66話小話9
小話が書けたので投稿いたします。
「連合の府にて」
尚人とミハルが「風の飛竜の巣」に着く数日前に時間は遡る。
「う~ん……」
科若胡桃はうずうずしていた。
いや、胡桃とアズハの2人とも、早く「香り花の山」に登り、その目的物を採りに行きたいとうずうずしていた。
が、それを表立って顔に表していたのは胡桃の方だった。
「クルミ、そんな顔してたら、お客さんにイチャモン付けられちゃうよ」
言ったのはアズハである。
2人は4人で泊まっていた宿に泊まり続け、その近くの大衆食堂で働いていた。
2人が働くその場所は、「連合の府」と外の街との境に近く、治安が良いとは言える場所ではない。
他の街よりもマシだが、マシと言えてしまうという程度だった。
なので、考え込むような顔をしていると、ガラの良くない連中は絡んできてイチャモンを付け、何かと値下げなどを吹っかけてくることもある。
「とは言ってもねぇ……。早く行き過ぎても仕方がないと分かっていても、早く行かないと、桜木君に悪いような気がして……」
「分かりますけど、ここで立ちいかなくなるよりはいいって思わないと!」
そんなことは勿論、胡桃も分かっていた。
しかしそれでもそのことが顔に出てしまうのは、彼女の良いと言われるところであり、またこういうときにおいての欠点でもあった。
「早めに行くって言ったって、今年は寒いらしくて、もう少しは遅らせないといけないんですから」
アズハが言う通り、今年の「連合の府」の周辺は寒いらしく、今すぐには不用意に近くの山にも行けない状態であるらしかった。
「あと1週間、早くても4日は後じゃないと危ないらしいよ。それに、早めに行って取りに行っても、月見草が腐るのが早まって困るのはクルミの方だよ!」
ちゃんと生えている状態で手に入れないといけない胡桃とは違い、アズハは葉の部分を手に入れればそれでいい。
失敗して困るのは胡桃の方が確率は高い。
ついでに尚人も困る。
「分かってはいるんだってば~……」
「じゃあシャキッとしてください!」
「はい……」
「もっとシャキッと!」
「は、はい」
そんなこんなで、彼女たちは彼女たちなりの試練に挑んでいるのだった。
(やっぱりなんか、いつの間にか桜木君のことを考えてしまうな~……)
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