【センス本棚】
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・【センス本棚】
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長谷川ブックスのラジオ配信が始まった。今夜も耳を傾ける。
遼太朗が明るい声で叫ぶ。
「長谷川ブックスの、長谷川ブックスー!」
翔也がすぐさま、
「いつものボケ、ちょっと飽きたのかよ!」
遼太朗が唸り声をあげてから、
「最初のボケ、募集中です」
翔也が即座に、
「楽するなよ! こんな一般人のラジオ配信、そこを誰かのボケ採用しても全然サービスになっていないからね!」
遼太朗は少しムッとしながら、
「サービス……サービス、サービス、サービスですわぁ!」
翔也が吹き出してから、
「急にどうしたんだよっ」
遼太朗が悲しそうに、
「サービスが当たり前になると、義務になってしまうよね……」
と言ったところで圭が、
「朝から犯罪の話かよ!」
翔也がすかさず、
「まずこのラジオ配信が夜だし、犯罪の話ではないよ! あとワイドショーとか朝から犯罪の話してるし! 割とあるよ! ありえるよ! 朝から犯罪の話だとしても!」
遼太朗が溜息ついてから、
「いやもう犯罪級の事件ですよ、銭湯男湯だけ爆破ですよ」
翔也は矢継ぎ早に、
「そんなことしても混浴にはならないよみたいな犯罪無いでしょ」
遼太朗が「いやー」と言ってから、
「センス本棚、見事採用になったんですがー、本当に本当に、これは本当に」
翔也が楽しそうに、
「えっ、それベイルアウトさんの案で遼太朗が提出したヤツでしょ? 採用になったんだったら良かったじゃん」
遼太朗が「うー」と言ってから、
「まあね、ベイルアウトさんの案は最高だったわけですが、法律って使う人間がカスだとどうにもならないのよ」
ここで圭が、
「男湯だけ爆破本当だったのっ?」
翔也が笑いながら、
「何でちょっと嬉しそうなんだよ、なったとしても東京だから圭やぼくのいる新潟は関係無いでしょ」
遼太朗が「まあね」と一息ついてから、
「センス本棚というのはほら、本棚の一つのスペースだけ貸して個人本屋できるヤツなんですけども」
翔也がさらりと、
「説明有難う」
と言った。遼太朗は流れのまま、
「あれの売り上げもさ、書店員の給料と直結させるみたいなことを店長が言い出して」
翔也が「わーぁ……」と嫌そうな声をあげてから、
「何でそんなことするの?」
遼太朗が寂しそうに、
「分かんない、もう……さぁ……」
翔也はちょっと明るい声で、
「まあぼくのほうはぼく一人でやっているだけだし、店長というか社長も『そんなんあるんだぁ』みたいな感じで感心してもらえたところだけども」
遼太朗がデカい声で「あー」と言ってから、
「田舎良いっすねー、翔也のとこ、皆川さんと翔也だけでしょ?」
翔也が頷いてから、
「そうそう。皆川さんが社長で、まあ先代というか皆川さんのお父さんも一応いて、たまにバイトの学生が入るみたいな感じ」
遼太朗は小さく溜息をついてから、
「俺を雇う幅ある?」
翔也が笑いながら、
「幅って言うなよ、あと多分無い。遼太朗は東京のライブとか舞台とか日常的に見たくて東京へ行ったんでしょ、それキッカケで戻ってこようとするなよ」
遼太朗は「はいはい」と諦めるように言いながら、
「そんなライブ舞台も見れてないです。なんせ社員なんで、正社員なんで、お店閉じてからの事務作業もあるし、そもそも都会の本屋は開いている時間が長いし」
翔也が含み笑いをしてから、
「何のために東京?」
遼太朗が「えっ」と言ってから、
「笑った、今? 本当、新潟戻って三人で漫才するぅ? 舞台を見るから作る側になるかぁ!」
すると圭が、
「土木作業かよ!」
とツッコむように言って、すぐに翔也が、
「作るってそういうことじゃないから、舞台装置を作るにしても多分土木じゃないし、土じゃないし」
でもそれってつまり、僕の案が余計なことをしたということ……?
