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71話 執念の跡

「あああああああああああああああ!!!!!!!」


「グルルルルルァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


ミハルさんは煤被りの剣を炎の飛竜の口の中へ突っ込み、炎の飛竜は「ファイアボール」を準備状態のまま撃たず、その大きさをさらに大きくし、威力だけを上げていた。


炎の飛竜は口の中から頭に剣が刺さっているであろうというのに、ミハルさんを炙り殺そうとする執念の目をしている。


ミハルさんは炎の飛竜が作り出す火炎弾でどのような表情をしているのかは分からないが、炎の飛竜の声量にも負けないその声からは、十分にその執念が感じられた。


「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


「グルルルルルァァァアアアアアア!!!!!!!」


ミハルさんはその剣で炎の飛竜の頭を割ろうと剣を動かし、炎の飛竜は更にその火炎弾の大きさを大きく、そして炎の光を強めていた。


「……『アイススピア』!」


攻撃に使える最後の魔力を以って、今使えそうな最大威力の攻撃魔法を唱えた。


……ザァンッ!


胴を狙ったはずだったけど、狙いからは外れ、翼に当たった。


「くっそ……」


翼には当たったはずだったが、炎の飛竜は動じなかった。


思わず足から力が抜け、片膝を着いてしまった。


「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」


「ルルァァァアアアアアア!!!!!!!」


未だにミハルさんと炎の飛竜は叫び続けていたが、それは同時に止んだ。


ミハルさんは煤被りの剣を放して両ひざを着き、炎の飛竜は撃とうとしていた「ファイアボール」は霧散した。


そしてミハルさんは己の剣を杖代わりに地面に刺し、炎の飛竜はその首を地に傾げた。


「はぁ……はぁ……っはぁ……」


「……」


息を乱すミハルさんと、沈黙した炎の飛竜。


この戦いの結末が今、描かれた。


……。


「何度も、すまないな……」


「良いですって。早くしないと、僕の『エンハンスヒーリング』じゃ、治せなくなってしまうかもしれませんからね」


戦いの後、すぐさまミハルさんの腕に「エンハンスヒーリング」を掛けた。


ミハルさんの腕は、炎の飛竜の「ファイアボール」によって、重度の火傷を負っていた。


簡単に言うと、熱が皮下脂肪にまで達し、皮膚はやや黄み掛かった白色へ変色していたのだった。


医学的知識はないが、この状態が非常にマズいことくらい、無学な自分でも分かった。


「エンハンスヒーリング」を掛けた後は、黄み掛かった白色から、白みの混じった赤色程度の火傷になっていた。


範囲こそ広いが、この程度の火傷であるなら、自分でも負ったことがあり、湿布程度で回復したことのあるものだった。


確か、火傷とかでも皮膚の菌などへの抵抗力が下がると何かで言っていたような気がするため、気持ち程度のものであるが、自分が持っていた服を火傷部分に当てがっておいた。


「さて、すぐに帰りましょう。長居は無用です」


「ああ、残りの竜がこちらに来ても……」


そのときだった。


「ッグシャアアアアアアァァァァァァアアアアアア!!!!!!」


今日、何度目かになる、その咆哮。


島の上から現れたのは、今しがた倒したものとは違う個体の、炎の飛竜だった。


「今なのかよ……」


「言った傍から……」


2人とも苦々しい顔をしながら、臨戦態勢をとった。


しかしそれは、無駄なものになった。


――――――『アサルトスパウト』――――――。


聞いたことのないその詠唱が、頭の中で聞こえた気がした。


ふと、その意識が過ぎ去った時、状況は変わっていた。


「ギュアアアアアォォォォオオオオオ!!!!!?」


現れ、ホバリングしていた炎の飛竜は複数の小さな切り傷が体中に刻まれ、動揺した唸り声を上げていた。


そして、僅かに見える竜巻のようなモノに揉まれ、回転しながら地面へと叩きつけられた。


「グルルアアアァァァ……」


地に落ちた炎の飛竜が唸りながら立ち上がろうとするが、更に上から現れた別の存在に伏せられた。


ミシミシミシ……グィキィ……。


そしてその存在の前脚に押さえつけられて、炎の飛竜の首が音を上げてへし折れた。


「あなたは……」


「ふむ。更にもう1匹取り逃がしたが、今ここで仕留められた。どうやら、貴様らは大丈夫だったようだな」


炎の飛竜の首を折ったその存在とは、風の飛竜だった。


……。


「驚かせないでくださいよ」


「助かったのだろう?なら、よいではないか」


「生きるか死ぬかの瀬戸際だったんですけどね……」


「そうかそうか。まあ、安心するがよい。我が、戻ってきた連中の全てをなぎ倒した。他の連中は夜になるまでは戻って来ん」


「そうですか……」


先ほど、頭の中で聞こえた「アサルトスパウト」という魔法は、風の飛竜が使った魔法だったようだった。


攻撃魔法、水準4相当であり、「ブラスト」「ガスティブロー」の上位魔法で、瞬間的に竜巻を起こす、強力な魔法だ。


「その戦い方は、貴様の戦いを見て真似たものだ。貴様、面白い戦い方をしておるな」


「そりゃどうも……。っていうか、見てたんなら助けてくださいよ!」


「我もそのときはまだ他の連中と戦っておったのだ」


一通り報告をし、洞窟へと戻ることになった。


「我が貴様らの小舟を風で押してやってもよいぞ?」


「あの船があなたの風を受けたらひっくり返って沈んじゃいますよ……。それに今日は疲れたので、明日、帰ろうかと思います」


「そうか、『風を使って帰してやる』という約束を、これで済ませようと思っておったのだがな」


「お前……」


「はっはっは、冗談だ。まあ、とにかく、貴様らが我の土地から『向日葵』をとるのを許そう。忘れずに取りに来るがよい。我は先に戻っている」


「……分かりました」


かくして、洞窟へと戻り、死闘を繰り広げた、今日という日を終えたのであった。

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