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放課後になる

ミステリー研究会は動き出す。もちろん探偵助手も同行する。

 早朝に米ばらまき騒動があった四月X日月曜日の放課後、僕はクラスメイトの舞子実里(まいこみのり)と新聞部の二年生山縣杏菜(やまがたあんな)先輩とともに生徒会室に向かうことになった。


 三人ともミステリ研の会員だ。

 「同好会」である「ミステリー研究会」の「会員」は五人いる。

 会長の明石透(あかしとおる)。新聞部の山縣杏菜(やまがたあんな)。この二人が二年生。

 舞子実里(まいこみのり)、写真部兼新聞部の須磨入鹿(すまいるか)、そして僕の三人が一年生だ。


 明石会長、舞子と僕はミステリ研を主たる活動の場にしているが山縣さんは新聞部、須磨は写真部を主たる活動の場として登録しているから生徒会則によりミステリ研は「主たる活動員」が五人に満たないために「部」にはならず「同好会」になる。そのためあの大きくカオスなタコ部屋(同好会室)に押し込められている。


 同好会は数え切れないほどある。

 昨年度に校則が改定され専属部員・会員がたとえ一人しかいなくても掛け持ち部員・会員を四人集めて計五人にするだけで同好会を作れるようになった。

 それまでは活動実績を示した報告書が厳密に審査されて部・同好会が維持されていたのだがそれもほぼ形式的になっている。


 報告書の中身が評価最低でも同好会の存続に影響はない。ただし生徒会が割り当てる部費――これは学園や同窓会等の寄付によるもの――は活動実績で決まるので、どこの同好会も自らの存在感を示す必要があった。

 サボっているとあのカオスなタコ部屋からも追い出されることになる。だからどこも必死だ――たぶん。


 さて、我らがミステリー研究会だが、作ったのは明石会長だ。

 明石さんと舞子と僕はもともとは学園でも由緒ある文芸部に所属していたのだが訳あってそこを離れ山縣さんと須磨に声をかけてミステリ研を作った。

 ミステリー小説を読んでその紹介をミステリ研SNSサイトで公開する――というのを活動にしている。


 しかしそれだけなら地味な同好会で、学園で悪目立ちすることはない。


 目立っているのは明石会長の天衣無縫な振る舞いだ。どこにでも顔を出し何か謎めいたことがあるとたちまち「事件」にして騒ぐ。そのせいで教職員、生徒会その他もろもろから問題児扱いされている。


 それに輪をかけるのが山縣さんだ。明石会長の迷推理(・・・)をさらに誇張して新聞部のSNSサイトにアップする。

 ただ読んでいる分にはとても面白いが関係した者はたまったものではないだろう。

 むしろ山縣さんがけしかける(・・・・・)ので収拾不能になっていると僕は思う。


 その山縣さんは今、るんるん気分だ。


 放課後の僕たちの予定は回収された米の確認だ。押収物の調査ともいえる。

 美化風紀委員が生徒会の指示のもと片付けたはずだからこうした調査を行うには生徒会の許可を得ておく必要がある。


 これまで明石会長に言われて勝手に動き、生徒会や教職員の逆鱗に触れたことは数え切れない。下手をするとミステリ研の存続にも関わるのでさすがの明石会長も筋を通しておくべきと考えたのだろう。


 だからといって明石会長自ら生徒会に乗り込むと話がややこしくなる。

 といって山縣さんが表に立つと新聞部の活動だと見做(みな)され、大ごとになる。

 そこで白羽の矢が立ったのが舞子実里(まいこみのり)だった。


 ついこの間――三月まで中等部の生徒会長をしていた舞子なら高等部()生徒会とも通じているし話も通るだろう。

 舞子がその役を黙って引き受けたのが少し意外だったが。


「お願いするね、実里(みのり)ちゃん」山縣さんが舞子に言う。「いざとなったら私も圧をかけるから」


「たぶん――大丈夫です」舞子は表情を変えず答えた。


 生徒会室がある部室棟へ向かう前に僕たちは少し回り道をして朝(こめ)がばら撒かれていた西の渡り廊下に立ち寄っていた。


 この渡り廊下は二階三階部分は窓のある壁に覆われ屋内構造になっているが一階部分は吹き抜けだ。コンクリート面には砂埃がうっすらと積もり、時には小鳥が糞を落としていく。


 今朝は凄かったが朝のうちに米が片付けられ、昼休みに糞の清掃が行われ、今は最後の仕上げがなされていた。


 美化風紀委員と思われる中等部の生徒が数人清掃を続けていた。

 何度も清掃させられるなんてたまったものではない。


「ゴミはもう棄てたのかしら?」舞子が清掃係に訊いていた。

「はい通常通り袋に詰めてゴミ捨て場に」

「朝集めたお米も?」

「だと思います。私たちは放課後の担当なので」


 美化風紀委員はクラスに一人ずついるから中高合わせて39名いることになる。朝、昼休み、放課後と分担したのならそれほど負担にもならないか。


「ありがとう」舞子はそう言って部室棟へ足を向けた。

 

ここの登場人物

舞子実里まいこ みのり ミステリー研究会会員

山縣杏菜やまがた あんな 新聞部部員・ミステリー研究会会員

芦屋憲勇あしや けんゆう ミステリー研究会会員。僕。語り手。


その他中等部美化風紀委員

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