ヤバイ、僕のせいで遼太朗に気苦労が加算されてしまったのかもしれない。
何で僕はこうも上手くいかないんだ。善意のアドバイスの結果、人を苦しめるような感じになってしまって、と思ったところで、翔也が、
「まあとにかく、ベイルアウトさんの案は最高だったんだけども、涼の店長が最悪ということね」
即座に遼太朗も、
「そうそう。まさしくそう。ベイルアウトさんの案は俺も最高と思ったし、今も楽し過ぎると思っているよ、そのセンス本棚を作ること自体は」
何かまるでこっちの気持ちが分かっているように、フォローを入れられてしまったけども、でも、でも、そういうことでしょ。要は邪魔だったということでしょ。最悪だ。僕は何をしてもこうなってしまう。僕の存在は結局誰に対してもいらないんだ。
それ以降、あんまり話も入ってこなかったし、今日に限って大喜利のボケが採用にならなかったし、内心キレているんじゃないかとか思ってしまった。
次の日、前に宣言していた通り、長谷川ブックスのラジオ配信内容が文字化して、noteにアップロードされていたので、読んでみたんだけども、センス本棚のくだりが丸々カットされていて、完全に配慮されているつくりになっていて、僕は強い鬱に襲われた。
父親は既に仕事へ行っていたので、朝ご飯はお母さんと一緒に居間で食べているとお母さんが、
「カウンセリングで嫌なことでも言われたの?」
と聞いてきて、僕はそっちでは全然無いので、
「カウンセリングは普通だったよ、話を聞いてもらっただけ」
と答えた。できるだけ元気に答えたつもりだったけども、僕の元々の人間性がソレなので、上手く明るく言えなかったみたいで、お母さんはまるで聞きづらいことを伺うように、
「もう一回カウンセリング行ける? 行ってみる?」
正直あのカウンセリングにまた行ったとて、とは思ったんだけども、ここで行くと言わないと、あのカウンセリングに難があったと思われそうなので、とりあえずまあもう一回行くことにした。
自分の部屋へ戻ってきたところで、別にカウンセリングの太鼓持ちなんてする必要無かったのに、と思った。難があったと思われても別に良かったんじゃないか?
でもまあもう行くことにしたし、やっぱり行かないと言ったほうがより変なので、もう行くことにした。二回目だし、さすがに父親がまた仕事を休んで送り迎えするはずないだろうし。
SNSを見ていると、ハイシーのBLイラストがめっちゃ増えていて、何ならもう、普通にセミプロの漫画家も描いているみたいで、ハイシー及びハイシーのグループのBLイラストを描くことが流行りみたいになっている。
ここまでなら、逆にバズっていいのかもと思っていると、ハイシーからLINEにメッセージが届いた。
しかもいつもと違ってかなりの長文。その時点でただ事じゃないことは察した。
その文章を僕は腰を据えて読むことにした。
『前にベイルも言ってくれたけども、俺やメンバーのBLイラストやディープフェイクのようなモノが増えている。俺は全然どうでもいいし、楽しんでくれるならそれでもいいと思っているんだけども、メンバーの酒井以外の他の四人がその状態がかなりキツイらしくて。一番人気のメンバーが広重なんだけども、もう本当に無理みたいで。運営に言っても助けてくれないとか言って本当に病んでいるみたいで俺も見ていてツライ。確かに最近はファンからもBL強要というか、メンバー同士でハグしてほしいとか、頬にキスしてほしいとか言われて、まあ無下にもできないからハグくらいはしているけども、全然ファンじゃない一般の人からもBLのグループみたいに指差されて。元々恋愛厳禁だけども、なんというか”モテ”みたいな空気を味わえないのは嫌だとか広重が言っていた。まあその気持ちも分からんでもないけども、俺は正直女子とか別にだし。俺はただ消費されているだけでも喜びがあって、それが生きる活力になってくれれば、推してもらえているだけで嬉しいけども、何か、全員が全員、俺や酒井じゃないんだよな、って。