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これはミステリーだ

かたづけたい生徒会。現場検証したい探偵。好奇心を隠さない新聞部。彼らの攻防がつづく。

「は? 何を言っているの? これのどこが事件なのよ? 単にお米が散乱しているだけじゃない」

「校内に米が散乱。これが日常の瑣末(さまつ)? よくあることか? 事件と言わずして何とする」


 不敵に笑みを浮かべ生徒会女子を見下ろす明石(あかし)

 片眉をつり上げ、明石を見上げる生徒会女子。


「そんなに見つめないでくれ。照れるではないか」

「あ?」

「たしかに君の美貌にはつり目つり眉がよく似合うが、そんな顔ばかりしているとそういう顔になってしまうぞ」

「なっ、何言ってるのよ。とにかく部外者は即刻立ち去りなさい」


 朝の予鈴が鳴った。あと十分(じっぷん)で一時限目が始まる。

 野次馬の影も一つ二つと減って行く。


「で、どういう状況?」新聞部女子が誰にともなく訊ねた。答えるのは明石だ。

「朝――ふだんなら閑散としているこの渡り廊下に人影を見た。これは何かあったな――と思った僕はすぐさま駆けつけた。見ると大量の米。そしてそれに群がる小鳥たち。うんハトも(たか)っていたな。そしてあちこちに糞が」


「なるほど――なるほど」三つ編み眼鏡姿の新聞部女子はメモに余念がない。「ちゃんと撮っといてね。鳥や糞も」とカメラを構える男子に言った。


「野次馬の顔も一人残らず撮ってくれ」明石が付け加えた。


「何様のつもりですか? 早く教室に入りなさい」生徒会女子は教師の代役だ。


 その場にも何人か教師は来ていたが静かに立っているだけで現場の対応は生徒会と美化風紀委員に任せていた。


 掃除具を手にした美化風紀委員が戻ってきた。

「これを放置しておいては鳥の糞害が酷くなるわ。せめてお米だけでも片付けてちょうだい。糞の始末は昼休みにでもじっくりするから」


 あちこち落ちている糞は掃いただけでは除去できない様子だった。


「待て待て。写真を撮ってからだ」明石が割り込む。

「清掃が先よ」

「これは犯人による何らかのメッセージだ」

「ただ単に米袋を落としたか何かでぶちまけてしまっただけでしょ!」

「それならどうしてぶちまけたやつは片付けない」

「時間がなかっただけでしょう。後で片付けるつもりだったのよ――きっと」

「とても興味深い推理だ。賛同はできないが」

「とにかく邪魔邪魔」


 明石と生徒会女子の言い合いが響く。

「あれも撮っといてね」二人を指差し新聞部女子はカメラマンに言った。


 美化風紀委員の女子が(ほうき)を動かす。

「そっと()きたまえ。何か文字が浮かぶかもしれない。コンクリート面にこびりついた米を使って文字が描かれているかも……」


 だが散乱した米はほこり(・・・)や砂とともに綺麗に取り除かれた。そこに米で描かれた文字はなく、鳥の糞だけが残った。


「バカじゃない?」生徒会女子は冷ややかな目を明石に向けた。

「これは――ミステリーだ」明石は呟いた。



時:早朝

場所:西の渡り廊下

登場人物:明石、生徒会女子、新聞部女子、その他

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