56話小話8
小話です。本日の更新は以上です。
「女子たちのゆったり登山計画」
「じゃあ私たちは『香り花の山』への行き方と、それに必要なモノの書き出しと、『月見草』が『香り花の山』のどのあたりに生えているかを調べるのが必要ですね」
「はーい!」
私の言葉に、アズハちゃんが元気よく返してくれた。
「まず初めに、行き方からの話なんだけど、正直、私も来る途中にいろんな人から話とかは聞いて、行き方を調べたんだけど、あんまり分かんなかったんだよね」
「そうなんですか?」
「私たちの方は、時間的に少し余裕があるから、そのあたりについては、調べればいいと思ってるけど、どうかな?」
「私もそれでいいと思いますよ?ミハルさんたちのこともありますし、そこはじっくり調べてからでも。詳しい話は私も分かりませんけど、話によるとここから片道3日で行けるそうですし」
最初の話題は少し情けないような結論で終わってしまった。
「じゃあ、行き方についてはこれくらいで。次に、必要なモノの書き出しかな」
「登山具って言っても、今より少し厚着するのと、食料を持っていくことくらいしか、私はあんまり考えが浮かびませんけど……」
「アズハちゃんの村って、結構山側にあったと思うけど、登山についてはあんまり詳しくないって感じ?」
「アハハ……、私……というか、私の家って、結構普通に農家とその間期にやるちょっとした魔法職や技術職をするくらいで、あんまり山には行かないんですよね。狩りとかはしますけど、数日にわたって山の中にいるってことはまずなくて、あるとしても2日が最大くらいです。行き1日、帰り1日の計2日の。……山、出身なのに、あんまり登山とかの話題に助けにならなくて、申し訳ないです……」
「いやいやいや、謝らなくても……。海や川が近くにある場所に住んでる人でも、船の漕ぎ方作り方、他に泳ぎ方とか魚の捌き方を知らない人なんて、結構いるとは思うから、気にすることじゃないと思うよ?」
「そうですか……?」
「大丈夫だって!」
この書き出しも、あんまり解決にはならなかったなぁ……。
「必要なモノとかは、行き方について考えて、そのときに何か思いついたらまた相談しましょう!」
「分かりました……」
アズハちゃんは自分が山近くに住んでいるのに、山のことについてあまり役立てなかったことを結構重く受け止めてしまっているようだった。
こういうときに、慰める方法は、実はあんまり思いつかない。
桜木君は、私がキャラとして出ているらしいゲームで「相談や会議でも頼りになる存在」として扱ってくれているけど、こういったことをスラスラできるほど器用でもない。
ここはとりあえず、話題を変えて、場の空気を入れ替えよう。
「最後に、『月見草』が『香り花の山』のどこに生えているのかについてなんですが、場所は、頂上付近にたくさん生えているみたいです」
この情報は旅の途中、街の書庫などを訪れて、見た記憶があった。
「頂上付近?具体的にいうと、どのあたりなんですか?」
「それなんですが……分かりません」
そう言うと、アズハちゃんは目を丸くした。
「わ、分からないんですか?」
「私も調べたんだけど、詳しいことは分からなくって……。本には『頂上付近にある大きな
岩の近くに平原があり、そこに群生している』って書かれていたけど、こればっかりは行って見てみないと分からないね……」
「そ、そうですよね……」
「これで、今話せる話は終わったんだけど……」
「…………え、これだけですか?」
「これ、だけですね…………」
そう言った後には二人の沈黙と、隣の2人の相談の声を含めた、この店の喧騒だった。
「あ、そうだ。桜木君たちが帰ってくるのに合わせるために、どこかで短期で働こうと思うんだけど……」
「それも、今ここでは相談のしようがありませんよね……」
「……そだね」
無理やり話題を引き出したけど、それもあっけない結論で終わってしまった。
「桜木君たちの話が終わるまで、このお茶と雑談でもしてよっか……」
「……ですね」
こうして、ゆったり……というか、ゆるゆるな登山計画会議はお茶の温度の少しも冷めぬまま、お開きになってしまったのだった。
明日からは水曜日4回、それ以外2回の投稿に戻る予定です。
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