60話 船着き場
本当は60話ぐらいで最終回のつもりだったんです……(小声)
ボリス・ビリビンと名乗る、ずっとへらへらと笑っている男に連れられて、この街最大の船着き場にやってきた。
「この人が、君たちの乗る船の船長で、ステパン・ベルクって人だよ!」
「おいおい、いきなりそんなこと言って、話を何も聞いてねぇぞ、坊ちゃん!」
ボリスさんは港に居た壮年くらいの男の人を引っ張ってきて、その人の紹介をしてきた。
その紹介された人は今話を聞いたらしく、驚いた顔をしていた。
「っていうか、今夕方じゃねぇか!今から乗りおるんか!?」
「どうする?」
「決まってねぇのかよ!坊ちゃんの思いつきはいつもそうだな!」
「その『坊ちゃん』ってのはもうやめてよ~、もういい大人だよ~」
「思いつきで計画性のないことを言うのが『いい大人』なんか!?」
「それは言わないことだよ~」
嗚呼、話がジェットコースターだ。
本当にボリスさんについて来てよかったんだろうか?
「取り敢えず、この話の軸は君たちだから、君たちの意見を聞きたいんだけど~」
そんなことを思っていると、ボリスさんはこちらに話を振ってきた。
「僕たちは『風の飛竜の巣』に行きたいんですけど……」
「『風の飛竜の巣』だぁ?流石に今日は出せないぞ?船を出すなら、せめて明日の朝だな。それなら今倉庫の中にあるものをすぐ準備して出られるが……」
「で、出来るんですか?たった半日で?確かここから『飛竜の巣』まで、1か月くらいは掛かるって聞きましたけど……」
ミハルさんも何も言わないが、自分と同じく驚いた顔をしていた。
「俺たちは船乗りになって何年、何十年と生きてきたんだ。それに魔法もある。素人は心配せず、俺たちに任せたらいいんさ」
「って訳さ!凄いだろう!」
「お前が言うなよ!ボリス坊ちゃんはこのことに関しては何も凄くないからな!」
「えー。あと、その『坊ちゃん』っていうの止めてってー」
取り敢えずステパン・ベルクという人は、ボリスさんよりもしっかりしてそうで、尚且つ計画をもって話してくれるので、信頼できそうだ。
「あのー……、僕たちが明日までになにかしておいたらいいことって、あります?」
「ああ?『風の飛竜の巣』に行く用事があって乗るんだろ?そこでの必要なモンを揃えるってのが一番じゃないか?船の上で過ごす中で必要なモンはこっちから用意すっからよ」
ベルクさんはこちらの状況を知ってか知らずか、何もしなくても大丈夫という旨を伝えてくれた。
「分かりました、ありがとうございます」
「いいっていいって。それよりお前ら、今日、泊まるとこはあんのか?どうせ坊ちゃんが急に行くとか言い出したから、どこも宿をとってないだろう?なんなら俺らの……」
「あー、そのことなんだけどさ」
その上ベルクさんが宿の心配までしてくれ、ベルクさんの何某の泊まれるところの紹介を受けそうになったとき、ボリスさんが話に割り込んできた。
「彼らは今日、私の別宅で泊まってもらおうと思って」
「坊ちゃん、そりゃあ……」
ボリスさんの言葉に、ベルクさんは呆れるような声を出した。
というか、別宅。
昼時、ボリスさんがお詫びにということで、何かしたいことはないかと尋ねてきたとき、彼は「この国で出来ることの大半は手配できる」と言っていたことから、この人はかなりの大金持ちとか、そんなのなんだろうか?
「大丈夫なのか?」
呆れた顔のまま、ベルクさんは続けてボリスさんに訊いた。
「まあ、急に手配してステパンや彼らに迷惑を掛けたのは私だからね」
一応、ボリスさんにもそういう気持ちはあるのか。
ずっとへらへら笑っているから、根っからの無自覚迷惑人間か何かだと思ってた……。
「坊ちゃん、『あのこと』は?」
「いや、彼らには言ってないよ。私のことについても知らないみたいだし、あまり詮索もしてこなかったから、良いかなって」
「……なら、俺が口出すことでもないな」
「ま、心配してくれるのはありがたいと思っているよ」
「別に心配なんざしてねぇよ。お前の親父に借りがあるから、お前に何かあったらお前の親父に申し訳が立たないからな」
「ハッハッハ、言うねぇ~」
ボリスさんとベルクさんが何やら話をしていたが、何の話かは分からなかった。
だけど自分たちに害意のあるような話ではなさそうだったのでスルーした。
……この話スルーして良かったのだろうか?
こういうときに悪巧みをしていても、外から聞かれても大丈夫な感じに言うのが普通だよなぁ……。
とにかく、今日はボリスさんの別宅とやらに泊まるから、そのときに何かあるかも気にして泊まるようにしておこう。
もし善意で泊めてくれようとしていたのなら悪いけど、それでも警戒はしておいた方が良いだろう。
「それじゃあよろしくステパン。さあ、君たちと私はこっちだ!」
「おう、お前らも気を付けてな」
「あ、ありがとうございました。失礼します」
「……失礼する」
そんなこんなで、自分たちは旅の途中で知り合った、金持ちそうな男性の別宅に泊まることとなったのであった。
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