表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/71

月曜日昼休み 同好会室

人は飽き性だ。事件も毎日のように起こる。話題は次々と上書きされる。こうして「大事件」も過去の遺物となる。

 昼休み、僕は同好会室に行った。

 腰痛は少しマシになっていた。湿布のお蔭か動いているからなのかはわからない。


 昼休みに山縣(やまがた)さんが新聞部SNSサイトで昨日の件を報告した。

 先週金曜日の米ばら撒き騒動は一部の生徒が処分に困った古米をばら撒いたという話だ。どこの部活、誰なのかは書いていないがいずれ知れ渡ることになるだろう。ワンゲル部は同好会に格下げされるようだし。


 そして山縣さんの記事はさらに続く。美化風紀委員室に謎の侵入者?

 相変わらずセンセーショナルな書き方だ。こうした部活への侵入については以前から一部の生徒は感づいていたからその反響は大きかっただろう。

 米ばら撒き騒動は旬を過ぎることとなった。最初の米のバラマキなど、もう忘れられているかもしれない。


「かくして――各部活は部室に隠し持つものの処分を急ぐことになる」

 明石(あかし)会長の演説だ。

 僕は言われた通りに端末に向かって記録する。


「米のバラマキだけではない。この同好会室の備品だって許可のないものは危ないぞ。生徒会に目をつけられるか座敷童子(ざしきわらし)に奪われて――どこかにポイだ」

 座敷童子はあくまで(たと)えだ――と僕は思うことにしている。


「この部屋――ガラクタ多いものな」


 有象無象の輩が今日もまた集まっている。しかしその数は減っている。

 人間とはどうしてこう飽きっぽいのだろう。別に注目して欲しいとは思わないが。


「断捨離だ。断捨離」

「片付けなきゃな」

「いや待てよ。もしやそれが狙いか」という声があがる。

「これは部屋を整理整頓させるための陰謀」

「誰の?」

「生徒会。そうでなければ――」

「裏生徒会?」

「口に出すなよ。粛清されるぞ」


 影にあるもう一つの生徒会が学園の秩序を守っている――という噂は誰の耳にも入っていた。いわゆる御堂藤(みどうふじ)学園の都市伝説だ。

 しかしそれはアンタッチャブル。触れてはいけない。口にしてもいけない。下手に首をつっこむと粛清されるのだ。

 だから誰もそのことに触れない。

 裏サイトではそれらの話がまことしやかに流れ、それを支持する声が山のように溢れていた。


「ほんとうに裏か?」明石さんが問う。「裏のふりをした表ではないのか?」

「表の生徒会が生徒を牛耳るために裏を使ってるってか?」

「今の生徒会ならやりそうだな」

 どうだろう。疑いだしたらきりがないな。


 明石さんはほんとうに可能性を広げてばかりだ。性質(たち)がわるい。


 山縣(やまがた)さんがそこにいなかったからミステリ研の会合はあっさりと終わった。

 舞子(まいこ)はずっと黙っていた。人が大勢いるとき舞子は大人しい。中等部生の前では偉そうにしているのだが。


「腰は大丈夫?」

 同好会室を出たところで舞子が僕に声をかけてきた。


「うん、湿布が効いているね」

「無理しちゃダメだよ。ひ弱なんだから」

 いや、あの時ワンゲル部を追えと言ったのはお前だろ!

 もちろん僕がそれを口に出すことはない。

 探偵助手は「語らない」。


「じゃあね。自由にしてあげる」

 舞子がにっこり笑った。


 僕を拘束している自覚はあったのか。

 おそらく舞子はまた誰か配下に会うのだろう。侵入者の件を気にしていたからな。

 僕は昼休みの残り時間、何をしようか。

 急に自由にされるとすぐには思いつかないものだ。


時:月曜日昼休み

場所:同好会室


ここの登場人物

明石透あかし とおる ミステリー研究会会長

舞子実里まいこ みのり ミステリー研究会会員

芦屋憲勇あしや けんゆう ミステリー研究会会員 僕 語り手


その他有象無象の野次馬たち


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