表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

契約のない絆

最終回!


「あのぅ、これはいったい」


「いや〜んこの子のお肌超綺麗なんだけど!」

「ねぇシャンプーどこの?なにこの濡れ感!」



伊坂家の豪奢な客間。

シャンデリアに赤い絨毯、インテリアも庶民には触れるのが恐ろしいほど豪奢なものばかりがセンス良く配置されている。


その中でおそらく一脚うん十万という椅子に座り、美女2人に囲まれ顔や髪を撫で回されるという謎の事態にまどかは柄にもなく縮こまっていた。



「ごめんね〜うちの姉さん達、綺麗なもの大好きだから…少しだけ我慢してくれる?たぶんすぐに来るーー」



バンッ!



「まどかッ!!!」




「……ね?」


「た、貴文様⁉︎」


扉を開けた向こう側にいたのは、汗だくの貴文だった。


「あらぁ〜貴文君じゃない!ひっさしぶり〜!またモデルお願いしてもいーい?」

「息切らしちゃってどうしたのぉ?相変わらずキレーな顔ねぇ!」


「菜々緒さん、ご無沙汰してます。都合がつけば、いつでも。遥さんこそ、お変わりなく」


一瞬で息を整えさらさらと挨拶を済ませる様は、さすが御曹司である。

そのまま「ちょっと失礼」と会釈してまどかの元へカツカツ歩いていく。


「なんだこれは」


ずいっとまどかの目の前に突き出したのは、書き残した手紙だ。


「えぇと。急なことでしたので、せめてお手紙でご挨拶をと」


「どこの使用人が辞職の挨拶に生ゴミだしの注意事項なんて書くんだよ!」



思いのままを全て書いたらああなったので、まどかは、うっと言葉に詰まってしまうが

「契約では自立の助けに、という内容もありましたし…」となんとか取り繕う。



「それなら、俺にはまだ、お前の助けが必要だ。ぶっちゃけ自立できる自信はない!………まだ、味噌汁しか作れないからな」



「貴文様…そんなことを自信満々に仰られても…よろしいのですか?」



「だから、そう言ってるだろ!いないとなんか、落ち着かないんだよ……頼む」



いつもの俺様な雰囲気はなりを潜め終いに小さな声で付け足した貴文に、まどかはきゅうっと胸が締め付けられたように目を潤ませる。


このまま2人の世界に突入か、と思いきや。



「よかったねまとまって〜でもココでイチャイチャするのはやめてね?」



そう言う蘭の声にハッと我に返った貴文が目を見開く。

その顔は、焦り半分照れ半分という感じだ。



「あ、おまっ、蘭!いたのか!」


「最初からいたよ、てか俺んちだし!も〜まどかちゃんしか目に入ってなかったんでしょ?俺が姉さん達部屋から出さなかったら今頃二人とも話す間も無く着せ替え人形だよ〜?」


「蘭、その…悪かった、色々。」


頭を下げた貴文に、蘭はケラケラといつものようにチャラいノリで返す。


「この借りは高いよ〜学食おごってよね〜。で、まどかちゃん。モヤモヤ解決したでしょ?」


「…はい。ありがとうございます、蘭さん」


礼をしたあとの顔は、なんだか清々しい雰囲気で、蘭は思わず微笑んで、頭を撫でた。


「実は運んだフリして荷物は車に積んだままだから、すぐに返すね。またタカに虐められたらいつでもおいで〜」


「ふふ、はい。」


「おい、行くぞ」


撫でる蘭の手を掴んで退けて、まどかの手を引く。


「タカ〜嫉妬深い男は嫌われるよー?」



「誰がだ!………詫びは今度な」


「おさわがせしました。失礼します。」


軽く手を上げて踵を返す貴文に、ぺこりと一礼してついていくまどか。



その背を見送りながら

「本当に手のかかる2人だなぁ〜」

ポツリとこぼした声には、いつのまにか部屋に戻ってきた姉たちが返した。


「らん、よかったのぉ?」

「アンタも損な役回りねぇ」


「…好きな2人の幸せな姿が見られるんだから、悪くないよ」


苦笑した声は、空気に溶けて消えていった。





伊坂家を出た後もそのまま手をつないで歩いていく。


暫くはどちらも言葉を発することはなかったが、おもむろに貴文が口を開いた。


「……まどか」



貴文はそっとまどかを抱き寄せて、優しく額にキスを落とす。


「…………!」


かぁっと耳まで真っ赤になったまどかの珍しい表情に少し嬉しそうにして、そのまま離さないとでもいうようにぎゅっと腕に抱きしめる。




「新規契約だ」


「?は、はい」


「お前が好きだ。だから、ずっと、俺のそばにいろ。」


「……貴文様…」


「…返事は!」


「…はい。喜んで」



それを耳にしてようやく抱きしめていた力を緩め顔をつきあわせれば、お互い緊張仕切った顔をしていて、思わずどちらからともなく笑ってしまった。









数年後ーーー




「パパー!」


長く艶やかな黒髪をなびかせて駆け寄る小さな女の子を、貴文は軽々と抱き上げた。


「どうした?」


「あかり、大きくなったら蘭くんとけっこんすることにした!」


「プロポーズされちゃったよ〜」


「大胆発言だな」


「悠馬くん、おーえんしてくれる?」


「俺はいいけど、パパが何ていうかな」


「…待て、待て待て………その話は、パパが一旦預かろう。ママのとこ行っといで」


「はーい!蘭くん悠馬くん、あとでね!!」


「あぁ」


「まったね〜」


貴文は手をフリフリする蘭にをジロリと睨む。


「らーんー?どうして目に入れても痛くない我が家のプリンセスがお前に夢中なんだ?」


「モテる男はつらいよね〜。俺の魅力は4歳児にも有効だったかぁ」


凄む貴文のことは見えていないかのようにコーヒーを含みつつ王子スマイルで答える。


「てめぇこんにゃろ!普通は大きくなったらパパと結婚するって言うもんだろ⁉︎」


「父親が妻を溺愛していればそんなこと言いださないのは目に見えているが…」


そんな悠馬の言葉をスルーしてなんでだ!と騒ぎながら蘭の頬を遠慮なく捻りあげている最中、パタパタと軽い足音が戻ってくる。


「蘭さん、悠馬さん、いらっしゃいませ。…貴文さん、何をまた怒ってるんです?」


「いやコイツが「あーパパ!また蘭くんをいじめてたんでしょう!ダメよ、あかりの未来の旦那さまなんだから!!」…あかりぃ」


「まぁ、あかりったら。……それもいいわね」


情けない声を出す貴文とあかりを見比べてまどかは手で口元を隠してそっと笑う。


「そしたら、まどかちゃんが俺のお母さんか〜!悪くないよね!」


「随分若くて美人な母親で羨ましい限りだ」


「だーっ!おまえらやめろって!!」



騒がしい休日のリビング。

貴文は目を細め。かつての無表情はどこへいったやら、まどかが屈託無く笑う。




契約から始まった2人の未来は、

家族として結ばれた。



紡がれていくのは、契約のない絆の物語ーーー


完結です。


ツンデレでヘタレという貴文とまどか、

なんとかまとまってよかった…


おつきあいくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