70話 死闘
本日、連続投稿いたします。
帰路の道は崩落していて、通るにはまず、瓦礫をどうにかしないといけない。
唯一の仲間は戦おうとしている。
ここで逃げても炎の飛竜が見逃してくれるとも思わないし、例え逃げ切れても、汚名が付いてしまうことは必至だ。
ミハルさんが戦うと言い、炎の飛竜がこちらに意識を戻すことができたときに、もうすでに他の選択肢は無いに等しかった。
「ミハルさん、戦闘中に呼び捨てになるかも知れませんけど、今が今なんで許してください」
「構わん」
そうして2人はふっと息を吐き、呼吸を整える。
「疲れて不利になるのはこっちだ。すぐに決めるぞ」
「分かりました」
ならばと、アイコンタクトをとって同時にその魔法を唱えた。
「「『セルフヘイスト』!」」
さあ、ここで決める。
すぐに2人は走り出す。
自分は向かって右へ、攻撃魔法の適切な位置をとるため、炎の飛竜から少し離れたところに。
ミハルさんは左へ、すぐにその剣で攻撃できるよう、比較的近くに。
「っらぁ……!!!」
そしてミハルさんは間をほぼ置かずに剣を振りかざした。
しかし、その剣筋は当たらなかった。
炎の飛竜は飛び立ち、空中でホバリングし始めたからだ。
「『アイスジャベリン』!」
すぐさま炎の飛竜を地面に叩き落とすため、それが出来なくても怯ませて動けなくするための牽制でと魔法を放つ。
しかしそれもまた、当たらずに空に消えた。
「ギャアアアァァァアアアアオオオオオォォォ……!!!!!!」
炎の飛竜は「ファイアボール」を撃つ準備動作を始めた。
「『ウォーターボール』!」
そうはさせるかと、魔法を放つ。
「シャァァァァァァ……」
当たりはしなかったが、炎の飛竜は水の球を避け、今度は行動を封じることはできた。
だが、炎の飛竜を地面に追いやらないと、こちらが不利なままだ。
どうすればいい?
この短い戦いで、「アイスジャベリン」は命中率が悪いことと、当たってもあまり効果がないということが分かった。
「ウォーターボール」は炎の飛竜の動きを止めるには効果的かもしれないが、地面に追いやるには少しまだ決定打に欠けているようにみえる。
「アイススピア」では速度が足りず、当たらないだろう。
では、他の魔法はどうか。
「ファイアボール」は……炎の飛竜には効果は少ないだろう。
火炎魔法はあまり効果的ではないか……。
ヤツの身体の近くで「ブレイズバースト」を起こしても、目とか急所じゃないと意味はなさそうだ。
「ウィンドカッター」や、その上位魔法、「サイクロンカッター」は?
風魔法は減衰するから、あまり適していないか。
風魔法か……、何か使えそうな気が……。
「グルルゥガアアアアアアアアアアア!!!!!!」
炎の飛竜をどう落とすかを少し考えている間に、その炎の飛竜はこちらに向けて再び「ファイアボール」を撃とうとしていた。
「『サイクロンカッター』!」
「ギュアアアアアォォォォオオオオオ!!!!!?」
試しに風の刃を向かわせてみると、その刃は当たらなかったが、準備中の火炎弾は風によってその形状が不安定になり、口の周りに燃え移りそうになっていた。
そしてそれだけではなく、風の刃自身と増大し巻き上がった火炎弾が生み出した気流によって体勢を崩し、そのことに炎の飛竜は自分の目から見ても分かるくらいには動揺をしていた。
「そうか……」
ある場面を思い出す。
確かそれは、「ブラスト」を使ってしていたんだっけ……。
しかしその魔法では、目の前にいる巨大な図体に対してはあまり効果的ではないだろう。
だから……。
「スゥ……ッグシャアアアアアアァァァァァァアアアアアア!!!!!!」
「……ッ!!!」
魔法を仕掛けようとしたが、それは炎の飛竜の咆哮によって妨げられた。
しかしそれも耐衝撃の姿勢をとって、次に放つ魔法の種類を決める時間には最適にすら思えた。
音の衝撃波が止んだ後、すぐさまその魔法を唱えた。
「『ガスティブロー』!」
「シャァァァアアアオオオォォォ!!!?」
「ガスティブロー」、「ブラスト」の上位魔法で、ただ強烈な風を起こすだけの魔法。
しかし、気流のバランスが重要となってくる飛行、特にホバリングをしている存在にとっては致命的になりえる。
その予想は的中し、炎の飛竜はバランスを崩し、地へと絡み落ちていく。
――――――――――!!!!!!
炎の飛竜は轟音を立てて墜落した。
「今です!」
「っらああああああ!!!!!!」
ミハルさんは炎の飛竜の首に、自らの剣を振り下ろす。
「シャアアアオオオォォォ!!!」
しかし炎の飛竜も絶たれる前に、吠え、身動ぎして抵抗をした。
「ぐあっ……!!!」
ミハルさんは炎の飛竜の翼に当たって吹っ飛び、地面を転がった。
「野郎っ……!!!」
しかしそれでも、ミハルさんはすぐさま立ち上がり、再び炎の飛竜を切らんとその頭へ向けて走った。
「グシャァァァアアアアアア!!!!!!」
炎の飛竜も首筋から血を垂らしながらそれを迎え撃つように、「ファイアボール」の用意をした。
「『アイスジャベリン』……!」
無駄と分かってはいたが、少しでも炎の飛竜への意識を削ぐために魔法を、放つ。
ズシャァ!
氷の柱は確かに炎の飛竜の翼を貫いたが、その「ファイアボール」の形を乱すことすらできなかった。
もう集中力も切れてしまっていて、魔力も切れそうだというのに……。
更にもう一発、撃とうか躊躇っていると、目の前の一人と一頭は、この戦い最後の衝突をした。
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