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78話 月下の早朝

アズハの思いつきで、日も出ていないような時間帯に出ることになった。


思いつきとは言え、「銀の街」をまだ宿屋以外がやってないような時間帯に通り抜けるのは良いアイデアに思えた。


「こんなに朝早いと、犯罪者とかが気になるものではありますけど、『銀の街』の大通りを進むので、そこまで警戒する必要もなさそうですよね」


「騒げば人が来るでしょうしね」


「銀の街」はこの国で2番目に大きな街なので、荒事……騒ぎを起こせば野次馬に自警団やら騎士やらが駆けつけるだろう。


そういった意味で、早朝に「銀の街」を通り抜けるのは妙案だと思えた。


……のだが。


「銀の街」を出る道あたりに来た時に、それは起こった。


「ん?」


目の前に、複数人の男が立ちふさがった。


男らは何故かニヤニヤと笑い、こちらを見てきた。


そして道を塞いでいるため、どうやら自分たちはそいつらと関わらざるを得ないようだ。


「どうしたんですか?」


「おいおい、俺たちのことを忘れたのか?」


「憶えてないな、何者だ?」


「私も憶えてないですね」


「わたしもー」


4人とも全然まったく、憶えてなどいなかった。


「お前ら2人は憶えてないとはいわせんぞっ!」


そう言って、中の1人を男は自分とミハルに指差した。


「僕と……」


「……俺か?」


「そうだっ!!」


「いつの話だ?」


「お前ら、本当に憶えていないのかっ!?」


「はい」


「ああ」


「お前らァッ!!!」


男は激昂し、他の男たちも顔に怒りの色を見せていた。


「チッ……まぁいい。お前ら『連合の府』で、飯屋で俺たちが店と揉めていたところに、割り込んで来ただろ」


「う~ん?ミハル、憶えてます?」


「いや、俺たちは『連合の府』で、荒事に首を突っ込んだ憶えはないな」


「ですよね」


「本当にお前らはっ……!!!」


「あっ……、そういえば」


「どうした?」


「『連合の府』で宿屋を出て港に行く前、昼飯を食べようと飯屋に寄ったとき、なんか揉め事に巻き込まれたような……」


「そういえば、そんなこともあったな」


それでボリスさんと知り合って、船で「風の飛竜の巣」に行くことになったんだったっけ。


「お前ら……あそこで俺らをさんざん馬鹿にしやがって……」


「僕たちは巻き込まれただけでしたよね?」


「ああ、ここに居る男らにボリス……あのずっと笑っていた男が割り込んで暴れだして、ナオトがその中の1人の男とぶつかったような……気がする」


「そうでしたよね」


……ボリスさんはここにまできて色々な問題を残してしまっていたんだなぁ。


船を手配してくれたのと、行く前日に家に泊めてくれたのは今でも感謝はしているけど。


「ゴチャゴチャ五月蠅ェッ!お前らがあそこにいたもう1人の男と一緒になって、俺たちの邪魔をしたのには変わりは無ェだろうが!」


「割り込んだのも、あなた達を追い払ったのもボリスさん……あの、ずっと笑ってた男の人が全部したことだと思っているんですけど?」


「俺たちにとってはそんなの、どうだっていいんだよっ!俺たちはなぁ、お前らにやり返すことができればなんだったいいんだ!」


「えぇ……。本当に僕たち関係ない……」


「私たちに関しては、本当に全く関係なく巻き込まれただけなんじゃ」


「ですよねー」


胡桃もアズハも、だんだんと不機嫌になっていく。


「もういい!とにかく俺らはお前らをここで捻り潰すっ!」


「関係ないけど、ここで暴れたら自警団や騎士たちが来るんじゃないですか?」


「へへっ、それついちゃあ気にしなくていいんだなァ、これが」


男はいやらしく笑った。


「どういうことだ?」


それについて、ミハルが訊いた。


「ここの騎士や自警団は、俺たちに協力すると言ってきたやつが金やら何やらで言いくるめると言っていたからな、ここで騒いでもあいつらは来ねェんだよなァ!」


「協力すると言ってきた人?」


話に出てきた疑問をぶつける。


「余だ」


男らの後ろから、小太りの男が現れた。


「まさか貴様らがこんな朝早い時間帯にここを通るとは思わなかったがね。ま、そのおかげで邪魔な他の連中がいないのが良かったことではあるがなぁ」


そこに現れたのは以前、「黒曜石の街」と「銀の街」を繋ぐ街道でイチャモンを付けてきた、「カラムジン家の当主」を名乗っていた男だった。


「以前は名前を全て名乗るのを忘れいていたな。では、改めて自己紹介をしよう。余は、カラムジン家現当主、パーヴェル・カラムジンだ。貴様らはここで終わるだろうが、冥土の土産として、憶えておくが良い!さあ、悪しきゴミ共に馬鹿にされた者どもよ、正しき裁きを下すのだ!」


そうパーヴェル・カラムジンと言った男が言い放つと、男たちはただ並んでいた状態から武器などを構えて戦う用意をしだした。


「チッ……こんなところで……!!!」


流石にこれ以上は話し合いでどうにもならなそうなので、自分たちも戦闘用意をした。


男らは計5人、それにこのパーヴェルと言う男、攻撃魔法の水準は3と言っていた。


男らがどれだけ戦いができるかは分からないし、以前の諍いを思い出しても、そこまで魔法に長けた者たちではないとは思うが、それでも人の数で負けていること、トップにある程度の権力と魔法の長けた技能をもっているというだけで、こちらは基本的に不利だろう。


最後の最後で、面倒なことになってしまった。

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