そういう酒井もさすがに唇のキスはアウトだし、何か俺のほうが浮いてきて、俺が本当にBLなんじゃとか言われて。まだ冗談だからいいけども、でも別に俺は好きになった人がどういう性別かって感じで、女性だから好きとか、男性だから恋愛にはならないとかじゃなくて、本当に尊敬し合える関係がたまたま女性だったとか、たまたま男性だったとかでいいじゃんとか思っているし、そうも言ったけども、どうやら俺は少数派らしい。何か恋愛って性欲が絡み合っているみたいで、そこの感覚が俺には分からなくて。そりゃ別に普通にエロい画像を見てシコったりするけども、性欲と一生一緒に居ようと思った人って別じゃん。いやそんな脱線はどうでも良くて。とにかくそういうBL売りがツライからまあなんというか、その、解散するかもしれない。せっかく良い感じになってきて、売れそうになってきたのに、俺は本当は解散なんてしたくないけども、運営が改善してくれなきゃもう終わりなのかもしれない。運営も一度当たったBL売り以外の方法は思いついていないようだし。なんというか運営もBL売りにすがっているというか、もうこれしかないみたいな感じで。俺は別にどっちでもいいし、酒井もまあやれることはって感じだけども、広重とか他のメンバーは本当に無理っぽい。俺は解散したくないんだけどな。楽曲もダンスも最高にカッコイイし、それは広重たちも認めていて、泣いていて、悔しくて嗚咽して。せっかくカッコイイこと、すごいことしているのに、パフォーマンスを見てくれなくて、嘘の内面をファンが追い求めて。別にオフはBLじゃないのに、オフのBLばかり求めてきて。こんなにカッコイイアイドルグループ、今の日本にいないのに。BLという嘘の関係性だけ見出して、俺も悔しい。広重たちと気持ちは一緒だ。でもダメなんだ。オフのBLが無いと売れないみたいだ。恥ずかしい。結局は自分たちの力不足だから。ゴメン、全部愚痴。ベイルには常に楽しい俺だけ見てほしかったけども、愚痴垂れ流してしまった。友達を穢してゴメンなさい。聞いてほしかっただけ。』
何だか僕は涙がボロボロ流れてしまった。
友達がこんなことになっていても、僕は無力だから。
何で仕事もせずに一人で自分の部屋で引きこもっているんだろう。
僕は本当に何もできなかったのか、本当にこのまま終わるだけなのか。
ふと、ハイシーとの日々を回想した。
僕は元々、この平琉という名前でイジメられていた。名前が顔に合っていないらしい。そもそもベイルに似合う顔ってどんな顔だという話だけども、多分外国人のような顔なのだろう。
僕は鼻も低いし、一重だし、口は意識していなければへの字で常に不満そうな顔になってしまう。そういう口の形なのに、そう言われてしまうんだ。
その結果、常に嫌そうな顔をして、傍にいるだけで不快みたいな感じで、じゃあ本当に不快にしてやろう的な感じで小さく小突かれる毎日だった。
歩いていれば足を引っ掛けられて、先生が見えていない角度なら軽く腹パンされて、それで「おえっ」と言えば、イジメっ子の太鼓持ちみたいな女子が「急にえずいてキモー」と言う。
手を出す男子とキモがる女子の連携プレー。本当にどっちも最悪だった。
そんなある日、帰りのホームルームも終わり、通学バッグを持って家へ帰ろうと立ち上がったタイミングで、いつも通りパンチが鳩尾に入って「おえっ」と言ってしまった僕をたまたま見ていたハイシーがすぐに駆け寄ってきて、
「今! 鳩尾殴っただろ! どういうことだよ!」
とマンキンの声で叫んだ。
手を出した男子もキモがった女子も困惑しているようだった。
ハイシーは続ける。
「殴ったヤツもキモイと言ったヤツもめっちゃおもんないな! センスゼロ! オシッコじゃん!」
”オシッコじゃん”の蛇足具合に、一瞬笑いそうになってしまったが、なんとか耐えた。
僕はハイシーに「ありがとう、でも大丈夫だよ」と平常心で言うと、ハイシーが、
「俺が大丈夫じゃない! こんな連中のいるクラスで生活したくない! こういうことはもうやめろ!」
