そして――火曜日
なぜか探偵役は記憶力が良い。誰かが何気なく言ったセリフを覚えているものだ。
火曜日も平穏だった。一部を除いて。
久々に舞子のお供で昼休みの廊下を歩いていたらドタドタと走る音が。
廊下は走らない!と注意すべき教師の一人――沢辺先生だった。
「ままいこさあん」
またママイコだ。
「元気?」
肩をバシリと叩かれることはないが舞子は勢い余った沢辺先生と接触して、僕の方に飛ばされた。
僕はそれを何とか受けとめたが半歩後ろに下がった。
「元気です。もう大丈夫です」
舞子はいつものクールな口調で答えた。沢辺先生の元気には敵いませんよ――とは言えない。
「一つ訊きたかったのですが」
舞子は思い出したかのように沢辺先生に訊ねた。
「――先週金曜日朝、お米がばら撒かれていた時のことです。みんな大騒ぎしていたと思うのですが、あの時先生『また』とおっしゃいましたよね」
ウンウンと沢辺先生は頷く。
「前に撒かれた時のことをご存知でしたか?」
「うん知ってるよー。私が片付けたんだから」
「え? それいつの話ですか?」
「私の出勤日だから前の前の土曜日だよ」
「先生の出勤日は火水金と」
「月二回土曜日だねー。その土曜日の昼過ぎだったかな、西の渡り廊下にお米が落ちていたのよね。まあ大変と思って箒とちりとりを守衛室に借りに行ってかたしておいた」
「それは確かですか?」
「うん」
「その片付けたとおっしゃいましたが、米はどうされました?」
「袋に入れてゴミ捨て場に捨てたよ。ちゃんと。そんなことがあったのを思い出したものだから思わず『またー!?』って言っちゃったと思う」
「なるほど」
舞子は考え込んだ。
「いっけなーい! 急いでたんだ」
沢辺先生は「またね」と言ってドタドタと走り去った。
「さてさて――これはどういうことだと思う? 芦屋君。米は土曜日の昼に撒かれ沢辺先生によって一度は片付けられていた。しかしその次の月曜日朝には鳥の糞にまみれた大量の米が同じ渡り廊下で見つかったんだ。誰かが撒きなおしたのだろうか?」
「僕に言われても」
「そうだね、きみは探偵助手兼記録者。語らない男だったね」
舞子は不気味に笑った。
怖いな。
時:火曜日昼休み
場所:校内廊下
ここの登場人物
舞子実里 ミステリー研究会会員
芦屋憲勇 ミステリー研究会会員 僕 語り手
沢辺早妃 女子体育教師




