76話 真の帰路へ
「で、これから、どうします?」
一通り旅の話をし終わって、これからの話になった。
「そりゃ、手に入れるものをそれぞれ問題なく手にしたんですから、帰りますよね?」
アズハはさらっと言った。
「まあ、ですよね」
自分たちが今、話すべきは「どうするか」というよりは、「どうやって帰るか」ということだろう。
「改めて確認しておくけど、取り敢えず、僕と科若さんは、『黒の森の東の村』に行って帰る用意を、そこでアズハは『ボルカン帝国』に帰る……と。それにミハルがついていくってことで大丈夫かな?」
確認すると、3人はそれぞれ頷いていた。
「じゃあ、目下の目的地は、『黒の森の東の村』ってことで」
「お待たせしましたー、注文の料理でーす」
そして、4人で食べる久しぶりの朝食を採ることにした。
……。
自分とミハルがとっていた宿屋は1日だけだったので、朝食を食べ終わったあとに荷物を持って部屋を出たが、科若さんとアズハは連日泊まる手続きをしていたため、少ししてから宿屋を出てきた。
「さて、……“帰り”ますか」
そして全員で、「連合の府」を出た。
●
「ところで、なんでミハルの剣って2本になってるの?」
「連合の府」と「銀の街」の間の街道に入ってすぐ、アズハがそんなことを訊いてきた。
「あれ?言ってなかったっけ、『飛竜の巣』に行ったときの話をしたときに」
「そうだっけ?」
「……?」
ミハルの方を見ると、黙って神妙な顔をしつつ頭の上に疑問符を浮かべていた。
「じゃあミハル、説明を……」
流石にミハルの家族の話も入ってくると思うので、自分から全部を話すことは躊躇われた。
「俺がよく覚えてないところは、説明を頼めるか?」
「勿論、いいですよ」
なので、自分はミハルの話の補足をすることにした。
そして、自分たちが「飛竜の巣」に行ったことを、改めて詳しく話した。
「連合の府」の飯屋で、ずっと笑っている変な男に出会い、その男に船を出してくれる人を紹介され、その船で「風の飛竜の巣」まで行けたこと。
「風の飛竜の巣」で風の飛竜と話し、そこで炎の飛竜の間引きを頼まれ、その頼まれ事と鱗の回収をした後、炎の飛竜がやってきてしまったこと。
帰り道のトンネル状になっていた部分が炎の飛竜が飛ばしてきた瓦礫によって壊され、戦う他がないような状態になってしまったこと。
飛ばされてきた瓦礫の中にミハルの父親の剣があり、それを使ってその炎の飛竜を倒し、ミハルの片腕が酷い火傷を負ってしまったこと。
これらを歩きながら話した。
「ほぇ~……それで、ミハルの服の片腕部分が変な感じになってたんですね~……」
と、アズハはミハルの腕の部分を見ながら言った。
まあ確かに、ミハルの「旅のための動きやすい服」の上は、炎の飛竜によって片腕が燃え尽きていた。
それで自分が「エンハンスヒーリング」である程度ミハルの腕を治した後は、「動きやすい服」の下に「街で浮かない(噂話の的にならないための)服」を着ていたので、やや変な感じになっていた。
「あー……、ミハル、服……、買います?」
「いるのか?」
「もう1ヶ月も前の話ですけど、噂がまだ残ってたら、その恰好は少し目立つかも知れませんし……。それに、『ボルカン帝国』に渡るときに、本格的な旅をするのに、その服じゃ心もとなくないですか?」
「それもそうか……?いやしかし、前になるべく服に金を使わず、貯めた方が良いとか言っていた気がするが」
「それは、あのとき必要ないって感じになったと思いますけど……。僕と科若さんの服がまだ『ボルカン帝国』から帰って来て1度も着たことがなかったから、別にそれを着てても問題ないだろうって感じで……」
「そうだったか……?」
「そ、そうですよ……?今は多めに取った『炎の飛竜の鱗』を売って、多少は余裕も出てきていますし……」
そんな話もありつつ。
「そういえば」
次に声を出したのは科若さんだった。
「桜木君ってミハルさんのこと、『ミハル』って呼んでいるけど、それも『飛竜の巣』で何かあったの?」
「あー……」
これもミハルの心根に入り込む話が関わっていたため、ミハルにアイコンタクトした。
「ああ、そうか……。それは俺がそうしてくれって言ったんだ」
「ミハルさんが……?」
「『炎の飛竜の巣』で襲われときに、戦うことを決めたのは、俺なんだ」
「それが、どういった経緯でそういうことに……?」
言われると、ミハルは言いにくそうに顔に少し影を作っていた。
「さっきの剣の話も関わってくるが、その時に見た親父の剣……“この剣”を見て、少し、取り乱してしまってな」
ミハルは自嘲するように続けた。
「それで、退路の天井部が崩れたこともあって、戦うことを選んだんだ。あのときならまだ、逃げても大丈夫だったかもしれないが……。それで、俺の選択でナオトを不必要な危険に晒してしまったことの一種の罰として、敬称を止めてくれって言ったんだ」
「そう……だったんですか。なんか、変なこと訊いてしまって、すいませんでした」
「いや、いい。結局、俺が悪かったってだけの話だからな。ナオトも、最初は敬称を付けたままが良かったらしいから、これが厳密に罰になっているか、分からないが」
「ま、まあとにかく、ミハルの服を買いに行きましょう!」
何故か空気が重くなってしまったため、服の話に戻して、空気を無理やり換えたのだった。
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