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土曜日 米の鑑定結果とペットボトル

探偵役は手の内を明かさない。探偵助手はただ同伴するだけだ。

 翌日の土曜日、僕は普段通りに登校した。

 我が校の高等部は土曜日に選択授業を配置している。特に高学年は。

 僕たち一年生も数学演習とか苦手な教科を補強するような授業があった。


 高等部は内部進学生(中高一貫生)と高等部入学生がいて、内部進学生は中等部三年時に数学ⅠやAをちょこっと始めていたから高等部入学生と少し差がついていたのだ。

 そういった差を緩衝するためにいくつかの教科で演習という名の授業が行われていた。もっとも――高等部入学生の方が頭の回転が速いヤツが多いから授業の遅れなどあっという間に解消される。


 そんな選択授業が多い土曜日は、選択の仕方によっては月に二度の登校ですませることができる。生徒によっては土曜日の授業がなく、その時間帯部活に打ち込むことができるのだ。


 僕はふつうに授業に出ていた。しかし二年生三年生の中には部活動をしている生徒もいた。


 昨日の生徒会総会は最後のところで米バラマキ事件で紛糾した。それまでの議事進行が嘘のようにてきぱきとなされ、大事な議案もたいして議論もされずに可決された可能性がある。


 最後の最後、幡野(はたの)さんが新聞部の責任を追及したばかりに、バラマキ事件に関して新聞部がミステリ研と組んで調査する展開になってしまった。しかも生徒会のお墨付きだ。

 それが良いのかどうか。もし成果が得られなければいったいどうなってしまうのか。


 だからなのか新聞部は調査に力を注いでいる。使えるものは何でも使って。

 金曜日に撒かれた米の鑑定を生物部兼食糧自給を考える会の木嶋(きじま)さんが今頃行っているだろう。

 僕は授業に出ていたからそれがどうなったか、まだわからない。


 何となく落ち着かない気持ちで午前最後の授業も終えた。用がなければ下校だ。

 舞子(まいこ)の様子をうかがうと、舞子は帰る素振りを見せなかった。

 僕は舞子に促されて生物部を訪れることになった。



 生物部には木嶋(きじま)さんが待っていた。

 僕と舞子が生物部部室に入ると新聞部の山縣(やまがた)さんが出てきた。

 すでに鑑定結果を教えてもらったようで山縣さんはニコッと笑ったかと思うと足早に去っていった。忙しい人だ。


「今、新聞部に結果報告をした。昨日の米はうるち米。何年ものかはわからないが古米だと思われる。ほぼ同じ時期、同じ銘柄ではないか。同じ袋に入っていたものかもな」

「何年経っているものか――まではわからないですよね?」舞子が訊いた。

「さすがにな。保管方法が良ければ十年前だってあり得る――かもな。僕はそこまで専門家ではないから何とも言えない」


 保存状態が悪ければ短期間で劣化するし、良ければ十年前のものかもしれない――ということだ。


「ひとつ見てもらいたいものがあるのです」


 そう言って舞子はサイドバッグから空になった2リットルのペットボトルを取り出した。

 どうもそれは舞子の配下である浅倉(あさくら)高原(たかはら)がゴミ捨て場から見つけてきたものらしい。(から)ではあったがその容器は何となくくすんだ色合いをしていた。透明度が落ちているのではないか。


「このペットボトル――内側に粉っぽいものがついていますよね」


 舞子からそれを受け取った木嶋さんはじっとペットボトルを見つめ、傾けて中の粉が移動しないか確かめたりした。


「なるほど――これは米粒から剥がれた粉だな。これに入れてばら撒いたのか」

「これが三本、ゴミ捨て場に捨てられていました」

「三本ね」

「ペットボトル三本に目一杯詰めても十キロには満たないですかね」


「その十キロという数字だが、実際のところよくわからない。五キロは超えていただろうことから十キロ程度と判断したようだ」

「では必ずしも十キロではないと?」

「花壇や地面に撒かれた米はきれいさっぱりすべて回収できるものではない。実際に回収したものより多く見積もったとしても不思議ではない。実際にはペットボトル三本分の可能性もあるな」


「ペットボトルなら三人で分担して校内に持ち込むことは可能ですよね」

「ばら撒く際も三人で分担できるな。一人二か所にばら撒けば合計六カ所になる。うまくやれば目立たない」

「そうですか。ありがとうございます。ただこの話――しばらく内緒にしておいて下さい。山縣さんが知るとすぐにSNSで公表しそうですから」

「まだ情報開示しないと言うことだな。わかった。それも良かろう。手の内を明かしすぎるのも良くない」


 木嶋さんは物わかりが良い人のようだ。少なくとも明石(あかし)さんや山縣(やまがた)さんとは異なる人種だと僕は思った。

 僕と舞子は木嶋さんに頭を下げて退室した。



「明石さんにも黙っておくのか?」僕は舞子に訊いた。

「明石さんは今忙しそう」

「は?」

座敷童子(ざしきわらし)が気になるみたい」なんで?

「明石さんのライフワークは『学園七不思議』だよ」舞子はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「――それもまた真相へのアプローチかもしれない」意味ありげだ。


「さあて――次はどこへ行こうか」


時:二度目の米ばらまきがあった日の翌日――土曜日昼

場所:生物部部室


ここの登場人物

舞子実里まいこ みのり ミステリー研究会会員

山縣杏菜やまがた あんな 新聞部部員・ミステリー研究会会員

芦屋憲勇あしや けんゆう ミステリー研究会会員 僕 語り手

木嶋 生物部部員・食糧自給を考える会会員


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