火曜日放課後 舞子実里
問い詰められたら、何か語らないわけにはいかないものだ。
「芦屋くーん、一緒に帰ろ」
放課後のショートホームルームが終わるなり僕は舞子に声をかけられた。
僕に逆らう選択肢はない。僕は溜め息をつきたい思いだった。
それで真っ直ぐ帰るのかと思いきや寄り道と称して「西の渡り廊下」に来る。
そこは先週月曜日に米がばら撒かれた場所だ。
「先々週の土曜日昼、沢辺先生はここに米が落ちているのを見つけ片付けたんだよね」
守衛室に掃除用具を借りに行って米を回収しゴミ捨て場に捨てたと言っていたな。
「その後ここにまた米がばら撒かれた。最初に撒かれたよりもずっと多い量が」
最初の方が少ないと舞子はわかったのか。
「樋笠や高原を使っていろいろ調べさせたよ」舞子の配下は優秀だ。「学校近くで米を売っているところを調べてもらったんだ。すぐそばにもち米を売っている米屋を見つけたよ。まさかあんな近くで米を調達するとは思っていなかった。急いで調達する必要があったのかな」
米はコンビニでも手に入る。でも持ち運ぶことを考えれば近くで購入するのではないか。量によるが多いならきっと近くだ。
「店主は土曜日昼に買いに来た生徒のことを覚えていたよ。御堂藤学園の制服を着た中学生女子と高校生男子。中高生が買いに来ると印象に残るしね。それに買ったもち米とうるち米をそれぞれ別に小分けにして欲しいと言われたらね」
確かに目立つだろうね。
「憲ちゃあん、何か言うことない?」
だから声色を変えるなよ。
「その日渡り廊下で米を落として泣いている中一の子がいたんだ――」僕は語りだす。「何でも――家庭科部で使う米を落としてしまったらしい。僕は関わりたくないとは思ったけれど他に人もいないし仕方なく声をかけた。落ちたものを拾って使うわけにもいかないし近くで買おう。そこに落ちている米を片付けるのは後だ。掃除用具も手元になかったし、何よりその子はすぐにでも食材の米が必要みたいだったからね。僕たちは学校から最も近い米屋でもち米を見つけた。普通の米と両方必要とのことだったので両方買ったよ。しかし最少単位が五キロしかなかったんだ。家庭科部でそんなに必要ない。そこで店主にお願いしてその子が必要な量を袋詰めにしてもらったんだ」
舞子はふうんという顔をしていた。
「その子は家庭科実習室に向かい、僕が渡り廊下に戻ってみると米は綺麗に片付けられていた。あれは沢辺先生が片付けたんだね」
「どうしてそれを言わなかったの?」
「米は片付けられていたし、関係ないと思ったし」
「ふうん」
あ、こいつやっぱり信用していないな。
時:火曜日放課後
場所:西の渡り廊下
ここの登場人物
舞子実里 ミステリー研究会会員
芦屋憲勇 ミステリー研究会会員 僕 語り手