するとその男子も女子も謝ってきて、クラスの人気者がそう言うだけでこんなことになるなんて、と何だか人間が怖いと感じた。イジメてくる以上にそういう打算的なところに恐怖を抱いた。だって人間なんだからイジメは普通にするものだと思っていたけども、まさかクラスの、否、学校の人気者がそう言ったらすぐ頭をさげるなんて。
まあでもありがたいことはありがたいな、と思いながら、帰ろうとすると、ハイシーが僕の肩を掴んでこう言った。
「というか俺の言いたいことはそんなことじゃないんだ! ベイルの通学バッグに付いているキーホルダー! 霜降りマヨネーズのラジオでしか貰えないヤツでしょ! 何で持ってるの! たまたま目に入って流れ上そうやって何かを止める感じになったけども! 俺が一番言いたいのはソレ! キーホルダー! すごっ!」
急な熱量に僕はうろたえながら、
「霜降りマヨネーズのラジオ、聴いてるの……?」
「本放送でもラジコでもだよ! もしかするとベイルもリスナー! 本当にっ! ちょ! ちょい! 今日ちょっと一緒にシモマヨの話しようよ! 放課後どうっ?」
そこから僕はハイシーと仲良くなったのだ。ハイシーはその日の部活の男子バスケ部を休んでまで、僕と一緒に霜降りマヨネーズの話をすることにしたらしい。
僕が正攻法で、メールをいっぱい読まれたから手に入れたと言ったら、ハイシーは「おひょー!」と意味分からない擬音を叫んでから、
「めっちゃすごいじゃん! えっ? じゃあ新潟県〇〇市在住のアウトセーフってベイルのことっ?」
僕は挙動不審になりながらも、
「え、いや、そうだけども……ペンネームとか覚えているの……?」
ハイシーはサムアップしながら、
「面白いハガキ職人の名前は覚えようとしなくても覚えるでしょ! うわー! すげぇー! アウトセーフってベイルのことぉっ? じゃあベイルって言ってほしいわぁー!」
「ベイルとは言わないよ、僕この名前好きじゃないし」
と僕が伏し目がちに言うと、ハイシーはこう言った。
「何で、ベイルってめっちゃカッコイイじゃん。俺だったらそうだな、ワールドトリガー好きだし、ベイルアウトって名乗るかな」
「そんな、自分がするとしたらのペンネームの話。変な取らぬ狸だね」
と僕が思い切って軽くツッコむように言うと、ハイシーは吹き出してから、
「ツッコミおもろ! いやでもベイルアウトってカッコイイからいいじゃん! すげぇシステムだし! ワールドトリガー知らないっ?」
「いやワールドトリガーは知っているし、刊行している分、全巻持っているよ」
「やった! シモマヨだけじゃなくてワールドトリガーの話もできる! 最高の友達ができた!」
勝手に友達認定されて、正直ビックリしてしまった。こんなスクールカースト最下位の僕のことを友達と言うなんて……と思ったところで、ハイシーが、
「待てよ! 友達認定するのは早過ぎるか!」
と制止のポーズをしながら言ったので、そりゃそうだよね、ぬか喜びしちゃったと思っていると、ハイシーが困った顔で、
「俺の有用性が無いじゃん! 面白ハガキ職人とオシッコ出す時ねじれ過ぎ中学生じゃ割に合ってないじゃん!」
なんとそっちのパターンで、というかイジメを止めてくれて普通に有用性あるので、そこはハッキリと、
「いやハイシー、さん、僕が小突かれていたの止めてくれたじゃないか。僕にとってそれ以上のことは無いよっ」
するとハイシーが僕の手を握りながら、
「そんな! あれは俺のエゴで! じゃあ友達って名乗っていいっ? あとさん付けじゃなくて、ハイシーってあだ名だからハイシーのままで!」
「いや別に元々友達認定してもらって構わないよっ、ハイシー」
とさん付けせずに読んでみると、目を輝かせながら、
「ありがとう! ベイル! これから毎日お笑いの話しよう! お笑い自体も好きでしょ!」
「うん、好きだよ」
「ベイルはやっぱりベイルって部分がカッコイイから、ペンネームはベイルアウトに変更するといいよ! ワールドトリガー的にも!」
