51話 連合の府へ
「黒曜石の街」と「銀の街」を繋ぐ街道で元領家を名乗る変な太った男と遭遇してから更に十数日経ち、自分たちは「銀の街」へと辿り着いた。
「『黒曜石の街』は『州都』とあまり変わりない感じでしたけど、『銀の街』は結構印象が変わるんですね!」
アズハは「銀の街」に対して興味津々らしかった。
自分と科若さんはこの世界にはあまり馴染みはなく、街の様式について、あまり違いは分からなかった。
せいぜい、「この街はこういう構造しているんだ」程度のことは考えたかもしれないというくらいだ。
そしてミハルさんはあまり街に対してそこまで興味がなかったのか、「州都」に居たときも、調べもの以外に興味をそそられているようには見えなかった。
一応聞いてみたけれども、
「旅や修行にはあまり関係なかったからな……。気づいたこととかは特になかったな」
とのことだった。
銀の街では特に何もせず、通過するだけだった。
剣や弓矢などの整備、補給は「州都」や「黒曜石の街」でしたうえ、旅路での宿の価格は「銀の街」よりも、「銀の街」と「連合の府」を繋ぐ街道の方が安いためという理由があるからだ。
しかし……。
「えぇ!?ここで泊まらないんですか!?一度も!?」
アズハは少し、納得がいってないようだった。
「黒曜石の街」を通過したときは一泊したこともあって、ここでも「異国の街」の空気が存分に味わえる宿屋で泊まれることを期待したのだろう。
経済面の話、補給が必要ないという話もしたが、それでもだった。
「いいんじゃないか?」
そう言ったのは、ミハルさんだった。
「アズハにとっては、初めての外国で、おそらくあの州から外に出たこともなかったんだろう?」
「でもやっぱりお金が少ない訳ですし……」
「前回、お前たちがこの街に来た時、ここに泊まらなかったのか?」
「それは……。それは、その時は補給などが必要だったりした、という理由もありますから」
「それを聞いて、アズハが納得すると思うか?」
「……」
今回はいつになくミハルさんは頑なだった。
「……分かりました。しかし、帰るときは泊らず通過する、ということでいいですか?」
「ああ。譲歩があったんだ、アズハもこれ以上の要求もしないだろう。」
冷静に考えて、この選択はあまり合理的な判断とは言えなかったのかも知れない。
しかしながら、旅の仲間が減ってしまうのはそれ以上に問題になるように感じたので、折れてしまった。
唯一つ、疑問は残った。
「ミハルさんは何故そんなに、アズハさんに肩入れしているんですか……?」
「不公平だったか?」
「……それを問題に取り上げるつもりはありませんでしたけど、そうですね……。ほんの少し、肩入れしていかなって」
「……」
今度黙ったのは、ミハルさんの方だった。
「いずれ言う。それじゃ、ダメか?」
「まぁ……、はい。なんにせよ、安全に僕たちが集めるモノを集めて、『黒の森の東の村』に帰れるのなら、なんならその理由を言わなくてもいいですけど……」
「そのうち、言うさ」
そういったミハルさんの目には、何かの感情がこもっているように感じられた。
「そうですか……」
しかし、それが何かまでは、やはり感じ取れなかったけど。
「一応、俺の我儘でもある。流石に全額は払えないとは思うが、多めに払っておく」
「分かりました」
これがもし、自分とミハルさんとの2人の間だけの話なら遠慮をしてたと思うが、今は自分だけの問題ではなく、科若さんも含まれる問題だったので、躊躇うことなく了承した。
「いえいえ!私の我儘なので、私が払いますよ!」
「1人でなんとかなるほどお金は貯まっているか?」
「う、うぅ……」
先の結果を伝えると、アズハが払うと言ってきたが、ミハルさんの言葉に詰まってしまった。
「で、でもやっぱり!これは私が言い始めた話です!ミハルさんよりは少ない額になってしまうとは思いますけど、私も少しは多めに払います!」
結果として、アズハとミハルさんが自分と科若さんが払うより多少ばかり多く払うということで落ち着いた。
自分としては、旅路が4人になってからというもの、4人分を一括で払うお金はその分少し一人当たりの金額は減るので、そこまでカリカリお金について細かく言うつもりもなかったけど、これはアズハとミハルさんの心情的な話なので、これ以上更に言い合うつもりもなかった。
……これ、最終的に自分が折れるばっかりになってないか?
そこまで大ごとじゃないからいいけど、他のことまで自分が押されて折れるなんてことがないといいなぁ……。
特に、命や安全に関わるようなことになってくると。
って、お金に関して言うと、戦闘などとは違って直接的に命や安全には関わってないとはいえ、間接的に関わっているものの中では比較的密接に関わっているものじゃないか?
う~ん……。
取り敢えず、そういうことに関しても、引き締めて考えていってみよう。
自分の中でそう締めて、「連合の府」への道を進めようとするのであった。
……因みに、そうして泊った宿には、アズハは満足したそうだった。
なによりだ。
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