56話 計画
「ごちそうさまでしたっと……」
晩御飯のメインを食べ終わり、あとはお茶のような飲み物だけになった。
「あとは、行くための準備についての話と、道のりについての計画をしないと、だね。……他にも確認が必要なこととかあったっけ?」
飲み物の入ったカップを片手に、料理によって途切れてしまった話の続きを再開させた。
「取り敢えずはそれでいいんじゃない?私もそれ以外には思いつかないし……。思いついたら、その時に言えばいいんじゃない?」
確認事項が他にもあったか尋ねてみたら、科若さんがフォローを入れてくれた。
「分かった。……まずはそれぞれ行く二人組に分かれて旅についての準備と旅の道のりについて話して、その予定を後で擦り合わせて、いつ出発するのかから、帰るまでの全体の計画を練るって感じで良いかな?」
「問題無いと思う」
「はい!私もそう思います!」
そんな感じで、自分とミハルさんのペア、科若さんとアズハに分かれて相談することになった。
「先ずは、『飛竜の巣』までの行き方ですよね……。それは―――」
港に行って聞いてみますか、と言おうとして、ミハルさんが遮った。
「それについては、もう調べてある」
「さ、流石です。ミハルさん……」
出来る男は事前の準備が違うね。
「この街から、『風の飛竜の巣』までは、船を出してくれる人がいるんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。ただ、それは定期便みたいな正規の便じゃなくて、街の船乗りが勝手にしていることで、安全性とかが担保されているものではないらしい」
上手い話はそうないってことか。
「安全性が担保されていないっていいますと?」
「それは乗せてくれる人にもよるとは思うが、それは船旅特有の難破から食べ物に関する問題まで。それとこれは俺たちにはあんまり関係はないとは思うが、以前、女性たちだけで『風の飛竜の巣』に観光に行こうとして、送った船乗りに襲われた、なんて話もある」
栄華を輝かせるこんな街にも、やっぱりそういう話もあるのね。
「いやいや、中には男色の船乗りもいるとは聞きます。そういうことについても、気を抜かないようにしておきましょう」
「確かに、一応警戒しておくに越したことはないな」
ミハルさんは咳払いを一つしてから、話を戻した。
「そのあとについてなんだが、『風の飛竜の巣』から『炎の飛竜の巣』に行くような船を出している人とかはいないらしい」
「じゃあ、どうするんです?」
「船を出している人はいないが、“船だけは”あるらしい」
「“船だけ”……?」
「そうだ。お前たちみたいな奴が数年だか十数年だかに1回くらいいるみたいで、『風の飛竜の巣』の海に面した洞窟には、『炎の飛竜の巣』に行くための小型の船があるらしい」
……これもおそらく、以前の「流れ者」の人たちのおかげなんだろうな。
先人たちに感謝、感激、雨、アラレ。
「そうして『炎の飛竜の巣』に行って鱗を取った後、『風の飛竜の巣』で『向日葵』を採集して、『連合の府』に戻ってくる、という流れだ」
「そんな簡単に言ってますけど、かなり大変ですよね?今、冬ですよ?この時期に海に出るのは流石に寒そうですけど……」
「まあ、大変だろうな。だけど、寒さについてはあまり心配はいらなそうだ」
「どういうことです?」
「海の温度や、吹く風の影響で、海の上はあまり寒くはないらしい」
「そうなんですか?」
そういや、日本の周りにも、暖流と寒流とか、高気圧の塊がどうとか、いつかの理科でやったような気がする。
それと同じなんだろうか?
「状況にもよるとは思うが、中には陸にいるよりも船の上の方が暖かいなどと言う人も少なくないくらい、聞く話だな」
では、寒さについてはあまり気に留めることでもないのかな?
「あとは、期間の確認と、必要なものの準備ですかね?」
「そうだな。期間についても一応調べてある。ここの街から『風の飛竜の巣』までは大体片道2週間くらいらしい。『風の飛竜の巣』から『炎の飛竜の巣』まではあまり詳しい話は得られなかったが、丸1日使えば行ける距離らしい」
「じゃあ、だいたい全体で1か月ってところですか?」
「そう考えるのは少し早計かもしれない」
「あれっ?」
何か話の見落としでもしてたっけ?
「『向日葵』を得るのは簡単だとは思うが、『炎の飛竜の巣』では運が悪かったら数日は掛かってしまうかもしれないぞ?それに、“ここ”から港に向かうまでも、普通に歩けば半日以上は掛かってしまうからな」
そう言われてみれば、そうだったな……。
「じゃあ改めて、全部の期間の予定として、1ヶ月と1週間くらいを目途にしておきますか」
「ああ、それが良いと思う」
ミハルさんは満足げに腕を組んで数度ほど、頷いていた。
「あとは、準備するものとかですけど……」
「衣服やらについてはさっき言った通り、あまり注意するべきことはないと思う。食べ物も、いつも通り、持てるだけ、そしてかさばらない程度に腐りにくいものを持っていけばいい」
「じゃあ、やることはいつもと変わらないですか?」
「いや、一つだけ確認しておきたいことがある」
ミハルさんは腕組みをやめ、真剣な眼差しでコチラを見てきた。
「海では、潮風に金属がやられることがある。ナオトの持っているナイフは、錆びにくいものか?」
「あー……普通のヤツを、よく砥いで素人なりに長く保たせているだけですけど、特別これが錆びとかに強い訳ではないですね……」
「なら、港に行く途中にでも、それを改めて買いに行った方が良いかもな」
「分かりました。あとは……女性陣と計画のすり合わせをするだけですかね」
「ああ、そうだな」
そうしていると、科若さんとアズハの方も話がまとまっていたみたいなので、全体の活動について確認してから、宿屋に帰るのであった。
書き溜めないなった。
次話は小話です。次話で今回の連続投稿は終わりです。
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