「別に僕はワールドトリガーの住人じゃないから、ワールドトリガー的にもは無くてもいいよ、ハガキ職人のネイバーじゃないよ」
ハイシーはまた吹き出して、
「ツッコミおもろ! やっぱりベイルアウトさんじゃん!」
「いや今のところはまだアウトセーフという名前だよ、勝手にそっちを正しい歴史にしないでよ」
そんな会話をしながら、夕方までずっと話し込んでしまった。
そこから僕とハイシーは友達になって、毎日一緒にいるようになった。
いつしかノリで漫才をするようになって、そんなに部活の強い中学でも無かったため、普通に土日は部活が無いので、一緒に漫才の練習をして、時折ストリートで漫才をしていた。
とは言え、いつもハイシーといるからって、そのおかげでイジメが全て無くなったわけではなくて、ハイシーがいない時を見計らって、
「何でオマエとハイシーが一緒にいんの?」
と妬まれることもあった。なんならハイシーがいる時にも言ってくるヤツがいたけども、ハイシーが堂々と、
「ベイル以外に俺の相方はいない! そもそもそんなこと言ってくる時点で面白くないけども、オマエ本当に大丈夫か!」
と言ってくれて黙らせてくれた。
漫才は僕がネタを書いていたわけだけども、本当にハイシーの演者ありきといった感じで、このボケキャラ台本をハイシー以外が演じてもきっと面白くはならないと思う。
町内会のイベントで漫才をした時は、そりゃもう緊張したけども、しっかりウケて本当に気持ちが良かった。
このまま高校もこんな感じなのかなと思っていたら、ハイシーが、
「俺は上京してアイドルしながら、ベイルと漫才コンビもやりたい!」
と拳を天に突きあげて言ってきて、でもうちは一人暮らしできるようなお金も無かったので、東京行きは断り、そのまま漫才コンビは自然消滅して。
僕は陰ながら応援することを決めたわけだけども、さすがに陰過ぎじゃないか。
本当にハイシーに何かしてあげることはできなかったのか。何かやりようがあったんじゃないか。
そんな自問自答を悶々としていた。
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・【生成AI】
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タレント政治家の為田仁が生成AIを駆使して『一般人はSNSをやるな』画像をどんどん投稿している。
主に一般人からSNSの画面が映ったスマホを筋肉隆々なスポーツ選手が取り上げている様子だ。
その取り上げている人物が違うだけで、基本的には同じ画像なわけだけども、一般人がSNSでそれに飛びつくように引用リポストしている。
果たしてこれの何が面白いのか、何で引用リポストする人はこれが飽きないのか分からない。
百歩譲って、為田仁が自分の主張を通すためにたくさん作ることはもういい。問題なのはそれに何度も反応する一般人のほうだ。
勿論批判的な人もいるが、そのほとんどが肯定的な人たちだ。本当に自分のことを一般人と思っていないのかもしれない。
ネガティブな人は自分が言われていないことも自分が言われていると思うけども、アホは自分が言われていても自分は言われていないと思うらしい。
ネガティブの対義語はアホじゃないけども、もはやそうなってしまっている。まあネガティブと言うより普通の人といったほうがいいのかもしれない。敏感なことはネガティブの専売特許ではないから。
もしかしたら『おれ、為田仁からブロックされていないから一般人じゃないんだ』くらいのことを考えているのかもしれない。
そんな為田仁の画像に少し気になる表現があった。それは何故かハイシーに似ているアイドルのような人間がスマホを取り上げている画像だ。
衣装はもうまんま、ハイシーのグループの衣装で、顔も何かハイシーみたい。ハイシーは全然『一般人はSNSをするな』という思考じゃないけども。一般人のラジオ配信を聴いているくらいだから。
