67話 炎の飛竜の巣
「入り口の、洞窟部分が見えてきましたね」
「あれが、『炎の飛竜の巣』の……」
前に聞いた話によると、着くのは1日掛けて、という話だったけど、「ウォーターストリーム」を使ったおかげか、まだ陽が傾き始めた頃には到着出来た。
「少し早く着きましたし、薪を集めがてら、少しこの島がどうなっているのか見てみましょう。『風の飛竜の巣』とどう違うかとか見るために」
「それもそうだな」
洞窟の中で船を引き上げてから、外に出て様子を確認することにした。
……。
「炎の飛竜の巣」。
大地などの構造は「風の飛竜の巣」とそう変わらず、洞窟近くの場所には木々や草花もそれなりに生えていた。
鳥などの小動物がいないのも、「風の飛竜の巣」の環境と同じだな。
風は普通に吹いたりしており、「風の飛竜の巣」のように、静寂を保ち、時折突風が吹くということはなかった。
それは風の飛竜が起こしているのか、「風の飛竜の巣」特有の環境なのだろうな。
島の構造は似た形であり、洞窟から実際に卵のある巣がある場所に行くまでに半日は掛かるので今日は卵がある巣には行かず、この島の様子を確認するだけだ。
「そろそろ薪も集まりましたし、日も暮れる前に洞窟に戻りましょうか」
「……」
「ミハルさん?どうかしましたか?」
「……いや、何でもない。戻ろう」
……やはり、思うところがあるのだろうか。
……。
洞窟に戻って、晩飯の準備をする。
ここの洞窟は「風の飛竜の巣」の洞窟と同様に、コウモリなどはいない。
島の中で小動物が見られないのと同じ理由なのだろうか。
兎も角、こういうところで雨風をしのげる場所を確保できるのはありがたい。
「ほら、焼けたぞ」
「ありがとうございます」
昼に釣った魚を焼き、それを食べる。
「焼き魚はやっぱり美味しいですね」
「そうだな」
ベルクさんの船で「風の飛竜の巣」に着くまでに魚を食べたが、それは焼き魚などではなかった。
船は木製であり、基本的に火気厳禁であるため、魚を含めた何かを焼く行為も勿論禁止されていた。
魔法で火を起こさず温めるか、温水を作り出して煮魚を作ったりはしたが、焼き魚は食べなかった。
また、「風の飛竜の巣」に着いてからはベルクさんが渡してくれた、魚の保存食を食べていため、焼き魚を食べるのは、イズムルド本土に居たとき以来だった。
「それに、こういった新鮮な焼き魚を食べること自体、久しぶりだな……」
実は、「連合の府」に着いてからは焼き魚を食べていない。
それ自体はたまたまではあった。
「連合の府」の大衆食堂で食べたのは肉と煮魚で、ボリスさんの家で頂いたのも奇しくも肉系の料理だった。
「はぁ……、美味―――」
――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!!!!!!!
焼き魚を食べていると、洞窟の外から咆哮が聞こえる。
そこまで大きな声ではなかったため、そこまで驚かなかったが、その声を聞くと緊張してしまうな。
風の飛竜曰く、炎の飛竜は大した意味もなく咆哮することがあるとのことなので、もしかしたら自分たちが見つかってしまったかも、というような心配はしなくていいらしい。
「この洞窟にいれば本当に自分たちのことが分かるのは稀だと聞いていますけど、それでもやはり緊張してしまいますね」
「……」
ミハルさんは、食べていた手を止め、険しい顔をしていた。
「ミハルさん」
「あ、ああ……」
「……思うところはあるとは思いますが、この旅の目的は、あくまで『炎の飛竜の鱗をとって来ること』と、『炎の飛竜の卵を出来るだけ壊しておくこと』です」
「分かってるさ。そのことも、俺の家族を奪ったヤツと出会うのは、確率的に低いということも」
「それなら、いいんですが……」
「頭を冷やしたい、もう寝る」
そう言って、ミハルさんは魚を食べ尽くし、串にしていた木の棒を薪の中に放り込んだ。
「分かりました。……『ウォッシュアップ』と『クリーナップ』はしますか?」
「……頼む」
自分もその後、特にすることもないので、体を休めるためにすぐに寝たのであった。
●
「……おはようございます」
「……ああ」
翌朝。
朝日が昇り、洞窟を出た。
炎の飛竜……、というか、飛竜全般は、太陽が昇るときに活動を始め、日が暮れる少し前に巣に戻ってくる。
日が昇る前に出ると見つかってしまう可能性があるため、最近は早起きが習慣となっていたが、それよりも遅くの出発となった。
そのため、起きる時間も遅くなり、いつもよりかは楽であったはずだが、時間間隔が狂い、2人とも少し本調子とは違う感じになっていた。
……。
「そろそろ、巣ですね」
「……ああ」
「一応、自己強化魔法を使っておきます」
「分かった」
「……『セルフストレングスアップ』」
「俺も一応しておくか……、『セルフストレングスアップ』」
もしかしたら、「風の飛竜の巣」で広場状の窪地に入るときのように、狙われているかもしれないと、魔法を掛けたり、棍棒を抜き出して構えるようにしたりして、警戒した。
「ここが巣か……」
「……」
その入り口は、土のトンネルのような形になっていた。
中に入ると、荒れ地のような場所だった。
「風の飛竜の巣」の花畑のようなものは勿論、雑草すら生えているのは少しだけだった。
また、風の飛竜が言っていたような、建物だった建材らしきものや、人の持ち物らしいものからなる瓦礫が点在していた。
炎の飛竜はおらず、いるのは卵だけだった。
「さて、鱗の採集と依頼を始めますか」
「……」
ミハルさんは、黙ってうなずき、近くにある巣に向かった。
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