75話 合流
昼に港に到着し、急ぐために昼食を軽く済ませ、寄り道せずに街を進んだ。
以前のように輩のいざこざに巻き込まれることもなく、宿の周辺まで到着できた。
「そういえば、2人は戻って来ているんでしょうか」
宿の前にまで来て、そんな疑問が出てきた。
自分たちは1ヶ月から1か月半ほどで帰ってくることになっていたが、帰りの道が思ったよりも早く帰れてしまったため、逆に彼女らがまだ帰ってきていないことも考えられた。
「宿に入って、訊けばいいことだ」
「ミハルは……クールですよね……」
「……出来れば敬語もいらないんだが」
「これはもう、染みついちゃってるんで」
と、いう訳で、四の五の言わずに宿に入って確認することになった。
……。
「……ここに泊まっている、2人組の女性の方ですか?」
確認すると、受付の男は気だるげにそう応えた。
「ここで会う約束をしていたのですが、私たちが少々日程より早めに着いてしまいまして」
「確認しますねー」
男はペラペラと紙束をめくる。
「ふぅー……、っと」
男は溜め息を吐き、別の紙束を取り出して、またペラペラと確認しだした。
「えーっと、お名前を伺っていいっすか?」
「僕が桜木尚人で、こっちの彼が、ミハル・マサリクと……」
「あー、君たちじゃなくて、待ち合わせしてるっていう方の」
そっちか。
なんか、恥ずかしがる必要はないけど、恥ずかしい気のする間違いをしてしまったな。
「科若胡桃と、アズハ・ミーシンです」
「あー……、そのお2方は今晩……、つまり今、来るというお話がありましたが……まだ来てませんね」
「そ、そうですか……」
それは、どういうことなのだろうか。
彼女らの到着が少し遅れているだけなのか、どうなのか。
「香り花の山」は山道が険しい山だと聞いた。
「飛竜の巣」に行くほど危険ではないらしいが、それでも山登りに詳しくない1人を含めた女性2人が登るには厳しさがあるだろう。
せめて多少の怪我程度で済めばいいけど……。
命があってなによりだ。
あと、今晩帰ってくると受付の人は言っていたけど、出発する前の予定では、もう少し後になるような気もしていたけど……。
ガチャ……カランコロンカラン……。
そんなことを考えていると、後ろの方から宿屋の扉の開く音と、扉に付いた鈴の音が聞こえた。
「?」
こんな時間に自分たち以外にも宿屋に来るのかと不思議に思う気持ちと、もしその人(達?)が受付に用があるなら自分たちがここをどかなければならないので、どうなのかを確かめるために、扉の方に振り向いた。
「「あ」」
そして、目が合った。
1ヶ月弱ぶりに会う、2人の少女の内の1人。
その少女の濃色の髪は、分かれる前には旅を始めた頃にセミロングになって、それ以来定期的に切って長さを保っていた長さはやや長くなっていた。
「え……?あ……、え……?」
「どうしたのクルミ~、私入れないんだけど~」
自分たちの姿を見て呆然と硬直している前側の少女とは逆に、その少女の後ろから大声と大きな身振り手振りで宿屋に入ろうとしていた。
「ほっ、と……ん?あれ?」
そして後ろの少女が前の少女を横に除けて宿屋に入ると、こちらに目を向け、前の少女が如く硬直した。
「お、お久しぶりです……」
「……帰った」
「「……」」
取り敢えず、何か言わなければならないと思い、再会の言葉を口に出したが、2人は黙ったままだった。
「し、科若さん?」
「アズハ……?」
2人が目を丸くして黙りこんでしまったので、自分とミハルでそれぞれ、名前を呼んでみたけど、2人は未だ、黙ったままだった。
「……え?」
「え、ええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええ!!!!!!!!!」
科若さんは呆けたままで、アズハは叫びあげた。
「あー、夜なんで……ていうか、その声の大きさなら夜じゃなくても静かにしてくださーい」
そして、宿屋の案内の人に怒られてしまったのだった。
自分とミハルは1泊だけ部屋を頼んで休むことにして、今帰ってきたであろう科若さんとアズハは明日の朝、話をすることになった。
余談だが、この夜は1週間ぶりの陸、それもベッドでの就寝ともなると、ボリスさん宅でのとき以来だったので、かなり快適に眠ることができた。
●
そして、翌朝となった。
一度宿屋のロビーに集まり、朝食をしながら話をするため、どの組み合わせで「飛竜の巣」と「香り花の山」に行くかと、その旅路の計画を考えた、宿屋の近くにある大衆食堂に話し合うことにした。
「……って感じで、帰ってくるときの風が荒れた感じくらいのがずっと続いて吹いていたから、こんなに早くに帰って来れたって訳です」
「大変だったね……。というか、私の『エクスヒーリング』します?」
「お二人とも凄いですね!炎の飛竜と戦うなんて!」
「……そんな恰好の良いものじゃないさ」
そして「香り花の山」の方に行った2人の話を聞くと。
「ははは……私たちは、その……」
「クルミが急いで行きたいっていうから行ったら、行きの2日目に雪に降られたんだよね~」
「あはははは……」
といった具合だったらしい。
そして、より深い話をすることになった。
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