まあたまたま似ているだけなんだろうけども、何か嫌だな。もしかしたら生成AIにハイシーの画像が取り込まれ過ぎているのかもしれない。BLの生成AIを作るため大勢の人たちがハイシーの画像を読み込ませているせいで、生成AIは標準的な男性の見た目をハイシーのような見た目だと認識してしまっているのかもしれない。為田仁が使っている生成AIが何なのかは分からないけども、chatGPTのようなオープンなAIならその可能性がある。いろんなモノを読み込んでそのマザーコンピューターが成長するらしいし。確かそうのはず。というかそうじゃないとおかしいし。
でもまあある意味、アイドルっぽい人はハイシーになるというのはハイシーが浸透している証拠でもあるか、いやそんなポジティブは要らない。水たまりから跳ねてきた水がギリギリ真水だった的なポジティブは本当に要らない。
いつしか為田仁が一般人からSNSを奪うコミカルなだけのアニメも生成AIで作り始めた。本当にコミカルなだけで面白くはない。
それだけならまあアホな政治家が何かやってらぁでギリ体調不良にもならなかったんだけども、突然、
『一定の収入が無ければネットはしちゃいけないことにする』
と為田仁が言い出して、僕は一気に戦々恐々してしまった。
勿論反発もすごいのだが、同じくらい、何ならそれ以上の熱量の賛成派も出てきて。
SNSは僕の逃げ場というか暇潰しアイテムなので、もしネットができなくなってしまったら、もう本当に死ぬしかないのかもしれない、と思ったと同時に、こんな人を傷つけるだけのSNSに何の意味があるとも思ってしまった。
僕は一体SNSに何を求めているのだろうか、自分以外への攻撃なのかもしれないと思ったら、自分がおぞましく思えてきた。
自分の好きじゃないタレントの不祥事が楽しかったのか、自分には関係無い法律で苦しむ庶民を見て笑っていたのか、僕は、一体僕は、結局のところ僕も加害者なんじゃないのか。
そのリポストで悲しむ人は本当にいなかったのか。いいねに加担することでそれを一般人の総意と捉えて、傷つく人はいなかったか……と思ってもSNSからは逃れられなくて。
情報収集をしているアカウントをずっと眺めては、バズっているポストにリポストかいいねの反応をしてしまう。
するとハイシーのグループの一番人気メンバーが脱退するというニュースが飛び込んできた。そのまま芸能界を引退するらしい。長文の画像ポストが貼られていて、そこにはBL扱いされることが苦痛という旨も書かれていた。
その画像ポストを読み切ったところで、ハイシーからLINEがきた。
『どうしよう、解散するかも。』
簡潔ながら、全てが詰まっていて、何だか僕が「うっ」となってしまう。
どう返信すればいいか分からず、既読すら付けられず。
それ以降、ハイシーからのLINEは届かず、僕の返信を待っているのか、それともバタバタしていてもうLINEどころじゃないのかは分からなかった。
そんな中でも、勿論僕のこととは関係無く、長谷川ブックスのラジオ配信は行なわれるもので。
遼太朗が楽しそうに、
「長谷川ブックスの! 長谷川ブックス!」
と言えば、即座に翔也が、
「じゃあもう前段いらない! 長谷川ブックスだけでいい!」
と陽気にツッコむ。
いつものノリで、いつもならもう笑ってしまうものだけども、今日は何だか聞いていて笑いが込み上げてこない。
とは言え、聴くは聴くけども。
遼太朗が一息ついてから、
「さぁ、俺は長谷川ブックスの長谷川ブックなんですか」
翔也がすぐさま、
「遼太朗、改名した? 市役所行ってきたの?」
すると圭が、
「市役所と人生は関係無いだろ!」
とツッコむように言ってきて、遼太朗は頷いてから、
「そうだよな、市役所と人生はねじれの位置だよな」
翔也は即座に、
「そんなことないよ! 節目節目に市役所が日本人だよ!」
圭は納得いかないように、
「市役所が節目って……ちょっと……市役所の二階に住んでるの?」
翔也は吹き出してから、
「市役所の二階も大体市役所でしょ」
