63話 島、到着
書けたので投稿いたします。
船で出てからおよそ2週間、長かった船旅が終わろうとしていた。
……船旅全部の半分くらいだけど。
目の前にある島々の中で、ここで最も大きく見える、「風の飛竜の巣」。
「風の飛竜の巣」は「飛竜の巣」と言われる群島の1つで、その名の通り、風の飛竜という竜が巣として使っているらしい島だ。
他にも、「炎の飛竜の巣」、「水の飛竜の巣」というのもここから近くにあり、「炎の飛竜の巣」に関して言えば、ここからも、「風の飛竜の巣」よりは小さくではあるが見ることのできる場所にある。
ここからは見えない位置にあるらしい「水の飛竜の巣」は岩礁からなる島で、たとえ近くにあったとしても、水先案内人がいなければ分からないほど小さいので、素人の自分では見えなかっただろう。
他にも飛竜は存在するが、「飛竜の巣」と呼ばれる群島には、その比較的大きな3つの島に、これら3種類の飛竜が住み着いているらしい。
行こうと思えばどちらにも行けるらしいが、岩礁からなる「水の飛竜の巣」は大型船舶では近づくのは危険であり、行くには水先案内人を連れて、小型船を船に乗せて行ってそれを出すか、「風の飛竜の巣」にあるボートから出るという方法がある。
そして「炎の飛竜の巣」は気性が荒い飛竜であるため、これまた危険であって、そこに行くのは自己責任ということだ。
そちらの水路そのものに関しては危険ではなく、よほどの霧でも出ない限りでは見える位置にあるため、水先案内人を連れて行かなくてもいい。
因みに、他にも飛竜の種類があるらしいが、ここにはこの3種類しかいないとのこと。
「本当に、長かったな」
ミハルさんは、目を細めて言った。
「そうですね……。船酔い、最初の1週間くらいである程度慣れて良かったですね」
「ああ……」
ミハルさんの船酔いは、1日1回、酔いが酷くなったときに「エンハンスヒーリング」を掛けることによって、だんだんと良くなっていった。
「エンハンスヒーリング」程度なら、本当に気持ち少しだけ回復した気がする、程度なのだが、それでも掛かっているものは掛かっているのか、「エンハンスヒーリング」を掛けたあとは1時間以上、吐くことはなくなっていた。
そして1週間経って、回復魔法を掛けるのも2日に1回程度くらいになっていった。
あと、自分にとっても回復魔法を練習することが出来て良かったと思える。
最初の方は魔法を掛けるのに結構集中して、時間も掛かってしまっていたけど、今となっては言葉に重みを掛けるような程度の集中力で消費する魔力も少なく掛けられるようになっていた。
1つの魔法の使い方が上手くなると、連動するように他の魔法も上手くなるという話もあるらしい。
幸い、船旅の途中で攻撃魔法などを使うことになるような事態にはならなかったため、あまりその実感は湧かなかった。
一応、E種の「ウォッシュアップ」、「クリーナップ」、「ライトアップ」などは使ったけれど、こういう魔法はそこまで緊急事態で使うことのない魔法で、日常的に使っている魔法なので、実感が湧くような魔法ではなかった。
閑話休題。
「さて、ここでお前らの用事を済ますんだったな……。そういや、因みにここで何するんだ?一応聞いておかねえと、帰りまで何するかが変わってくるからな」
「それなんですが……、一旦、『風の飛竜の巣』で向日葵がどこで咲いているか確認してから、『炎の飛竜の巣』に行って、鱗を取ってきてから『風の飛竜の巣』で向日葵を採ってから帰って来ようかと……」
「そうか、分かった。じゃ、俺たちは3日ほど、この沖を魚でも取りながら巡って、戻ってくる」
「驚かないんですか……?」
「なぁに。何年かごとに現れる、『炎の飛竜の鱗』と『向日葵』を取りに来るヤツだろ?他の船乗りどもも送ったりしているらしいが、俺たちも何回か送ってきたことはあるし、話も聞いてる。ボリスの坊ちゃんがお前らを連れてきたときに、もしかしたらとは思っていたからな」
そういうことなのか。
つくづく、先人の「流れ者」には感謝だな。
そして彼らも信頼を失うようなことをしなかったからこそ、ベルクさんがこうしてここに来るのを手伝ってくれたのだろう。
自分も、後から来るかもしれない「流れ者」の為にも、改めていろんな人に対して、失礼のないようにしないとな。
「話を戻すが、その日に居なかったら、1日ごとに昼くらいに巡って来るから、『ファイアボール』かなんかを……、撃てるな、ナオトは」
「はい、大丈夫です」
「『ファイアボール』かなんかを撃ってくれ。そしたら近づいて、お前たちを回収して『旧王都』に帰る予定にするからな」
「ありがとうございます」
「それと、10日、10日来なかったら、俺たちはあんたらが途中で死んだと考えて帰るから、目的が果たせなくても10日後にはここで撃てるようにしていてくれ」
「分かりました」
彼らにもこれ以上長い船旅は辛いためであるからか、それとも用意がないのか、意外と期間についてはシビアだった。
「ひとつ、聞いてもいいですか?」
「なんだ?言ってみろ」
気になったことが1つあったので、聞いてみることにした。
「『風の飛竜の巣』で停泊はしないんですか?」
「それか、それはな、風の飛竜は炎の飛竜よりは気性が荒くはないが、それでも不快には感じるらしいからな。あまり不用意には近づかないようにしてるってだけだ。飛竜ってぇのは、どいつもこいつも気難しいヤツばっかりだからな」
「なるほど」
思わずして、風の飛竜についても少し知ることが出来てよかった。
「それでは、行ってきます」
「帰りも、頼みます」
「おうよ、なるべく早く帰ってきてくれよ!」
ベルクさんと挨拶を交わして、初めての地、「風の飛竜の巣」に降り立ったのだった。
この話のタイトルがどこぞの課長の漫画っぽいのは韻を踏んだだけで特に意味はないです。
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