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52話 噂話

「黒曜石の街」と「銀の街」を繋ぐ街道は道が舗装されているものの、宿屋や飲食店がポツポツあるだけで、住宅や他施設などはあまりない。


しかし、「銀の街」と「連合の府」を繋ぐ街道は、上記の街道よりも少し長めであるにも関わらず、色々な建物が並んでいたりするし、人や馬車などの交通量も多い。


建物が無い場所も、川が流れている場所や畑や牧場であったりする場所など、人が元から立てないような場所か、人が暮らしていることが分かるような場所ばかりだ。


だから途中ですれ違う人々の中で、話などをしている集団なども見かける。


「たまに見かける人たちって、いったい何の話をしているんでしょう?」


アズハが気になったらしく、そう呟いた。


普通なら人が話していることなど気にも留めないけれど、今回気になった理由はあった。


「なんか、視線?感じるね」


科若さんが言ってくれた。


その人たちから感じる視線に違和感があったからだ。


勿論、ただの視線ではない。


普通に道に集団がいて、その集団の前を通り過ぎるときに感じる、道に邪魔にならないか確認するための視線とかではない。


明らかに何らかの噂などを軸にして、その話題に火種か油なんかが入っていくのを眺めていくような視線だ。


「次、意味深な視線を送ってくる人たちがいたら、何があったのか一度聞いてみます?」


「そうですね。私たちに何か関係があって、とっても大事なこととかだったら聞き逃すと後で大変そうですし」


確かに自分も気になったので聞くかどうかを尋ねてみると、アズハが肯定の意を返した。


「じゃ、次そういう人たちがいたら聞いてみましょう」


その言葉に科若さんも軽く頷いていたが、ミハルさんは何かが思い当たるようで、やや苦いような顔をしていた。


「どうかしました?ミハルさん」


「いや、杞憂かもしれないから、大丈夫だ」


「そうですか?」


それも気にはなるけど、ミハルさんが敢えてこういうようなときはわざわざ聞こうとしてもその時間が無駄になるようなことも多かったので、こういう時は聞かないようにしている。


一応確認はしてはいるけど。


……。


ヒソヒソ……


道を歩いていると、再び視線と話声を感じたので、聞くことにした。


「何か、御用ですか?」


「え?いや、なんでも、ないです……」


その人たちに話しかけていくと、かなり挙動不審な感じで、目を泳がしながら応えられた。


「最近この道を歩いていると、何か噂をしている人を見かけますけど、何かあったんですか?」


「いやぁ……」


どうにかはぐらかそうとしているようだ。


「何かあるんですね?」


「ま、まぁ……うん……そうだね……」


やはり歯切れが悪い。


「何か、言いにくいことでも?」


「まぁ……うーん……」


「そういう言われ方が一番気になってしまうんですけど……」


「あー……、あくまで、あくまで噂で聞いただけで、確証とかもないことだから、本気で捕らえないで欲しいんだけど……」


そう前置きをしてから、その人は話し出した。


「『銀の街』の向こう側の街道で、いざこざがあったって話があったんだ」


「いざこざ?」


「ああ、それは『普通の旅人4人が当主の乗った旧領家の馬車に対して喧嘩を売った』って話で」


……覚えがある話だなぁ。


「喧嘩を売った」ってところは知らないけど、当主を乗せた旧領家の馬車と自分たち4人が揉めたという事実はあった。


「それで、その4人が喧嘩を売った理由っていうのが、どうやら、『遊び半分で強盗をしようとした』っていうんだから、そんな奴らがいるとは危ないな、と」


……その話には覚えがないなぁ。


「で、強盗に遭ったその旧領家の当主は数で劣勢であったところを命からがら、その当主がもつ魔法で魔法を持たない使用人や御者を守りつつ、何とか撒いて『銀の街』に来たって話でさ。それで、その容姿というか、特徴に君たちが……その……」


「似ていた、と?」


「ま、まあ、そんなところかな……?」


どうやら、話に尾ひれがついているらしかった。


しかもその話は完全にこちらが悪者として扱われていたらしい。


おそらく、あの元領家の当主とやらの男が広めた話だろう。


「お話、聞かせていただき、ありがとうございました。あと、不安をおかけして、すいませんでした。なんとか噂されないような工夫とかをしていこうと思います」


「ああ、が、頑張ってくれ」


男はいつの間にか離れていた、男がいた集団に苦笑いしながら小走りで戻っていった。


「あー……、俺の杞憂と思っていたものが、杞憂ではなくなってしまったな」


ミハルさんは去っていった男とはまた違う苦笑いをしながら肩を落としていた。


「そういうこともありますよ。それに、今回は特に揉め事とかにはなりませんでしたし……」


落ち込むミハルさんに対してこちらも苦笑いしながら励ました。


「ともかく、収穫はありましたね……」


アズハも、いつもの朗らかな表情とは違って、真剣な眼差しをしていた。


「さて、これからどうしようか……」


「う~ん……」


これからの課題を投げると、皆、唸って考えることとなってしまった。

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