遼太朗がツッコミのテンションで、
「市役所の二階は大体本屋だろ!」
と圭のようにズレたツッコミを飛ばすと、翔也が焦るように早口で、
「圭が二人になったのっ?」
遼太朗が堂々とした声で、
「令和の圭は分身の術が使える」
翔也が「えっ」と言ってから、
「令和になってからもう結構経っているから元々使えたんだっ」
遼太朗が「そうそう」と言葉にリズムを作ってから、
「まあ圭だって常に進化しているもんだから、アウストラロピテクスに」
翔也が即座に、
「いや昔の教科書の進化前! いやまあ猿よりは進化しているんだけどもさ!」
とツッコんだところで、ちょっと間ができてから、また翔也が、
「いや圭も何か喋ってよ! 分身してないじゃん! じゃあ!」
と言うと、圭が、
「そりゃ分身してないでしょ!」
とある意味正解ツッコミを言うと、遼太朗が、
「人生初の正解ツッコミ」
と合いの手を入れて、翔也が、
「そうかもしんないけどもっ」
と笑いながら言った。
遼太朗が「というわけでっ」と早口で言ってから、
「圭の人生初正解ツッコミのコーナーでしたー」
翔也がすぐに、
「そんなコーナーやっていなかった! 流れでそうなっただけでしょ!」
と言えば、圭も素早く、
「やっていたよ!」
と言い、翔也が、
「やってはいなかったよ! もう間違い出した!」
遼太朗が小首を傾げるように唸りながら、
「いやでもやっていたのかもしれない、本当にやっていたのかもしれない、だから二回目の正解ツッコミだわ」
翔也が矢継ぎ早に、
「えっ? 今日正解ツッコミを積み上げていく回?」
遼太朗が「うん」と言ってから、
「そうだな、もう正解ツッコミ積み上げ過ぎて、色塗ってない積み木使っちゃうかも、上のほうはさ、色塗れてる積み木が足りなくて」
翔也がハキハキと、
「いや色塗ってない積み木って製造工程が間に合わなくてとかじゃないから! 素朴でいいねのヤツだから! あとツッコミ積み上げても積み木は使わないし!」
遼太朗が「う~ん」と言ってから、
「ツッコミが長いなぁ、減点だよな」
翔也が「えー!」と声をあげてから、
「そっちがツッコミどころ満載だったんだから仕方なくじゃん!」
遼太朗が「というわけで」とたっぷり言ってから、
「ではここで圭の正解ツッコミです、どうぞ」
と言ってから三秒くらい間が空いてから翔也が、
「喋ってよ! せめて何でもいいから喋ってよ!」
遼太朗が笑ってから、
「上手く行かないことが圭だからさ、圭、ここ一応圭が何かツッコむタイミングだったんだよ」
すると圭が、
「だって、何をどう言えばいいか分からなくて、あ! 分からなくて!」
翔也が爆笑してから、
「分からなくて! じゃぁないんだよ! それが正解のはずないでしょ!」
圭は少しムッとしながら、
「でも分からないんだから分からないことは正解でしょっ」
と言うと、遼太朗が「なるほどね」と言ってから、
「確かにそれは正解なのかもしれない、翔也! 降格!」
翔也が慌てるように、
「処分あんのっ? こっちに処分あんのっ?」
と言ったところで、圭が、
「処分ってなんだよ! 捨てられるおにぎりかよ!」
遼太朗が元気に、
「正解ぃ~~!」
翔也が即座に、
「ちょっと違うでしょ! 廃棄処分と処分は違うでしょ!」
遼太朗が「まあまあ」と言ってから、
「おおまかには正解だろ、圭は激甘で人生をプレイしているんだから」
翔也が笑ってから、
「激甘って表現方法がぷよぷよじゃん! というか圭って激甘でプレイしてるのっ?」
遼太朗も自分で少し笑っちゃいながら、
「そうに決まってるだろ、圭はフリーターと言いつつ一切仕事していないんだから。このラジオの更新作業もnoteの更新も全部翔也に任せて」
翔也が「わー」と言ってから、
「じゃーそうかー! でも圭がやってもいいんだからね! こういう更新作業!」
すると圭が、
「雲見てるほうが楽しいだろ!」
翔也がすぐさま、
「人によってはそうかもしれないけども、更新作業することにより仕事している感が出るんだよっ?」
