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7話 宿

土日は基本1話のみ、水曜日は4話、それ以外は2話投稿をしたいと思っています。

よろしくお願いします。

馬車に揺られること10分前後。


この先暫く泊まることになるであろう場所に到着した。


見ると、そこは一階が食堂になっている感じのする宿屋だった。


イドリス村長が先に馬車を出て、宿屋の女将らしき人と話している。


そして村長と女将らしき人がこちらに来た。


「村長から話ゃ聞いた、ついて来ゃ」


とのことで、グランさんと村長にお礼を言い、宿に入り二階に上がった。


そこには、2段ベッドとそれぞれ一つずつ、机と椅子。


そして、荷物でもおくのであろうスペース。


場所ははっきり言って狭い、が、雨風をとりあえず凌げて最初はタダで泊めてもらうのに文句は付けられない。


トイレ(というか(かわや))も宿屋の隣にあり、行くまでの道に屋根もついているのでよっぽどの嵐でもない限り濡れずに行ける。


携帯トイレは使わずに済んだらしい。


風呂はないらしいが、朝、朝食の前に温めたタオルを渡されて、それで体を拭けるとのこと。


今日から職能と、ある程度のお金が貯まるまで暮らすらしいが、それまで1階の食堂で皿洗い(と、出来たら料理も)や掃除をしてお金を稼ぐことになるらしい。


また、今日と明日は皿洗いなどをしなくてもいいらしい。


今日は疲れているだろうからという理由で。


明日は魔法の試験と今日説明していない分の説明をするだろうということから。


トイレ(厠)はいつでも使ってよく、ご飯は1階の食堂で三食付き、宿泊費は「流れ者」ということで特別安くされ、給料から天引きされるらしい。


朝ごはんは8時、昼食は12時、晩御飯は17時にそれぞれ30分の間に。


仕事はお客が来たら皿洗いなどをやって、それ以外のときは掃除か休憩。


消灯は部屋の照らす魔法を一斉に消すのが20時であるためその時間らしい。


消灯の10分ほど前に鐘を2回鳴らされるらしい。


今の僕たちは照らす魔法を使えないのでそれまでにトイレを済ませなければならない。


夜更かししてネットサーフィンやゲームをしていた自分にしてみればかなり早い消灯時間。


科若さんもどれだけ夜更かししているのかは分からないけど、他ヒロインと夜に電話していた場面を見るに、彼女にとっても多少なりとも早い就寝時間になりそうだ。



そんなわけで晩御飯。


この世界に来て初めてのご飯だ。


パンとスープに炒めた肉と野菜、そして水。


スープはミネストローネみたいなトマトのような野菜ベース、具は様々な豆が入っていた。


やや味気ないが栄養としては十分か。


宿泊費を安くされているので文句は言わない。


まずくもないしね。


ササっと食べて、トレーと食器類を返却棚に返す。


そして再び部屋に戻り魔法と魔法の法律についての勉強を二人で始めた。


実は本が別の言語で書かれていて読めないかも……とか思っていたが読めた。


本は日本語や英語ではなかったが読めた。


これ、読めるけど書けないのでは?……と、思ったけど、科若さんのペンとメモを使って「この言語で書く!」と思って書くと書けるらしい。


思わないと日本語で書くことになるらしい。


どうなっているんだろうとか思ったけど、気にしたら頭がもたない。


この世界の言葉を聞けて、喋れて、読めて、書ける。


詳しいことは時間があるときに考えよう。


今は明日の試験に向けての勉強だ。



消灯前の鐘が鳴る。


部屋に時計はなく、スマホの時刻もあっているか分からないので一区分ずつやっていると、それぞれちょうどいい具合まですることができた。


ベッドは上が自分で下は科若さんということに決定した。


上着のジャージは下の荷物置きスペースに置いたショルダーバッグに掛け、寝間着になるようなものもないのでそのままベッドに上り、布団の中に潜った。


科若さんは寝間着代わりに体操服のジャージに着替えて寝るらしい。


衣擦れの音がしている。


服同士の擦れる音が止み、布団に入ったような音。


暫くして、部屋の光が消えた。


今日はいろいろなことがあった。


トラックに轢かれたと思ったら、変なところにいて、全く知らない村に来て、魔法だ何だと言われて、今は年ごろと女子と同じ部屋の同じ二段ベッドで寝ている。


……疲れてて忘れていたけど、あんな美少女と、一緒の空間で寝ている。


同衾じゃないだけマシだけど、緊張するなぁ……。


明日はそこまで早いという訳でもないけど、疲れたし目を閉じて寝るか……。


「……桜木君」


「はい……?」


と、思ったけど、その美少女からの声。


「その……ありがとう」


「なにが?」


感謝されるようなことなんて、何かしたっけ?


「終始冷静だったから……」


「まぁ、慌てても何かなるような状況じゃなかった、って感じだと思うけど」


「私だったら慌てて、パニックになって、グランさんに拾ってもらうこともなくて、今頃野宿してたと思う」


「……」


「だから、ありがとうって」


「そりゃぁ、一応、どういたしまして?」


自分は科若胡桃のことを、ギャルゲでしか知らない。


あのゲームのシリアスパートでは、彼女は頼りになる存在だ。


でもそれは、あくまで学校内のトラブルで、多くの頼れる人がいて、トラブルの多くが彼女自身は第三者として関わるもの。


彼女が当事者の問題でも、それはあくまでクラスや学校の話。


当事者となり、頼れる人もおらず、状況もまったくもって分からない。


こういった状況では、彼女は打たれ弱いのかもしれない。


ゲームでは分からなかった彼女の部分。


彼女は人間だ。


強い部分もあれば、弱い部分もある。


たとえゲームの中で強く見えていたって、弱点はある。


だから「ゲームの中の強かで頼りになるクラス委員長、科若胡桃」の先入観を捨て接しよう。


「あと……、これからもよろしく」


「こちらこそ、よろしく」


「……おやすみなさい」


「おやすみ」


そう思いながら、瞼を落とした。

良ければ是非ともご評価・ご感想を頂ければと思います!

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