
なんというか僕もやっと胸張って生きていると言える感じがする。
でも。
でも、だ。
別に仕事ができていない状態でも、胸張って生きていてもいいよね、とは思う。
自分には自分のペースがあるわけだし、事情を抱えた人もいっぱいいるし、全員が全員、最高の環境で人生を歩んでいるわけじゃないし。
自分のことを自分で卑下しているならまだしも、他人から『人生はこうであれ』なんて言われる筋合いなんて本当は無いし、勝手に”自分はこうだ”宣言されるのも若干目障りで。
別にSNSという人の目が触れるところで持論をデカい声で展開する必要も無いわけで。
自分にとって大切なことは自分の内に秘めておけばいいだけで、SNSという公共の場で発した瞬間からそれは他者への攻撃にもなりうるもので。
というかSNSが公共の場になり過ぎてしまったせいもあるのかもしれない。
もっと隔離されたコミュニティなら良かったのに、と思うことは往々にしてある。
タレント政治家の為田仁は逮捕された。
僕はこの人の言っていることが本当に好きじゃなかったけども、好きな人もいたんだと思う。
でも僕はもっと着実に一歩一歩世の中を改善してくれるような政治家を応援したいと思う。
派手に世間に迎合して、面白いと思われることを第一に考えて行動しているだけの政治家には惹かれたくはない。
だから僕は楽しそうな政治家を選ぶのではなくて、ちゃんと身のある政治家を今後調べようと思っている。
まあ為田仁は本当にセンスの無い、面白くない政治家だったけども、あれを面白いと言ってしまう人もいる。
面白いって人それぞれだから。
僕は僕の面白いを信じて、今日も創作活動をしている。
僕の面白いが誰かの面白いになれたら嬉しいけども、何よりも大切な人の面白いでありたいと思う。
この気持ちはファニーよりもインタレスティングの面白いかもしれない。
とにかく僕の面白いをハイシーと共有したい。
極論、それだけでいい。
勿論長谷川ブックスとだって、お笑い芸人仲間とだって、見てくださるお客様にだって共有したいけども、まずはハイシーと、だ。
SNSに人生なんて無いと言える人生だったら、どんなに幸せだろうか。
まあ僕はある意味表現者なので、SNSで宣伝しないといけない生活になってしまったから、もうSNSを切り離すことはできないけども。
生成AIなんて存在しない世界で、本当の幸せがいつも隣にあるような、そんな生き方をしていきたい。
(了)