遼太朗が「まあね」と言ってから、
「別に人生に仕事している感なんていらないからね、生きられればそれでいいもんな」
翔也がマンキンの声で、
「激甘過ぎるよ!」
と言ったんだけども、僕もそんなもんかなと思ってしまったら、またちょっと憂鬱になって。
楽しむために聴いているラジオだけども、何かこんなことを思うことが多くなってしまった。
今までの圭のフリーターネタを聴いていてもそこまで過敏にはならなかったのに。今自分の心が消耗しているのかもしれない。
それか成長なのかもしれないと思ったところで、成長には痛みを伴うという考え方は良くないかもとも思った。
いやでも自分の状況を客観的に見えるようになったから無職である自分がつらいんだ、つまりは成長したんだ、いやでも、なんて堂々巡り。
そんなことを考えていても、長谷川ブックスのラジオは続くもので。
遼太朗が明るく、
「激甘最高、俺も激甘がいいよ。俺の今、中辛のレベル100だから」
翔也が笑いながら、
「何でどこまでもぷよぷよの表現方法なんだよ、とことんぷよぷよじゃん」
遼太朗が溜息をついてから、
「もう本当すぐ落ちるから」
翔也がすかさず、
「とことんぷよぷよ過ぎるんだよ、話が。今、とことんぷよぷよしてる?」
遼太朗が「まあね」と言ってから、
「今デッカイぷよぷよが落ちてきて、二列消えたわ」
翔也が吹き出してから、
「絶対とことんぷよぷよしてるじゃん! しかも昔のヤツ! 昔の意味分からんお助けアイテムが出てくるヤツ!」
遼太朗が「そうそう」と言ってから、
「ニンテンドークラシックスのヤツな」
すると圭が、
「忙しいならゲームする暇無いだろ!」
遼太朗が「いやいや」と相槌打ってから、
「捻出する。それは捻出するわ」
翔也も同調するように、
「ホントそれは捻出するよね、ゲームする時間だけは」
圭が即座に、
「アクロバティックだな!」
とツッコむように言って、遼太朗が吹き出してから、
「今のは本当に違う、本当に違うツッコミが出た」
翔也も笑ってから、
「あんなに圭に激甘だった遼太朗が本当に違うって言うんだ」
遼太朗が「あー」と笑い疲れた人の声をあげてから、
「全然違い過ぎたんだもん、圭、降格です」
翔也が矢継ぎ早に、
「圭も処分くだるんだっ」
また少し沈黙が流れてから翔也が、
「だからここはさすがに圭が喋るタイミングでしょ」
圭がやたらデカい声で、
「じゃあ喋れよ!」
と言って、遼太朗がまた豪快に吹き出した。
翔也はもはや困惑しながら、
「喋れよはこっちの台詞で、圭は粛々と喋るんだよ」
また静かな時間が流れたところで翔也が、
「過酷過ぎる特訓の休憩時間くらい静かになるね」
すると遼太朗が、
「その場合はすげぇゼェゼェ聞こえるだろうから、翔也も間違いツッコミだな。処分くださなきゃ。逆に昇格させて忙しくさせます」
翔也がすぐさま、
「そんな処分無いよ、ダメなヤツを昇格させちゃダメだよ」
このタイミングで圭が、
「自分で自分のことをダメと言ったらダメでしょ! 自分には常に激甘であれ!」
遼太朗がすぐさま、
「正解ツッコミ出たぁ~! その通り! 今日の圭は本当に違うね!」
翔也が笑いながら、
「だからって激甘過ぎも本来ダメだけども」
遼太朗は「いやいや」と言ってから、
「激甘でもいいんだよ、仕事休んでゲームしてもいいんだよ」
翔也が吹き出してから、
「ちょっとだけダメだよ」
そんな感じの会話が続き、大喜利コーナーを少しやってから、長谷川ブックスのラジオ配信は終わった。
なんとなく耳というか頭に残る『自分には常に激甘であれ』という言葉。でも激甘過ぎる人間が言っていた言葉だからなとも思う。
言葉って誰がどんな時に言ったかだから。とは言え、いつも忙しそうな遼太朗も同調していたし、とかも考えて。
いやいやただのお笑いラジオのノリで遼太朗は同調しただけで、いやでも、結構本当っぽかったけども、とかなんというか。
止めよう、これ自分を慰めたいだけだ。気持ちはやっぱり晴れない。




