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もち米とうるち米の比率

どのような料理もレシピはひとそれぞれ。材料の配合比率の違いで料理人を同定することが可能かと考えるのもひとつのやり方だ。しかし採集した資料が不確かだと話にならない。

「何かしら――舞子(まいこ)さん」


 そこにいた中で最もリーダーシップのある先輩女子がやって来た。僕と舞子から見ても先輩だ。高等部二年生だった。


「実はお米を見ていただきたいのです――」


 回収された米の一部を舞子(まいこ)は見せた。ここまで運んだのは僕なのだがまるで舞子が取り出して開示したように見える。


「昨日騒動があったやつね。私たちのところにも顧問の先生がやってきたわ」


 誰が落としたのか教職員も気になるだろう。不注意で落としたにしても後始末をしないなんて処分ものだと思っているだろうな。


「鑑定をしていただきたく持参しました」

 舞子は透明袋に入った一握りの米を見せる。

「生徒会も大変ね」


 舞子は今も生徒会の人間に見えるのだ。その誤解を舞子は敢えて訂正しなかった。

「ボスは今……」生徒会とは関わりがないとでも言おうとした樋笠(ひがさ)に舞子は無言の圧力をかけた。

 それで飼い犬はおとなしくなった。黙って控えていようという態度だ。ほんとうによくしつけられている。


「先生にも訊かれたけれど家庭科部の中に心当たりがあるひとはいないみたいよ」と言いつつ先輩女子は袋越しに米を見た。

「あら、何だか違う米が混じっているようね。ブレンド米? いえ――これはもち米(・・・)ね」

「うるち米ともち米が混在しているようです。学食の方にも問い合わせましたが、学食ではもち米を扱う料理はしばらくないとのこと。ですのでもち米は保管していないようです」

「それで家庭科部が疑われるのね?」やっと理解した――ような顔をした。「家庭科部ではもち米を時々使うわね」

「最近は?」

「炊き込みご飯とか――赤飯も作ったりしたわ」

「どのような比率で混合するのですか?」


 舞子の言い方は化学実験みたいだが仕方あるまい。舞子は滅多に自分で料理をしない。


「そうね――およそ一、二割かしら。もち米一合にうるち米四合とか……」

「なるほど」

「もち米を入れるともちもちするのよ。初心者は少なめから始めるかしら」


 舞子が初心者と言われたように僕は感じたが舞子は気にしていないようだった。


 家庭科部での比率はもち米一に対してうるち米四。

 回収したもち米とうるち米の比率もそんなところだろう。


「皆が皆もち米二割がふつうではないと言うことですか?」

「料理によっては半々にすることもあるかもしれないわ。でも家庭科部ではもち米二割がふつうかしら」

「わかりました」


 もち米の比率で「犯人」を絞る明石(あかし)会長の考えは棄却された。


「でも不思議ね」

「何が――でしょうか?」

「ふつうは炊く時に混ぜるのよ。混ぜた状態のものを持ち歩くなんてことするかしら」

「確かに……」

「もち米を炊くのに水は多くしないといけないわ。どれだけもち米を入れたかはっきりしないと水の量も決められない。混ぜてしまったお米にどれだけもち米が入っているかをいちいち記録しておかないといけないわね。そんなことするかしら」


「ではもち米とうるち米はその場で別々にばら撒かれたとお考えですか?」

「どうかしら」と家庭科部の先輩女子は間をおいてから付け加えた。「その混ざり具合が一様なら混ぜて均一にしたものを撒いたのでしょうね。別々の袋から撒いたのならもち米が多いところとうるち米が多いところができそう」

「確かに――ムラができますね」

「どうかしらね」いや――あんたがそう言ったんじゃね?


 回収した米の一部についてもち米はおよそ二割混じっていたわけだが、全部を確認したわけではないのでほんとうにもち米二割かはわからない。


 やはり発見時に適切な方法で回収しておくべきだったと思い知らされたわけだ。

 今となってはどうにもならないな。ほんとうはもち米がばら撒かれたところとうるち米がばら撒かれたところが別々だったかもしれない。全て回収してしまってその一部の比率がもち米およそ二割とわかっただけだ。


「生徒会も大変ね」先輩女子は優雅に笑った。

「ちなみにいちばん最近もち米を使ったのはいつですか?」

「先週の土曜日ね」


 ちょうどばら撒かれたと考えて良い時期だ。


「その時何を炊いたのでしょう?」

赤飯(せきはん)だったわ」

「何かお祝いごとでもあったのでしょうか?」樋笠が口を出した。舞子は(とが)めずにスルーした。

「私はよくわからないけれど中等部の子が赤飯を炊いてみたいと言ったものだから」

「何を作るかは誰の意見でも通るということでしょうか」下級生の意見でも?

「そうね。家庭科部は自由だから」


 自由気ままに何でも作るのだろう。そういう部なのだと思った。 


時:米ばらまきがあった日の翌日放課後

場所:家庭科室


ここの登場人物

舞子実里まいこ みのり ミステリー研究会会員

芦屋憲勇あしや けんゆう ミステリー研究会会員 僕 語り手

樋笠大地ひがさ だいち 中等部三年生 舞子の配下


家庭科部先輩女子

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